主人公づくりのポイント3点

 今回は魅力的な主人公を考えていきましょう。『魅力的』では曖昧なので、別の言葉で言い換えてみますね。



①共感できる主人公

②応援したくなる主人公

③いわゆるテンプレ主人公



 「またテンプレか……」というお声が聞こえてくるようですが、彼らは①②を網羅する存在として好例であると判断いたしました。テンプレのすべてを肯定する訳ではありません。いいところだけ使わせてもらいましょう。


 では、それぞれ具体的に見ていきましょう。



①共感できる主人公


 読者様が感情移入できる主人公ですね。自分と似たような主人公だと、読んでいて自然に投影することができますよね。


 具体的には平凡な高校生などですね。特別な才能を持たない、ごく普通の一般人。性格はやや内向的で、どちらかというと自己主張は苦手な方です。


 前回挙げさせていただいた『涼宮ハルヒの憂鬱』の主人公――キョン様もこれに該当しますね。彼の場合は物語の語り部も兼ねていらっしゃるので、読者目線のキャラクターであることがより効果的に機能しています。


 一応申し上げておきますが、読者様のことを平凡な存在だと決めつけている訳ではございません。多くの人は自分のことを凡庸だと思うものです。あくまで自分自身の認識の話であって、実際に平凡であるかどうかは別の話だとご理解いただければ幸いです。


 そういう訳で、『普遍的な特徴を持った主人公は読み手の共感を得やすい』というお話です。「このキャラは自分と同じだ!」と思ってもらえれば、その方はきっと先のストーリーにも興味を持ってくれることでしょう。


 また、欠点を持った主人公も共感を集めやすいものです。主人公を人間らしく、より親しみやすく感じられ、読んでいて感情移入しやすくなります。



 一方で、特殊すぎる主人公を書くのはおすすめしませんね。ここで悪い例として登場するのが拙作せっさくの主人公――無職のおじさんです。


 まずおじさん――大人ですから、子供様に共感していただけません。大人は童心に返るだけで子供に戻れますが、中高生が大人主人公に自分を重ねるのは難しいことです。体験した過去がありませんものね。


 しかも『無職』という癖の強い設定のために、大人様からも共感を得られません。学生様の多くは職に就いていませんが、社会人にとっての会社に相当する学校には通われているので、『会社に行くフリ』するような卑怯な無職には感情移入できません。


 主人公に投影していただけないというのは大きな問題です。物語の主軸となる人物に関心を抱いていただけなければ、ほかのキャラクターがどんなに魅力的であったとしても、その前に離脱されてしまうことでしょう。




②応援したくなる主人公


 共感できる主人公に応援したくなる要素があると、自然と物語に没頭できますよね。「どうか報われてほしい」という思いで読み進めることができます。


 では、応援したくなる要素とはどんなものでしょうか。いくつか挙げてみましょう。



・困難な状況に立ち向かう……逆境や困難に直面しても、諦めずに乗り越えようと頑張る姿


・成長と変化……最初は未熟だったり弱かったりする主人公が、努力や経験を通じて成長していく姿


・強い目標や信念……主人公の目標が他者を助けることであったり、自分の夢を実現することであったりする場合、それに対する執念や努力が読み手を引き込みます


・社会的な立場や環境の変化……貧困から成功を目指す、または無名から注目を浴びるなど、社会的な立場や環境を変えようと努力する姿



 ……こんなとろこでしょうか。『好感が持てる主人公』と言い換えてもよいかもしれませんね。



 悪い例としては、やはり『反面おじさん』が挙げられます。いい年して定職にも就かずプラプラしているような主人公には、作者の僕でさえたまにイラっときますからね。


 人は好きな人物を応援するものだと思います。この主人公は読者に気に入ってもらえるだろうか――。物語を練る際にその点を意識していただければ、あなたの作品はより素晴らしいものになるはずです。




③いわゆるテンプレ主人公


 ①②で説明した要素を、世に言うテンプレ主人公たちは(たいてい)押さえています。魅力的な主人公をつくるだけなら上記の説明で十分なのですが、彼らから学べることはほかにもあります。


 読者様が共感・応援できる主人公をつくったら、次はそのキャラに成功してもらいましょう。そうすることで、読者様は気持ちよくストーリーを読み進めることができます。



 主人公という『読み手の鏡』が成功するには、どのような要素を与えればよいでしょうか。いくつか見ていきましょう。



・実は非凡な才能を秘めていた……主人公自身も気づかなかった潜在能力が、物語の重要な局面で開花しピンチを救います


・特別な能力を与えられる……あからさまなチート能力は読者様の反感を買うおそれがあるため、一見すると使えないような冴えない能力が実は強い、というパターンがおすすめです


・周りから評価され出す……主人公自身に自らを平凡だと認識させておけば、周囲のキャラクターからの高評価がより際立ったものとして演出されます


・やたら(主に)異性に好かれる……すぐ惚れるヒロインを配置しておくことで、テンポよくハーレムを形成することができます



 ……こんな感じですかね。せっかく読者様が乗っかりやすい主人公をつくったのですから、大いに気持ちよくなってもらいましょう。


 ただし、やり過ぎは禁物です。あまりに都合のいい展開ばかりが続くと、「いくらフィクションでもこんなのあり得ない」と思われてしまいます。あくまで自然に気持ちよくなっていただくのがコツです。



 では、どうすれば自然な感じで悦に入ってもらえるのでしょうか。それはですね……。


 僕が聞きたいくらいなんですよ……。皆様、本当にやり過ぎは禁物ですからね。読者様を置いてきぼりにしてはいけません。


 拙作のハーレム物では、さすがにヒロインたちが主人公にとって都合よすぎました。作者本人が読み返しても、どうしてここで惚れるのか理解に苦しみます。彼女たちは媚薬でも盛られているのでしょうか……。


 頼りないガイドで申し訳ございません。僕の力量不足につき匙加減については指南できませんので、ご自身でお考えになってください……。




 では、今回のまとめです。



・共感できる平凡主人公

・応援してもらえる真面目でひたむきな主人公

・読む人を程よく気持ちよくさせる展開



 あくまで僕のおすすめです。鵜呑うのみにしてはいけません。創作論だということを、どうかお忘れなく。


 なお、ほかの『無職』・『おじさん』主人公を否定するものでは決してございません。上手い人が書けばちゃんと成立します。『反面教師』なのは、あくまで僕の『おじさん』なので、お気を悪くしないでいただければ幸いです。



 次回はほかのメインキャラを考えましょうか。ごるゆりとお付き合いくださいませ。それでは失礼します。(2797文字)

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