第2話 魔王城での決戦 その②

 玉座の間の出入り口にいた、同じ年の魔法使いの少女へエリーは礼を言う。

「お礼は後!お兄ちゃんの手助けをするわよ!」

 エリーより装飾が多い杖を握りしめなら、アリスは叫ぶ。

長い金髪に切れ目の青い目と、ピンク色の口紅が印象的な大人びた美少女だ。三角帽子の標準的な魔法使いの衣装である黒いローブにはところどころに明るい色の刺繍がしてあり、地味な紺色の修道女の衣装を着ているエリーとは対照的に目立つ。

ちなみにエリーの修道服の裾はひざ下まで短くしてある。動きやすいように下は少しゆとりがある紺色のズボンと、こげ茶色の何も飾りがないロングブーツを履いていた。

「分かった!」

 アリスへ返事をすると、エリーはアーサーがいる方へと向きを変えた。

 アーサーはすぐに体制を立て直し、何度も長剣で魔王に切りかかった。だが魔王が大剣ですべて受け止めると、今度はアーサーの長剣を大きく弾き飛ばしたのだ!

「―しまった!」

 長剣が手から弾かれてしまい、アーサーは攻撃する術を失ってしまった。それを見たエリーが冷静に呪文を唱え始める。

「守りの女神アミナ様!私が望む世界をすべて見せてください!《幻の楽園》‼」

 エリーが杖を掲げると、その先の十字架がさらに強い光を放つ!その眩しさにアリスとアーサーだけでなく、魔王も思わず目をそらしてしまったのだ。

「―⁉」

 魔王が向きを直すと、アーサーの姿はなかった。代わりにあったのは、水たまりだ。

 一瞬、警戒を忘れてしまった魔王の前にあった水たまりから大量の水が噴き出したのだ!

「何っ⁉」

 初めて発した人と同じ言葉は、すぐに水の中へ飲み込まれた。

 大量の水は魔王を包むと、さらに鎧の隙間から流れ込んでいく。このままでは溺死してしまう!と魔王は呪文を唱え始めた。

 唱え終わった後、水は一瞬で蒸発する。息遣いが荒くなった魔王が兜を外しかかったその時、

「はあっ‼」

 いきなり前から現れたアーサーの長剣が、その隙間に差し込まれた!

「―⁉」

 悲鳴を上げる間もなく、アーサーの長剣は魔王の首を貫いたのだった。


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