とある五十代主婦の録音

 初めて知ったよ。結合性双生児って言うんでしょ。でもね。君、知っているかな。第三の顔のこと。今城さんはさあ。正面から見て、右が進の上半身があって、左が悟の上半身があるわけでしょ。そう。ちょうどアルファベットのYのように二股になっている、その間にね。もう一人がくっ付いていたんだってね。それを父親は知らないらしいのよ。


 それと、君、悟が一花を突き落とした理由も、知らないでしょう。進に嫉妬していたってね。二人が喧嘩していた時の声が隣の部屋まで聞こえたらしいのよ。俺にかまうな、お前の上から目線な態度がむかつくんだ、ってね。それで魔がさして、悟が一花を神社に上がるあの長い階段から、突き落としたんじゃないですかね。目撃した人から聞いた話ではね。進と悟が長い階段を上がっていて、一花は彼らの後ろにいたらしいの。そして、階段の途中にあった踊り場でね、悟は突然止まったのよ。それで悟は突然に振り向いて、一花を押したってね。それで彼女は背後にね、こうやって、仰け反るように落ちていったってね。真逆さまになった状態で、まず頭の後ろを一度コンクリの階段に打ち付けて、それで脱力した体が、横に倒れたらしいのよ。そこからは何度も、その頭の横をコンクリの階段に打ち付けながら、横向きに転がり落ちたそうよ。しかも、その階段は半分であっても、なかなかの長さらしくてね。確か二十回くらい鈍い打撲音が聞こえたらしいのよ。こわいわよね。かわいそうだよね。


 それで驚いた進は、階段を降りて、一花を助けようとしたけどね、悟がわざと体を強くねじって、進と自分を階段から落としたの。それから、進と悟でしょ。二人分の体重が一花の体に落ちたのよ。それで彼女の体は一瞬跳ね上がったの。しかもボコッボコッってね。肋骨が折れたのかしらね。どうしようもないよね。


 それで人通りが少ない参道でしたからね。救急車と警察が来たのはその二十分後だそうよ。その場にはね。目頭から血が流れた進と、首から流血していた悟と、空を見つめる一花がいたの。そう、他には誰も居なかったの。


 その後、一花は文字通り亡くなったのは知っているけど、進と悟の状況は知らないわ。あなた記者ですよね。今あの二人がどうなったか教えてくれるかしら。


 病院にいますが、快復しつつあります。

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