第9話 取り巻きSIDE やるしかない


久保田哲也 立島浩二 黒川俊夫の三人は教室に入るなり顔を青ざめていた。


「ううっ……ううったふけてくえ」


弘毅がうずくまり、大怪我をしている。


顏も焼けただれている……


「弘毅―――っ! クソッ何があったんだ……浩二、救急車を呼べーーっ、俊夫は、何があったか聞けーーっ」


「哲也――っ! 救急車は不味い、俺が背負って病院に向かい、途中でタクシーを見つけたら拾っていく!」


「そうか、浩二頼んだぞ!」


不味いな……クソッ……弘毅が祥子とイチャつきたいから少し距離を置いてくれ。


そう言われたから学校内位ならいいだろうと目を話したらこれだ。


どうにかしないと不味い事になる。


クソッ……


「おい、俊夫、なにか解ったか」


周りに話を聞きにいってきた俊夫がこちらに来た。


「ああっ、哲也、これをやったのは省吾らしい」


「省吾……彼奴か?」


彼奴に此処までの事ができるのか?


ただ、殴るだけで黙るような奴だ。


だが、省吾と言う事なら警察沙汰は不味い。


彼奴、相手に弘毅や俺達はかなり酷い事をしていたからな。


「仕方ない……こうなったら親父に連絡して警察沙汰にならないようにしないとな……」


「ああっ」


不味いな……俺達三人は山上建設に勤める親を持つ。


社長の息子の弘毅の面倒を見る事で俺達や親もその恩恵に預かっている。


月10万の小遣いや、親の会社での立場など様々な恩恵にあずかっている。


その代り俺達は弘毅の面倒を見なくてはならない。


その中には弘毅の護衛も含まれている。


学校内だから安全。


そう考えて、屋上で休憩なんてするんじゃ無かった。


幾ら、弘毅に言われてもせめて遠くから見守る位はするべきだった。


どうすんだよ……これ。


◆◆◆


病院にて……


俺と浩二が駆けつけると俊夫が廊下で待っていた。


「弘毅は大丈夫か?」


「命と言う意味なら大丈夫だ……だが、鼻の骨は折られ庇った時に腕を骨折し、あばらも2本折れたようだ、あと歯も2本程折れたみたいだ……今は麻酔で寝ている」


「それで、後遺症とかは残らないのか?」


「それは問題なさそうだが、幾つか傷が残るのと、前歯は……まぁ解るだろう」


「なぁ、哲也……本当にこれをあの省吾がやったのか? しかも俺達が席を外した僅かな時間で……」


「浩二、お前も聞いただろう……間違いない……」


「だが、幼馴染の件でちょっと脅しただけでサンドバックになるような奴がこんな事をするのか?」


「確かに……」


「哲也、浩二……やるかも知れないぞ! 追い詰められた人間は何をするか解らない。 良く話を聞くだろう……追い詰めた人間が包丁を持って刺してきた……とかな。 哲也は忘れているかも知れないが省吾は骨がある奴だった、幼馴染という人質がなければ俺達程じゃないがそこそこやれる奴だったぜ」


「そうか……」


大体、弘毅の邪な考えから始まった虐めだ。


しかも、始まりは『注意してくるムカつく女』が居るから落としてやる。という馬鹿な考えからスタートして、そいつを庇う幼馴染が居てムカつく……そんな話だ。


結局、弘毅の思惑は成功し祥子を口説き落とし、目障りな省吾は祥子を人質にとられクラスの最下層に堕ちた。


あとは、弘毅の計画じゃ祥子を犯るだけ犯って捨てて終わる……筈だった。


だが、最大の誤算は恐らく祥子も一緒になって省吾を虐めていた事だ。


弘毅は面白がって祥子を捨てるのを伸ばした……その結果がこれだ。


俊夫の言う通りだ。


祥子が弘毅の女になった事で足枷が無くなり……彼奴は絶望していた。


俺達がボコリ、それを祥子が笑って見た時の彼奴の目。


忘れちゃいけなかった。


「それで、哲也どうする?」


「弘毅の敵討ちをしなくちゃならないだろうな……」


「確かにそうでもしないと親父の立場が悪くなる」


「そうそう、それを終わらせてから、弘毅の機嫌をとってからじゃないと確かに不味いな」


暫くすると、山上建設の社長秘書の山本さんが病院に駆けつけてきた。


「お坊ちゃまは無事ですか?」


「それが……」


弘毅の今の状態と状況について山本さんに話した。


「ほぅ~それは貴方達が護衛に失敗した……そう言う事ですな?」


山本さんが眼鏡をくいっとあげた。


「「「すみません」」」


「学校に手をまわして警察沙汰は避けました。良いですか? 貴方達の業績も親の昇進に絡んでくるんです! それに弘毅坊ちゃんは将来社長になります……今から仲良くして置けば自分の生活にもプラスになるんですよ」


「解っています」


二人も横で頷いた。


「あの……それで山上社長は……」


「山上社長は『子供の事は子供で解決しろ』と言う事です。 学校レベルの事はこれからも揉み消すので警察沙汰にならないようにしろと……」


「それはやり返さなくて良いという事でしょうか?」


「山上社長も弘毅坊ちゃんも『負けるのが嫌い』です! 弘毅坊ちゃんが目を覚ます前に速やかに片づけて置かないと……貴方達の親がもしかしたら降格するかも知れませんねぇ」


もうやるしか無いんだな。












  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る