第7話 アーサーからの頼み その③

「エリー!ありがとう!恩に着る‼」

「結婚式には招待できないけど、この埋め合わせは絶対するからね‼」

 アーサーとアリスは、強く輝いた目でエリーへ感謝を伝えた。


 夜が明けた野営の広場には、朝食を食べに来た兵士達が集まってきた。

 その中に居た隊長のジョージは、エリーの姿が見えない事に気づいたのだ。もう朝食の用意をするためにここへ来ている、と思っていたジョージは、スープを木の器に入れて配っていたアリスへ声をかけた。

「アリス、エリーを見なかったか?」

 目の前の騎士がスープを受け取った後、その近くまでやって来たジョージへアリスはこう返事をした。

「エリーなら朝起きた時にはいませんでしたよ。こんな置手紙を残していました」

 魔法使いのローブのポケットから、アリスは丁寧に白い紙を取り出す。受け取ったジョージは、手紙を開くと目を通し始めた。

「…エリー」

 そこには『褒美は辞退する』事や、『それを困っている人を助けるために使ってほしい』事、そして『他の地域にも助けを求めている人がいるから、助けに行く』という内容が書かれていた。

「…国王様へ申し上げれば、もっと多くの人達を助けられると思うが」

「エリーは手の届かない所にいる人を助けたい、と思っていましたから」

 アリスからの説明に、ジョージは納得する。ここへ来る途中でも、怪我してうずくまっていた旅人を助けていたからだ。

「…朝食が終ってから行けばいいのに」

「あたし達に準備を押し付けていくなんて」

 それを耳にした三人の修道女達が、小声で不満を呟いた。

「パン、貰っていいかな?」 

偶然立ち聞きしたアーサーは、わざとバスケットに入っていたパンを指さしながら声をかける。

「は、はいいっ!」

 背筋をビクッと同時に震わせた三人の修道女達は、慌ててバスケットごと差し出した。

(エリー、悪いな。俺達にはどうしてもやらなきゃいけない事があるんだ)

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