第3話 魔王城での決戦 その③

「やっ…た‼」

 確かな手ごたえを感じ、アーサーは勝利の笑みを浮かべた。

 長剣を引き抜くと、魔王の首元から赤い血が流れ始める。それは石の床を赤色へと変えていった。

 最後の血の一滴が落ちると、魔王は膝から崩れ落ちていった。倒れた魔王は、そのまま動かなくなったのだ。

「やったぞ‼魔王を倒したぞー‼」

 アーサーの雄叫びが、討伐軍の勝利を告げる。アリスは目に涙を浮かべながら、駆け寄ってきた。

「やったね!お兄ちゃん‼」

 二つ差の兄妹は、抱き合って喜んでいた。

「…良かった」

 エリーは疲れた顔になっていたが、ホッとした顔へと変わっていった。

 突然、城のあちこちから、軋む音が聞こえてくる。その音は、だんだん大きくなってきた。

「城が崩れるよ‼」

 エリーの悲鳴に、アーサーとアリスは「ええっ⁉」と同時に叫ぶ。

 その後、壁にヒビが入っていく。さらに天井にも大きな亀裂が入ると、その部分から少しずつ破片が下へと落ち始めた。

「逃げるぞ‼」

 アーサーの叫びを合図に、エリーとアリスは玉座の間から駆け出した。



 突然の軋む音に、騎士だけでなく魔物達も動きを止めた。

「何が…⁉」

 討伐隊の隊長の証である、白い羽飾りが付いた兜の騎士から戸惑う男の声がした。

「伯父さん―‼じゃなかった!ジョージ隊長‼」

 自分を呼ぶ声に、ジョージは上へ続く階段の方へと顔を向ける。そこから現れた討伐隊の証である二本の剣を組み合わせた紋章を付けた銀色の鎧の騎士が、途中で階段を飛び越しながら叫んだのだ。

「城が崩れる‼」

 その一言で、二十人の騎士達は剣を持ったまま一瞬動きが固まった。が、すぐに近くの魔物の動きに警戒しながら、今居る大広間の、階段とは反対側の扉に向かって動き出したのだ。

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