第10話 エリーの秘密の行動 その③

 深呼吸をしたエリーは、古城の中を歩き始める。薄暗い古城の中には、動いているものはいない。

 魔物や人間の血で床が汚れていて、まだ血の匂いがする。エリーは顔をしかめずに真っすぐ進んでいった。

 

 王座の間も、床が魔物の血であちこち汚れていた。

 魔物が、横たわっている。まるで息をしていないように。

 エリー中に入ると、玉座から少し離れた場所で呪文を唱える。すると、周りの景色がゆがみ始め、大きな光る箱が現れたのだ。

 玉座の前に置かれていた大きな光る箱は、大人一人が余裕で入れる大きさだ。そのうっすらと光る箱の中に、一人の青年が仰向けになっていたのだ。

着ている服は貴族を思わせるくらいに上等なデザイン。閉じたままの目は長いまつ毛が美しく、顔立ちは整っている。長い銀髪が、さらに高貴な印象を与えていた。

 それを見つめていたエリーはさらに力を入れて杖を握る。意を決して、顔を上げた瞬間に、首から下げていたメダルの真ん中の白い宝玉が何度も光った。

「な、なに⁉」

 慌てふためいたエリーは、メダルを掴んで裏側を見る。

「ええっ⁉」

裏側は鏡みたいにツルツルで、そこに浮かんだ文字を見たエリーは、周りの静寂を破るくらいの大声を出したのだ。

 『マオウ ガ フッカツ シタ スグ モドッテキテクレ ジョージ』



 エリーがいなくなった後、討伐隊は国王の城を目指した。

 突然いなくなった理由を聞き、騎士達はエリーの志に感動してその意思を尊重したのだ。

 三人の修道女はこそこそと「エリーの分のお礼を貰えるかも?」と話していた。もちろんそんなはずはないのだが。

 昼過ぎに国王の城に着いた討伐隊は、国民から大歓迎を受けた。魔王を倒したアーサーは誰もが「勇者様だ!」と称えるほど。

 城の食堂で豪華な昼食をご馳走になった後、代表してアーサーとアリス、そして隊長であるジョージが国王へ面会したのだった。


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