第12話 王との面談 その②
さすがに国王も、王子へ声をかけようとしたその時、城の窓から黒い霧が広がるように浸食し始めた。
「何っ⁉」
身構えるアーサー達の前で、黒い霧は王子の方へと広がっていく。
「戦の
杖を高く掲げたアリスが、呪文を唱える。杖の先が光った瞬間、そこから物凄い風が玉座の間の中を無造作に駆け巡った。
「…ちょ!アリスやりすぎ‼」
アーサーが咄嗟に右腕で目元を覆いながら、注意をする。暴風はすぐに止んだが、アリス以外は髪が乱れてしまい、下に引いていた何枚もの絨毯が完全に裏返ってしまったのだ。
「王子は⁉」
暴風に吹き飛ばされないように、玉座にしがみついていた国王が叫ぶ。
黒い霧は風に吹き飛ばされたのか、もうなかった。だが、そこに座っていた王子の姿がどこにも居なかったのだ。
「まさか風に吹き飛ばされて…⁉」
ジョージが真っ青になるが、外から悲鳴が聞こえてきた。
「な、何をする⁉」
全員が窓まで走ると、そこから上を見上げた。「あ、あれっ⁉」と、アリスが叫ぶ。
空中に、鎧が浮かんでいた。その隣に、黒い霧に包まれた王子が居たのだ。
「王子様⁉」
アリスの魔法で吹き飛ばされたわけではなかったので一瞬安心してしまったが、さらなる危機にジョージは剣を構える。
「あれは、魔王…⁉」
鎧の色は、闇のように濃い深紫だ。そう、昨日倒した魔王が身に着けていたのと同じ。
「何でだ⁉倒したハズだぞ‼」
驚きのあまり、アーサーはさらに叫ぶ。アリスとジョージも、信じられない、と動きが固まったのだ。
「…王子を返してほしければ、魔王城まで来い」
低い小さな声でそう告げると、魔王は黒い霧を再び広げた。あっという間にアーサー達の視界を奪うと、魔王は王子を抱えて飛び去ったのだ。
「―――⁉」
アリスが風の魔法で黒い霧を吹き飛ばしたが、もう魔王は見えなくなっていた。
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