第16話 完了


「うんぐっぺろぺろ、ハァハァ省吾ぉ~」


まさか、此処まで俺に依存するとは思っていなかったな。


あの気の強い祥子が俺の足を舐めている。


しかもご丁寧に、俺の靴下を脱がせてシャワーも浴びてない状態なのにな……


学校にも行かせず、暇さえあれば、ヤリっぱなしで、体に刺青やピアスを入れていけばこうもなるか。


そして、囁く『愛の言葉』……偶に『躾け』として暴言。


これで落ちなかった女はいねー。


極妻に、レディースの女総長……半グレの女。


どんな女もこれで落ちない女は居なかった。


尤も、今回と違って『監禁』で行ったがなぁ。


これでも、俺は『完全に手に入れた女』は大切にする。


そろそろ、此奴が『本当に俺の女』になったか、試してみた方が良いだろう……


それに受かれば『俺の女』だ。


だが、受からなければ……此処まで踏み込ませたからには壊して捨てねーとな。


「なぁ、祥子。お前は俺の事を本当に愛しているのか?」


「省吾……愛しているわ……世界で一番……うん、ぺろぺろ、愛しているよ」


「そうか……それに嘘はないよな!


顔を赤くしながら俺の足の指を丁寧に舐めているんだ。


嘘はない。


此処までなら、時間をかければどんな女でもなる。


だが、此処から一歩踏み込めるかどうかは……最後の最後で解らねーからな。


◆◆◆


山上慈愛病院。


ここも山上一族が経営している病院だけど、流石に大学病院に比べ規模は小さい。


見た感じからして街の大きな病院位。


古そうな病院だから恐らくカメラとかも無いだろう。


「省吾……此処……」


「これから弘毅のお見舞いに行くんだ」


「お見舞い……本当に?」


まだ、祥子には甘い所がある。


「お前、なに笑顔になっているわけ? まだ弘毅に未練があるのか? それならお前、要らねーから弘毅に返そうか? あん!」


多分、祥子にはそんな気はないのは解るが、敢えて此処は突き放す。


多分、仲直り、そんな甘い事を考えていたのかも知れねー。


俺はこれから、此奴にある試験をする。


それが出来ないならマジで要らねー。


この甘さで出来るかどうかだ……


「これ、使え」


「省吾、これは……」


「祥子、お前は俺を愛しているんだろう? なら出来る筈だよな? この注射器で点滴のチューブに空気を入れるんだ。そうすれば、弘毅は死ぬ……今日の見舞いでお前がする事は弘毅の前で俺とイチャつく事とその注射器で空気を入れる事だ…….それが出来たら合格だ」


「それって……弘毅くんを私が殺すって事? 」


「ああっ、出来るよなっ! 俺の事好きなんだよな!」


これをしたからって実は死なない。


まず、点滴じたいに空気が体に入らない構造になっているし、体に空気が入っても実は大量に入らなければ何も起きない。


空気注射で簡単に人が死ぬのは、クロロフォルムやスタンガンで一瞬で気を失うと同じでドラマや小説の中の話......嘘だ。


だが、これを知らない人間は実に多い。


「省吾……流石に私……」


「ほら、行くぞ……出来ないならお前は要らねーから! 所詮、口先だけの女なら俺は要らねーんだよ! 俺が好きなら出来るよな? 出来ねーなら要らねーからお前、俺の前から消えちまえよ!」


「ううっ……」


言葉に出さねーが『此奴はやる』そういう確信はある。


そこまでの関係は積み上げた。


出来ねーなら……俺の失敗。


失敗作は俺は要らねー。


全てを俺に捧げない女なんか要らねーからな。


◆◆◆


入院施設があるとは言え個人病院。


受付を簡単に素通りできた。


こんなんで大丈夫か?


この病院3階と4階が入院設備になっている。


しかも、ちゃんと名前が書いてあるから探すのは簡単だ。


久保田や立島の名前があるが今日は関係ない。


しかし……あいつ等同じフロアかと思ったら、どうやら弘毅は違うフロアのようだ。


3階には名前が無いようなので4階にあがった。


しかし、此奴ら大丈夫か?


敵がいる状態で護衛もおかないのか?


まぁ、相手がガキだと思って舐めているんだな。


此処だ……


「祥子、ちゃんとやれよ!」


「……うん」


祥子の顔は青い。


真実を知っていると俺とは違い祥子はこれから弘毅を殺すと思っているから、顔は青く体が震えている。


「上手くやれよ……俺は弘毅の気を引いておくから」


個室だから便利だな。


入ってみたが、弘毅が寝ているだけで他に誰もいない。


俺が、祥子と点滴を弘毅から隠すようにした立ち位置で弘毅に話かける。


「よう、弘毅……遊びに来たぜ!」


「ううっ、省吾……」


此奴も顏が青いな……


「大きな声を出すなよ……出したら殺すからな……」


そう言いながら、弘毅の喉元にナイフを突きつけた。


横で見ていると祥子はしっかりと空気注射を終えてポケットに注射器をしまっていた。


これで良い……これで完全に俺の女だ。


俺はナースコールのボタンをベッドから下に落とし軽く、頬を叩く。


「それでさぁ……お前どう言うつもり?」


「俺は……ぎゃぁぁぁーー」


軽く顔面を叩いた。


顏に火傷を負っているし、鼻も折れているんだ、そりゃ痛ぇよな。


「俺がまだ喋っているんだ……だれが話して良いって言った? ああん! 散々暴力を振るい、金迄巻き上げた挙句……祥子に手を出さない約束を破った……その報復が今の状態だよな? まず最初に祥子は返して貰った。もう俺の女だ」


そう言うと俺は祥子のスカートを捲りパンティを下げ『省吾専用淫乱女』の刺青を見せた。


「省吾、恥ずかしいよ」


「ううっ……」


殴られるのが怖いのか、話さないな。


「お前、馬鹿じゃねーの! 俺との約束破って祥子に手を出して、キスしかしてねーって、どんだけチェリーなわけ? 馬鹿だなぁ~勿論此奴の処女は俺がしっかり貰ってやったしよぉ~、お前がキスした口は俺の物を咥えてるんだぜ……女1人寝取れないなんてどんだけ馬鹿なの……」


祥子の胸を揉みながら話していると……なんだ此奴、泣いてやがるの……


まさか祥子の事が本気で好きだったのか……


違うと思っていたが……まさかね。


キスしかしてねーって事は、案外口で言っていた事が本音じゃなく、本気で好きだったのかもな……まぁ、今となっちゃもう遅ぇけどな。


「ううっ……」


「それでな……その怪我のまま泣き寝入りしてくれればそれで金だけ返してくれれば良かったんだけど、生意気に久保田達けしかけやがって……これどうするの? もう、金の回収を諦めてお前を殺しちゃおうかな? そう思うんだけど? どうしようか?」


俺はナイフを弘毅の耳に当てて少しナイフを引いた。


「ううっ、やめろ……」


「まず、金の話だ……どうする?」


「ううっ……金なら返す……」


「返す金は600万だったけどよーーっ! 約束破って祥子に手を出して、仲間使って俺をボコろうとしたから……そうだな現金1千万、それで許してやんよ! どうだ?! それだけくれたらお前の命を助けてやるどうだ? あん、安いだろう?」


まぁ、これは言いがかりだ。


だが、もう外堀は埋まっている。


此奴が俺から持っていった金は600万。


そう周りは思っている。


「俺は……ううっ、そこまでの金はとっていない……精々100万」


まぁ実際は60万円ちょいだな。


だが、そんなのは知らない。


「お前……よく考えて話せ! お前の命が1千万、お前が俺を脅していた証拠なら山程ある……払わないならお前を殺すっ! どうせ殺しても此処まで『虐めの証拠』があれば精々が5年。お前を殺しても俺は5年間不自由な生活を送るだけだ……殺すか?」


ナイフを耳から胸の位置に持ってきた。


「やめろ……やめてくれ……払う……払うから」


「それで? 1千万どうやって払う? 返済計画を教えてくれ……」


「ううっ……取り敢えず、財布にある金を渡す……その後は暫く待ってくれ……頼むから……」


俺は弘毅の財布に手を掛け見たが……


「なんだぁ~30万しか入ってねーじゃ無いか? まぁ良い、今日はこれで良いや……あと970万円頑張れよ」


「ううっ……」


まぁ祥子のテストは終わったし、今日の所はこれで良い。


「それじゃ祥子帰るか? 金が入ったから今日はラブホにでも行こうぜ」


「……うん」


祥子の尻を触りながら俺は病室を後にした。


祥子は『俺の為なら人が殺せる』これで調教完了だな。

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