第11話 王との面談 その➀

「この度はよくぞ魔王を倒した。これで民も安心するだろう」

 玉座に座り、金色の王冠を頭に乗せた初老の国王からの言葉に、膝をついたジョージは恭しく頭を下げた。

 その後ろには、同じく膝をついたアーサーとアリスも居る。二人共心の中では「ついにここまできた!」と、感慨からくる震えを何とか我慢しようとしていた。

「最近、わが国にも『人型の魔物が暴れている』と報告があったからな。これでもう隣の国から魔物が襲ってこないだろう」

 国王がすぐ討伐隊を向かわせたもう一つの理由、それは人型の魔物があちこちに出没していたからだ。半月の間に十件も報告が上がっており、人を襲うだけでなく、食べ物や、なぜか金品を奪っていた。

「アーサー、お前が魔王を倒したと聞く。この『記録の金属板』にも、その場面が映っておったから、間違いない」

 王の右手には、一枚の薄い金属板が握られていた。聖書ほどの大きさであるその板は、数日前の出来事を画像で記録・再生できるという高級な魔法の道具だ。

「よってまずはお前に褒美をとらせよう。お前の望みは?」

 国王の言葉に、アーサーは全身が震えた。そして、落ち着かせるように小さく深呼吸をすると、顔を上げてはっきりと口にしたのだ。

「私の妹であるアリスを、王子の花嫁にしてください」

 その言葉に、王の右側の豪華な椅子に座っていた青年は面食らった。まさか自分との結婚を申し込まれるとは夢にも思わなかったのだ。

「魔王を倒せたのは、アリスが力を貸してくれたからです。そして、平和な世の中になると、魔法使いの地位が低下してしまいます。もしそうなったら隣国のように、魔族が攻めてきた時に対抗できなくなってしまうのです」

 アーサーが言った理由に、国王は納得するように聞いていた。その話は、王子の耳のも入っていた。

「それで、魔法使いである妹が妃になれば『民を守るために魔法を使う』ということで魔法使いへの地位が低下する事を防げます。国のためにも、どうかお願いできますか?」

 『民のため』と言い切られ、王子はこげ茶色の瞳を閉じて考え込んでしまった。さらに同じこげ茶色の長めの髪が垂れ下がるほど、両手で頭を抱えてしまっている。

 (そこまで考え込む⁉)と、アリスはつい心の中でツッコんでしまう。アーサーも、まさかこんなに悩むとは思いもしなかったので、一瞬唖然とした顔になってしまったのだ。

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