第17話 沢木SIDE ガキ相手


本社に戻り、仕方なく、俺は社長室に向かった。


出社するのは3か月ぶりだ。


渉外部三部の部長の俺が動くのは汚れ仕事のみ……


ヤクザ、半グレ絡みかと思えば、相手はだたの学生。


なんだかなぁ。


トントントン


「失礼します! 」


「おおぅ、沢木かよく来たな……」


「社長、たかがガキの事で私、本当に要ります? ヤクザや半グレ絡みじゃ無く、相手は逆切れした只のガキでしょう?」


「ああっ、だが弘毅が顔を焼かれたんだ……そのままじゃ済ませられんだろうが……」


「それなら警察にでも行ったらどうですか? 表で充分な話じゃないですか?」


「それが、そうもいかんのだ……弘毅やその取り巻きが随分な虐めをしていたから、万が一バレたらこっちも困るから、表に出す訳にもいかんのだ」


随分な虐めね......


だったら、そのガキ悪くねーじゃんか。


それなのに俺がでるのか……悲惨だな……そいつ。


「それで、社長は私に何をお望みで! 流石にガキを殺せ! とか言いませんよね!」


「流石に殺せとまでは言わんな……こちらも、弘毅がかなり酷い事をしていた事は山本から聞いている。だが『負けて終わり』じゃ面白くない。だから、少し痛い目にあわせて、そこで終わり。そういう絵を描いてくれ……以上だ」


社長は危ない人間だが道理は弁えている。


今回はガキの喧嘩だ。


落としどころは自分達の負けじゃなく『勝ち』ならそれで良い。


そういう事か……


「分った。 それで社長、他に困りごとはありますか?」


「まぁ、別に沢木に頼むことは特にない……」


「それじゃ、それが終わりましたら、今度はヨーロッパにでも秘書を連れて行かせて貰います」


「今は落ち着いて困るっていることは無いから……それで良い」


「それじゃ、これで失礼します」


俺は社長室を後にした。


◆◆◆


さて、どうしたもんかねぇ。


相手はガキだ。


流石に、余り惨い事はしたくないねぇ~


あくまで聞いた話だとガキの逆切れだ。


散々、苛め抜かれたガキが、切羽詰まって逆切れした。


それだけだな……


俺からしたら、此処で終わりで良いんだが、社長はそれを負けだと考える。


ガキの喧嘩なんて放って置けばいいのに.......本当に『勝ち』に拘る。


落としどころは、最後に『此方が手を出して終わる』それで良い筈だ。


さて、どうするかね……


相手は逆切れしているただのガキ。


仕方ないねぇ~


本物の半グレ……まぁ下っ端で良いだろう。


ちょっとけしかけてボコって脅して終わり。


それで良いだろう……


仕方ねぇな……


俺はスマホを取り出し電話をかける。


危ない内容は形に残さない為に電話が丁度良い。


『高槻くん、お仕事を頼んでも良いかな? 人一人攫って3時間位さぁ説教してボコる簡単な仕事なんだけど? 50万円でどう?』


『沢木さんですか、人は何人必要すかぁ~ うちは人数少ないすよ』


高槻の『マッドウルフ』は全員集めても俺の知る限り8人だ。


だからこそ、こういう小さい話に丁度良い。


『1人10万計算で5人で50万、それ以上居ても上限50万の仕事だ。 相手は高校生のガキ1人……この間まで虐められっ子だったが、追い詰められて弾けた奴だ。 適度に痛めつけて詫び入れさせて言い聞かせて解放。楽な仕事だろう?』


『そんな仕事ですか? 楽でいいすねぇ~!』


『まぁ、今回は只の小遣い稼ぎだ。そのうち大きい仕事も振ってやるから……』


『いいすねぇ~ その時はたのんます』


此奴の仲間は気が小さいし、大きな仕事を振るなら100人近い仲間を持つ相手に頼む。


此奴らに大きな仕事は怖くて頼めない。


この程度の仕事しか使えない奴らだ。


だが、安く済むし……大きな所に頼むと、その後が面倒くさいから……ガキを相手にするには丁度よい。


『ああっ、任せて置け……それで今回の相手だが、泉省吾ってガキだ……住所は……攫って準備が済んだら電話してくれ。それじゃ頼んだ……』


まぁ、こんな物で良いだろう。


本物の半グレに攫われて監禁状態。


そこから、ボコリ、大怪我する位の怪我をさせ『山上に逆らわないように警告』して解放。


老人相手の地上げと、なんら変わらない。


ガキ相手のけじめなら、こんな物で充分だ……


今回の話は、これで手じまいなら、社長も文句はないだろう。





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