麒麟《きりん》3

 すでに三好義継や松永久秀らは義昭の上洛に協力し、反義昭勢力の牽制に動いていた。

 一方、義昭・信長に対して抵抗した南近江の・六角義賢、義治父子は織田軍の攻撃を受ける。

 (ガギーン、ガギーン)「ハハハハ!終わりだ!」果心居士かしんこじらは攻めたが『火焔かえんの術』「ブォォォ!」百地丹波は火炎放射器みたいに吹いたが

 「おっと。『火焔の術』火の使い手であったか。」果心居士はぶら下がりながら聞いた。

 「火はいいぞ?あらゆる物を消し炭に出来る。何でもな」百地丹波は『火焔の術』「ブォォォ!」果心居士かしんこじは苦戦した。

 「チッ、角張かくばり頭め。もうちょっとなとこで、ここは一旦は引くか。角張頭、次はもうちょっとマシな頭にしようぜ!」果心居士は言うと「逃げるな〜!」百地丹波は吠えた。

 『烏の術』(バサッ、バサッ)果心居士は烏に化けて逃げる。

 「逃げたか」百地丹波も引いた。

 たがその間が命取りとなる。

 夜中、百地丹波が(ザッザッ)本拠ほんきょ地の観音寺かんのうじ城に着くと

 「なんだ?どうなってる?」唖然あぜんとした。

 近づいて見ると槍やらで刺されたあとはあるが「これは?」噛みつかれた後もある。臭い獣臭が。

 すると「気がついたか?百地丹波」それはさっきまで争っていた果心居士だった。

 「二つ程聞きたい。まずはこれは織田軍がやったことか?そして最後は離れた場所で仕向けたのはわしが邪魔するからか?」振り向きながら手をだらーんとしながら、聞いた。油断するように。

 「まずは一つ目。そうだ。それと二つ目もお前は邪魔だ。そうすることで織田軍と六角家が戦う。結果、勝つことができた」果心居士はゆっくりと油断できる速さで歩いてきた。

 「油断するとお思いだろ?油断はせんぞ?」果心居士はゆっくりと新月で星空が暗っくなって行った。

 すると目だけが蒼く光っていた。二つ、四つ、六つ、八つと次々増えてた。

 百地丹波は周り目でいっぱい。すると(ワオーン)狼が一斉に襲う。

 (キィン、キィン)「なるほど。一度はやられておいて、夜、新月を狙って狼でやると」(キィン、キィン、キィン)「放棄せざるを得ないか。」(ブォォォ)百地丹波は高く飛び退くと「オィ、退くとかあり得んだろ?」今度は果心居士が攻めた。

 これで父子は甲賀郡こうかぐんに後退、以降はゲリラ戦を展開。

 大津おおつまで信長が進軍すると、大和国やまとこくに遠征していた三好三人衆の軍も崩壊する。

 岩成友通いわなりともみちが降伏し、細川昭元ほそかわあきもと・三好長逸みよしながよしが城を放棄、篠原長房しのはらながふさも摂津越水せっつこしみずじょう城を放棄し、阿波あわ国へ落ち延びた。

 百地丹波も退くことには成功したが果心居士の容赦ない攻めに夜が明けるまで続く。

 狼は視力は乏とぼしいがそれを上回る聴覚と嗅覚と忍耐力がある。

 「クッソ〜!果心居士め〜!」百地丹波はズタボロになるまでやられた。

 果心居士は追いかけるが「クッソ!逃げられたか。戻るぞ」果心居士は仲間を引きつけた。

 唯一抵抗していた池田勝正も「降参じゃ」信長に降伏。

 足利義昭を第十五代将軍に擁立した信長は、義昭から管領・斯波しば家の家督継承もしくは管領代・副将軍の地位などを勧められたが、「いえ、結構です。また来たらすぐに駆けつけます!」草津くさつと大津おおつ、堺さかいの土地を貰う。

 「中々、信長は地位とか要らない、いい奴じゃのう」義昭は光秀に言うと

 「良過ぎるような気がしますが」

 すると(ドン、カンカン)「なんじゃ?」義昭は外を見ると(ドン、カンカン、ドッコラショ)「急げ〜、義昭様に建てるぞ〜」藤吉郎は踊りを踊って礎を築いていた。

 「これは?」果心居士は烏の目から信じられないものを見た。

 「ハッハッハッ!信長の奴、よくやってるでねぇかよ?」義昭は大変満足する。

 これは信長が義昭の為に二条に大規模な御所・二条御所を築く。

 「お〜、信長。よくぞ築いた、天晴れじゃ!」義昭は信長を抱擁し大いに喜んだ。

 「ハッ。一つ頼み事をお聞きください」信長は正座をして聞く。

 「なんじゃ?信長の言うことじゃ、何でも言うてみよ」義昭は嬉しさの余り答える。

 「ハッ。掟おきてを御守り頂きたい。

 一つ、御用係や警備係、雑用係などの同朋衆どうほうしゅうなど下級の使用人は前例通りとする。

 一つ、公家衆くげしゅう・御供衆・申次の者もうつぎのものは、将軍の御用があれば直ちに直訴すること。

 一つ、惣番衆そうばんしゅうは、呼ばれなくとも出動しなければならない。

 一つ、幕臣の家来が御所に用向きがある際は、当番役のときだけにすること、それ以外に御所に近づくことは禁止する。

 一つ、訴訟は幕臣は従来のやり方の通りとする。特例は認めない。

 一つ、奉公衆ほうこうしゅうが出した結論を将軍が一存で決めてはならない。

 一つ、訴訟規定は従来通りとする。

 一つ、当番衆は、正規の通りに何かを将軍に伝えてはならない。

 一つ、僧侶、比叡山延暦寺ひえいざんえんりゃくじの僧兵、医師、陰陽師をみだりに殿中でんちゅうに入れないこと。ただし足軽と猿楽師さるがくしは呼ばれれば入ってもよい。

 この掟を掲げてよいかな?義昭様を守る為です」信長は言うと「いいじゃろう」義昭は許可する。

 一方、信長は足利義昭の将軍としての権力を制限するため、『殿中御掟でんちゅうおんおきて』九ヶ条の掟

 「一つ、寺社本所領じしゃほんじょりょうを押領することを停止すること。

 一つ、請取沙汰うけとるざたを停止する事。

 一つ、喧嘩口論の禁止、違反する者は法をもって成敗する。これに合力ごうりきするものは同罪。

 一つ、理不尽に催促する事の禁止。

 一つ、将軍が訴訟を直接取り扱うちょくせつとりあつかう事を禁止。

 一つ、もし訴訟をしたいのであれば奉行人ぶぎょうにんを通すこと。

 一つ、占有地については関係を把握して差配すること。

 これを追加でどうですかな?」信長は言うと「おーん、いいじゃないのかな、よし許す」のちには追加七ヶ条を発令し、これを義昭に認めさせる。

 さらに

 「一つ、諸国の大名に御内書ごないしょを出す必要があるときは、必ず信長に報告して、信長の書状の副状も添えて出すこと。

 一つ、これまでに義昭が諸大名に出した命令は全て無効とし、改めて考えた上でその内容を定めること。

 一つ、将軍家に対して忠節ちゅうせつを尽くした者に恩賞おんしょう・褒美をやりたくても、将軍には領地がないのだから、信長の領地の中から都合をつけるようにすること。

 一つ、天下の政治は何事につけてもこの信長に任せられたのだから、誰かに従うことなく、将軍の上意じょういを得る必要もなく、信長自身の判断で成敗を加えるべきである。

 一つ、天下が泰平になったからには、宮中に関わる儀式などを将軍に行って欲しいこと。

 これも追加でよろしいかな?」

 「えぇい!そんなもんいちいちわしが断るか!信長の好きにせい!」信長は義昭に対して更に五ヶ条の条書じょうしょを発令して、これも義昭に認めさせた。

 「これ、足利義昭将軍は守りますかな?」藤吉郎は疑った。

 「守れなば斬るまでよ!」信長は高笑いをする。

 「これは楽しみかな?」(バサッ、バサッ)烏の目の果心居士は飛び立つ。

 しかし、徐々に不満が募ってたのが、足利義昭。

 「余よは将軍だぞ!最近、信長は余よを蔑ないがしろにしてる、違うか?」義昭だったが「滅相めっそうもない!信長様も公務が大変なのです。」臣下は言うと「それならいいのじゃ。それはそうと光秀はどこじゃ?」

 「さぁ?」

 「そうか」義昭が渋々言った。

 その時、光秀はというと、鳥のさえずり、木々の薫り、神聖な空気と言う方が良いのか、戦国時代とは別次元の空気を感じた。

 本殿まで入るとキョロキョロと見渡し裏入り口へ入ると真っ暗闇で光秀は静かにする。

 そしたら(リーン、リーン、リーン)真っ暗闇が何とも言えない微かに風が吹く。

 「急にどうした、光秀」何者かは落ち着いた感じで光秀に聞く。

 「ハッ。新しい風が吹くかもしれません」

 「どんな風じゃ」

 「織田信長です」

 「噂で聞いておる。桶狭間で今川義元を、美濃では斎藤義龍を討ち倒した。あと六角義賢、義治を引かせたのは大きいな」

 「どこでそれを?」光秀は驚いたが

 「わしも専属の忍びを放っておってな。腕は確かなのだがな、いかんせん、性格は変わっておってな」

 「どのくらいの人数ですか?」

 「ハハハハ、それは言わない。ただ平和を守る為には残虐も辞さない」

 「大丈夫ですか?」

 「お前と同じよ。拾い子を厳しい訓練をした。ただ、お前は学才がくさいを極めたが、忍術の極みだ」

 「大丈夫ですか?」

 「大丈夫だ。もしかしたら、案外近くにおるかも」何者かは気配を消した。

 光秀は本殿を出ると「忍びか」馬を乗って走らせる。

 一方で果心居士は興味深く烏の目から織田軍を見ていた。

 毛利元就が九州で大友家と交戦している隙をついて、出雲国奪還いずものくにだっかんを目指す尼子氏残党あまごしざんとうが挙兵し、以前尼子氏いぜんあまごしと同盟どうめいしていた山名祐豊やまなすけとよがこれを支援。

 「行けー!出雲国奪還をしろー!」山名祐豊が言うと

 これに対して元就は「織田様。和睦をしませぬか?その代わり、但馬国たじまのくにを取れませんかね〜?山名家を抑えていただきたい」元就は相手を冷静に、相手を媚びずに見た。

 これを見た信長も相手を冷静に、冷淡れいたんに見て

 「コイツは強いな」と一人ボソボソと言うと

 「了解した」信長に山名家の背後を脅かすよう但馬国に出兵をし「サル、取れ!出来るだけな!ガハハハ!」

 「ハァッ!出来るだけ落として見せます!」

 「ハッハッハッ!出来るだけだと?見せてみよ、藤吉郎」果心居士は烏の目から見た。

 そしたら藤吉郎を大将とした軍二万を派兵した。藤吉郎はわずか十日間で十八城を落城させ、京に引き上げた。

 「これで借りをできたな」藤吉郎が馬で帰ると

 「おぃ、どう言う意味じゃ?」小六は藤吉郎が笑ってる理由を教えて貰えなかずにいた。

 この時、此隅山城このすみやまじょうにいた祐豊は堺さかいに亡命したが、同年末には一千貫を礼銭として信長に献納して但馬国への復帰を許された。

 「な?」藤吉郎が笑うと「これは一本取られたわ!」小六も笑った。

 「なんだと⁈十日間で十八城を落城させただと⁈何故だ。信長より藤吉郎しか行くべきだ」果心居士は烏を飛び立つ。

 「サル。名前をつけろ。褒美じゃ」

 「それでは木下秀吉きのしたひでよしで。」

 「ガハハハ!よい、励め!」

 「ハッ!」

 木下藤吉郎から木下秀吉に代わる。

 さらに、甲斐国かいのくにの戦国大名・武田信玄と領国の境界を接することになったため、同盟を結ぶ。

 「殿、おめでとうございます。」

 「半兵衛〜!」秀吉は馬を降りて半兵衛に抱きついた。

 この竹中半兵衛たけなかはんべえは体が弱く見た目は細身で女性のようであり、出陣するときも静かに馬に乗っているだけだった。以前の主君の斎藤龍興だったが、居室きょしつの宿直を務めていたとき、半兵衛は稲葉山城に詰めていた弟・久作きゅうさくの看病のためと称して武具を隠した箱などをもって入城し、そして久作の居室で武装して稲葉山城を乗っ取ったが、すぐに解放して隠居を取る。

 これを当時、木下藤吉郎が耳にし三度の末に「殿は天を取れますか?ではまずは稲葉山城を落としてください」

 「わかった」藤吉郎は兵糧攻めを行い稲葉山城を落とす。

 城へ帰ってから藤吉郎は兵糧攻めは半兵衛が生み出したものだと信長は褒めた。

 「わしの配下となれ!」信長は喜ぶと

 「残念ですが、お断り申し上げます」半兵衛はキッパリと礼儀正しく断りをいれ、くるっと半回転を向いて「この竹中半兵衛たけなかはんべえを末席に加えてくださいませ」まさか藤吉郎へ直訴。

 信長と藤吉郎は驚愕した。

 「どう致しましょう?」

 「好きにせぇ!」信長は怒って部屋を出た。

 「どうしてわしなのか?殿しか知行がいいぞ!」

 「三顧之礼さんこのれいをして、殿はまだわからない私を信頼して、私の言う通りに兵を動かしました。これが理由です」と。

 そして現在「イヤ〜半兵衛のおかげじゃ!それと官兵衛とな!」

 秀吉はポンポンと叩いた。

 「使うのは結局、殿自身。半兵衛様の言うように駒なのです」

 その黒田官兵衛くろだかんべえは、幼少期母親を亡くし、文学に耽溺たんできした。

 木下藤吉郎に使えるがここでとんでもないことをやらかす。

 宇喜多直家うきたなおいえに離反され、官兵衛にはだった三百の兵しか無かったが、奇襲攻撃を仕掛けるなど、二度にわたり戦い、三木通秋みきみちあきの援軍などもあって撃退に成功。

 信長も才能を高く評価、ただ野心家であった。

 そして現在。

 「これか〜」烏の目、果心居士は気がついてあった。

 その秀吉が参謀と評され、「両兵衛りょうべえ」「二兵衛にへえ」とされた。

 一方、信長は北伊勢きたいせに攻め寄せせめよせ、滝川一益たきがわかずますをその地に配した。

 南伊勢五郡みなみいせごぐんは国司こくしである北畠きたばたけ家が勢力を誇る。

 そこで足利義昭を動かして和平に持ち込んだが、その和平の条件について信長と義昭の意見に齟齬そごがみられ、また出陣。

 信長は岐阜を出陣して南伊勢に進攻し、北畠家の大河内城を大軍を率いて包囲した。

 信長は強硬策を用いて大河内城の攻撃を図るも失敗し、戦いは長期化。

 「チッ!サルを呼べ!」信長は秀吉を呼び出す。

 「えっ?」秀吉はやっと帰ってきた矢先、小六は呼びに来た。

 「『えっ』じゃないよ。信長様から呼び出しだ」小六は笑っていたが、秀吉は泣きながら

 「行くと伝えろ!」正室せいしつのねねは笑って「いってらっしゃい。フフフ」笑顔で答えてくれた。

 「やれやれ」果心居士は烏を飛び立つ。

 すぐさま烏は止まり「殿、参りました」秀吉が言うと「酷い殺しで何か策はあるのか?」信長が尋ねた。

 「まず、兵糧攻めをして且かつ火炙りで殺すのはどうですか?」秀吉は笑い、信長も笑う。

 「兵糧攻めか!」北畠具教きたばたけとものりは言うと

 「兵糧攻め且かつ火炙りで殺すのよ!」信長は北畠具教ら北畠家の一族を虐殺させている。

 「ハハハハ!中々、愉快!」(バサッ、バサッ)果心居士は烏の目で飛び立つ。

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