第8話 祥子 暴走

気が付くと夜になっていた。


頭が凄く痛い……私は……省吾に犯されたんだ。


ただ、犯されただけじゃない……その後はもっと最悪な事をさせられた。


目の前で排便をさせられ、お尻から熱い物を入れられ、頭がぼーっとしたのを覚えている。


『痛いっ』


胸とお尻と股間の上が痛い。


乳首が……それより更に痛い。


そうだ……私……手を伸ばして電気をつけた。


「嘘……嘘でしょう……」


擦っても取れない……落書きじゃ無くてまさか刺青なの……


胸が痛いのは、ピアスのせい……


省吾は此処まで私を憎んでいたんだ……そう思うと涙が出てくる。


もう、私、ボロボロだよ……こんな体、きっと誰も愛してくれない。


『汚い』そう言う体にしか見えない。


だけど……仕方ないのかも知れない。


横に居る省吾を見ると……こうされても仕方が無い。


そう思える。


体中傷だらけだ。


刃物で切られた跡が沢山ある。


顏迄切り刻まれて……私以上に酷い体だ。


学校だけじゃ無かったんだ……弘毅は半グレ。


そういう噂は私も知っていた。


外でここまでされていたんだね…….


私は馬鹿だ……ううん大馬鹿だ。


省吾が私を守ってくれていたなんて思わなかったの。


私は、省吾が好きだった。


幼馴染で小さい頃からいつも一緒に居て自然と好きになっていた。


弘毅くんから私を庇ってくれていたのはちゃんと覚えているよ。


だけど、しっかりやり返していたのに途中からは言いなりになってパシリをする様になっていったよね。


なんでやり返さないの? そう思っていたんだ。


これでも虐めを止めた事もあるんだよ……


だけど、何時までたってもウジウジしている省吾を見ているのが嫌になって……最後は嫌いになったの。


それとは逆に、弘毅くんは悪い噂はあるけどクラスの中心人物で、いつもウジウジしている省吾と違って一緒に居ると楽しくて、カッコ良いな……そう思うようになったの。


告白された時は凄く嬉しくて……その日は眠れなかったわ。


好きだった省吾がクラス全員から虐められるようになって、パシリをさせられるようになって『情けない』そう思うようになってどんどん嫌いになったのよ。


好きだった人が惨めな姿を晒すんだもん……嫌いになるでしょう。


その逆に弘毅くんが頼りがいがあって優しくて、デートしても奢ってくれて大切にしてくれたから……好きになっていったわ。


だけど……全部それは私のせいだったのね。


私を人質に取られたから、手出しができなかった。


弘毅が気前よくお金を出して奢ってくれたのは全部省吾から脅しとったお金だったのね。


『私や洋子ちゃんが居なければ省吾は幸せだったんだね』


ねぇ省吾……私の事どう思っているの?


ただ憎いだけ? それとも好きなのかな?


今の貴方から気持ちを聞いてみたいの。


◆◆◆


気持ち良く眠っている所、いきなり起こされた。


「う~ん祥子、どうした?」


「ねぇ、省吾、私の事どう思っているの?」


「どう思っているって何が?」


「憎い? それとも好きなのかな?」


此奴、まさかマゾなのか?


「凄く憎いに決まっているだろうがっ!」


「そうか……そうだよね……変な事聞いてゴメンね……」


省吾ならどう言うのか……彼奴此奴の事が好きなんだよな。


俺の為に死んでくれたんだ。


彼奴の夢の一つ位は叶えてやるか……


香典替わりにあいつの好きな女を手元に置いてやるか。


「だけど、それ以上に、好きだという気持ちもある……いや、愛している」


「本当?」


「ああっ……」


「本当に?」


まさか、これで落ちるのか?


幾らなんでもチョロすぎるぞ……


「ああっ、好きじゃなくちゃ此処までしない……お前を他の男に二度と取られたくないからこうしたんだ。 この状態の祥子を抱く男は居ないからな……」


「確かにそうだね、こんな卑猥な刺青が入っている女なんて誰も抱かないよ……ほんとに酷いよ省吾……」


「お前だって……」


「言わなくて良いよ……私本当に省吾に酷い事していたんだから……」


「ああっ、そうだな……」


「もう一度聞くね? 省吾は私の事好きなんだよね?」


「好きだ……」


「それなら良いや……それじゃ、しようか?」


「しようか……?」


「セックス! さっき散々罵ったじゃない?『お前嫌がるし、マグロ状態だし全然面白くねー。本当につまんねーな』って」


「確かに言ったな」


「その後、可笑しな事されたけど、省吾満足して無いんでしょう? だったら、私もう嫌がらないしちゃんと自分からするから……経験無いけど頑張ってするからしよう……うんぐっ」


俺が何か言うまでも無く、祥子は俺の物を咥えた。


さっき迄と違い、嫌々じゃないのが良く解った。


『女には飴と鞭』それが俺の女の落し方だ。


暴力を振るい、体に刺青をいれ適度に壊した女は何故か俺に惚れる。


だけど、たった1回で落ちたか……いやこれは俺一人で落としたんじゃねーな。


この女は省吾、お前に惚れていた。


だから、簡単に落せたのかも知れねーな。


その後、避妊もしてないのに、俺に跨り自らぎこちないながらも祥子は腰を振り続け二回程俺を逝かせると嬉しそうに俺の傍に再び横たわった。


「愛しているからね省吾……」


「だったら名前を入れても良いか?」


一瞬なんの事か解らず驚いていたが、すぐに刺青の事と解ったみたいだ。


「うん……」


嬉しそうに頷いた。


お尻の『肉便器』の上に文字を足し『省吾専用肉便器』に……


腹の下性器の上の『淫乱』にも文字を足し『省吾専用淫乱女』に


胸のハートマークの中には『省吾命』と彫った。


これで抱く男がいたら、そいつは俺くらいいかれた奴だ。


「終わったぞ……」


「うん、これで私、省吾の物にされちゃったね……責任とってね」


「解った……責任とれば良いんだろう……」


まぁ省吾になって初めて手に入れた女だ……少しは大切に使ってやるか……


「うん……あっ流石にもう遅いから私帰るね……」


「ああっ」


「送ってくれないんだ……」


「わかったよ」


仕方なく俺は家の近くまで祥子を送ってやった。


◆◆◆


もう寝ているみたい……良かった。


家に帰ると真っ先にシャワーを浴びた、省吾に中出しをされたのでシャワーで念入りに洗い流さないとね。 子供が出来たらどうするんだろう? ここまで来たら責任とってくれるのなら、それもでも構わないけど、流石にまだパパにはなりたくないよね……


幼い頃の省吾との思い出が繰り返し頭に浮かんできた。


暇さえあればいつも洋子ちゃんと三人で居たな~


よく考えたら、あの頃から幼いながらもお互い好きだったのかもね。


私は弘毅が私を庇った省吾を虐めている事を知るかなり前から、省吾に好意を持たれていた事を知っていた。



気の迷いで弘毅の事を想う気持ちが大きくなるにつれ省吾が虐められても平気になっていた。


酷い女ね……自分をあれ程愛してくれた人を騙されていたとは言え裏切っていたんだから……


この位されても仕方ないわ。


だけど、これも『愛』なのよね。


私を自分だけの物にしたいからこんな事したのね。


痛いけど、これが愛なら我慢できるよ。


きっとこれで元通り……昔みたいに仲良く……ううん昔以上に仲良くなれるよね。


気持ち良くシャワーを浴びていると廊下の明かりがついた。


「お風呂から出たらちょっとリビングまで来なさい」


不機嫌そうな声でお母さんが言ってきた。


リビングに行くと……お母さんとお父さんがテーブルに座っていた、雰囲気から只事ではないと悟ったので大人しく席につくとお母さんが話し始めた。


「祥子私達に言いたい事があるんじゃないの?」


「お、お母さん、なんのこと?」


お母さんの目は少し赤く充血していて、さっきまで泣いていたようだった。


「省吾くんから聞いたわ、弘毅くんって随分危ない子で、二人して随分と省吾くんに酷い事したみたいじゃない?」


省吾? もしかして話したのかな……


「省吾くん、事細かに証拠を見せながら私に話してきてね「おばさんもう、俺は貴方の娘さんとは縁をきりますので貴方達とも金輪際縁関わることはありません、今まで良くしてくれてありがとう御座いました」って言ってきたのよ……」


「!?そ、そんな……それ何時の話なの」


さっきあれ程愛し合ったのに……ううっ駄目だったの。


「夕方の事よ!」


「そう、夕方の事なのね」


それなら良かった。


仲直り前じゃない……


私を軽蔑するかの様な目でみながらお父さんが口を開く


「祥子、別にお前は省吾くんとお付き合いしてた訳でも婚約してた訳でもないから、恋愛は自由だ、しかし自分の為に頑張ってくれた幼馴染にあそこ迄酷い事をして良いのか!お前がしていた事は虐めの範疇でなく最早犯罪だ……父さんも母さんも昔は少しはヤンチャしていた! だが、これは酷すぎる……」


いつも私の事を褒めてくれる優しいお父さんからの怒声に顔がひきつった。


「……自分でも最低だと思っているよ……」


「お前の彼氏の弘毅くんは省吾くんを虐めていた相手だそうだな」


「それも認めるよ……」


「お前はその事を知ってて弘毅くんとつき合い、しかも省吾くんは従わないとお前を襲うと弘毅くんに脅されて、お前を守る為に虐めを受け入れていたそうじゃないか?」


「それは今日初めて知ったんだよ……今迄、私や洋子ちゃんが原因で虐められていたなんて知らなかった……これは本当だよ!」


「そうか、それは信じよう……だが、虐めだとしても母さんから聞いた内容だと、余りに酷すぎる最早犯罪だぞ……」


「そこ迄酷いなんて本当に知らなかったんだ……今更だけどね」


「いずれにしろ、あんたは虐めに加担していたのよね? あんたを死に物狂いで守っていた幼馴染に酷い事して……これからどうするの? 省吾くんがされた事、今迄貴方の為にしていた事を考えるとお母さん胸が苦しくなるわよ」


「男だから解るが男が男に抱かれる苦痛はただ事じゃない……どう責任をとるんだ……お金で解決できるもんでもないぞ……」


「わ、私……省吾にちゃんと謝ったんだ……」


パシッッ


お母さんが涙を流しながら私の頬を思いっきり叩いた


「本当に取り返しのつかない事を! 謝って済む問題じゃないわ……あそこ迄、省吾くんを裏切ってボロボロにして!どう責任をとるの? それにそんな危ない人間と付き合ってこれからどうするつもりなのよ……」


「それは省吾に……」


「『おばさんもう、俺は貴方の娘さんとは縁をきりますので貴方達とも金輪際縁関わることはありません、今まで良くしてくれてありがとう御座いました』そう言われているのよ」


「お母さん、さっき私省吾に会って謝ってきたんだ……」


「それで許される問題じゃないでしょう」


「解っているよ……今の省吾ボロボロだもん、体も心も全部……それをしたのは私なのも全部解っている……だけどね、そんな状態でも省吾は私が好きなんだって……こんな酷い女でも好きなんだって……だから私、家を出て行く……省吾の傍で省吾が立ち直るまで居るつもり……もし弘毅と揉めたら絶対に今度は私が省吾をまもる……この償い方じゃダメかな……」


「そうね……貴方どうかな?」


「省吾くんと祥子を置き換えれば『省吾くんの為に祥子が傷物になった……だから省吾くん責任をとってくれ』となる祥子が原因で省吾くんが傷物になったんだ、省吾くんが祥子の事が好きでそういう形で責任がとれると言う事なら良いんじゃないか?」


「それじゃ」


「いいわ、その代り省吾くんが立ち直って許してくれるまで帰って来ちゃ駄目だからね」


「うん」


田向の予想外の方向に祥子は暴走していく。




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