信長の首の在処《ありか》

 「果心居士。柴田勝家、織田信孝をやっつけた。だが信長様の首を持っていった奴は見当つくのか」

 「その時、本因坊算砂が風呂敷を持って出たのは知っていますが、まだ確証は」果心居士は突如現れる。

 「そんなのは向こうからやって見るもんだ。どこへ行く?」

 「阿弥陀寺あみだじ」

 「では、ついてこい」

 「ハッ」

 秀吉と果心居士と数人は一緒に阿弥陀寺、そう京に行く。

 京、阿弥陀寺では本因坊算砂が勤めしようと励んでいた。

 すると「これはこれは、本因坊算砂様どちらへ?」本因坊算砂は秀吉が現れるとは思っていなかった。

 だが一礼をして「これはこれは羽柴様、お勤めですよ」本因坊算砂はお勤めしようとすると「信長様へですか?」果心居士に姿を現した。

 「信長様⁈信長様とはどう言うことですか?葬儀は済みましたよ」本因坊算砂は言ったが

 「調べ尽くしてる。首はどこにある?」秀吉はイライラした。

 すると「信長様の葬儀はもう済んでおり、改めてする必要はないです」清玉上人せいぎょくしょうにんは現れる。

 「清玉上人様。お前の名は知っておるぞ、そこらの大名より朝廷の勅願僧ちょくがんそうの清玉上人の名はな!」秀吉は首を捻ひねって清玉上人を見た。

 「それはそれは。ただそこらの大名は失礼にあたりますよ。それに皇族達の勅願僧はたまたまですよ、めっそうもない」清玉上人はまじましと秀吉を見た。

 「そうですが、秀吉様は仮にも信長様の後継者です」果心居士はイライラして清玉上人に言う。

 「あれ、信長様の後継者は三法師様ではなかったのか?」清玉上人は落ち着きながら果心居士に論破された。

 信長の遺骨を譲り受けることをあきらめた秀吉は、「それなら、寺に永代供養料えいたいくようりょうとして三百石を寄進する!」と申したが

 「結構です。こちらで供養は終わりました」清玉上人はこれもかたくなに拒否する。

 果てしなく時間は長かったよに刻の時間は両者共に過ぎて行った。

 「わかった、すまなんだな」秀吉は踵と帰っていった。

 帰るのを見届けてから

 「清玉上人様!ありがとうございました」本因坊算砂は堪えてた。

 「よく気がついていましたね、此処へ着いてたからまずは忍び対策として窓がない暗い部屋に入り、外に出る時は信用できる十人一斉に四方八方に飛び出す、囲碁ならではの常識破りの戦略。さらに駿河国の西山本門寺、日海にっかい様を呼び出すとは」清玉上人は感心した。

 「ハッ。駿河国の西山本門寺、日海様は清玉上人を知ってるかと」本因坊算砂は感謝する。

 「秀吉様は、信長様の御恩を受けて身を立てたのに、亡くなられたのを幸いに天下を我がものにしている。なんとも無念であり、秀吉ひでよし様は『人でなし』だ」清玉上人は憐れんだ。

 「清玉上人様、知ってましたよね?『駿河国の西山本門寺、日海様は清玉上人様を知ってるかと。』このことから日海様は清玉上人と仲がよろしいかと。では、駿河国の西山本門寺にわざわざ遠方の京を知ってるのですか?」本因坊算砂は清玉上人を綻びを、そして核心を突いた。

 それは秀吉が起こることを知っていながら信長を見殺しにしたこと。

 そのことを清玉上人が知っていた、清玉上人は朝廷の勅願僧。

 清玉上人は隠していた懐刀ふところがたなを隠れて握りしめた。

 すると「私は僧であり、又は囲碁棋士です。物騒な輩とは縁を切っております。では、これにて」本因坊算砂は涙を流しながら歯を噛み締めるように後にした。

 「帰ったか」清玉上人は本因坊算砂を帰ってから窓がない暗い部屋に入った。

 すると(リーン、リーン、リーン)窓がない部屋に何とも言えない微かに風が吹く。

 「すまないね。清玉上人、今は杉谷善住坊がいいかな?」影の王は答えた。

 「いえいえ。織田信長様の首を隠すのは容易いことです。ただその過程で本因坊算砂に気づかれたかも知れません」杉谷善住坊は両方の手をついて謝る。

 「よい。それにしても本因坊算砂は恐ろしく頭が良いな?羽柴秀吉が考えているであろうことまで見事に読む力。一度手合わせできんかの?」影の王は冗談めかして言う。

 「ハッ。考えて置きます」

 「いや、考えてないことは明白だよ。あの信長ですら八百長をしなかった男だ。

 それと本因坊算砂は朝廷の誰かと思わしとくよ」

 「ハッ」杉谷善住坊は窓がない暗い部屋を出た。

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