正直テンプレは強いみたいですね……

 オリジナリティあふれる作品を書こうとするあなたにとっては、少々不愉快なエピソードタイトルだったかもしれません。心からおび申し上げます。


 今回は作品イメージを膨らませていきましょう。どんな作品にしようかなぁ……。きっとあなたの個性が爆発する瞬間だと思います。


 個人的にはその独創性を応援したい気持ちで一杯なのですが、より多くの方に読んでもらうためには、やはり傾向と対策が重要になってくるようです。そこで、もう一度繰り返さなければなりません。



 テンプレは強い。



 テンプレとは『テンプレート』の略で、一般的には『型』を指します。ライトノベルなどの執筆においては、ストーリーやキャラクター、設定などの『定番パターン』や『お約束』を意味する言葉です。


 定義だけではイメージしにくいので、いくつか具体例を挙げてみましょう。



・異世界転生……主人公が異世界に転生して、特別な力を持つようになる話

・ハーレム要素……主人公が複数の(主に)異性キャラに好かれる話

・学園もの……学生たちの日常生活を軸に描いた話

・能力バトル……特異な能力を持つキャラ同士が戦う話



 こんなところでしょうか。皆様もきっと触れた経験があると思います。


 では、テンプレ作品はなぜ強いのか――。理由は一つではないでしょうが、一説には『頭を使わなくても読めるから』だそうです。


 忙しい世の中で人々は疲れています。読むのにエネルギーがいる癖の強い作品よりも、どこかで見たことのあるお決まりパターンの方が受けやすいのだと思います。


 例えるならマックですかね。本格的なお店を探すのは骨が折れるので、「もうマックでいいや」ってなる。誤解のないように申し上げておきますが、マクドナルド様をバカにする意図はございません。


 同じことが作品選びにも言えるのです。膨大な作品の中から、『安心』や『定番』を選ぶ読者様は少なくありません。一方で、『クセつよ』や『前衛的』な雰囲気を感じると、何となく躊躇ちゅうちょしてしまうことはあると思います。



『どうせ読むなら外したくない』

『あれこれ探すのは面倒』

『なんか見たことある感じだけどこれでいいや』

『前に似たやつ読んだ時も面白かったし』



 そんな心理がはたらくのは無理なからぬことです。読者の方はボランティアではありません。忙しい合間をって読んでくださるのですから、書き手の我々の方で柔軟に対応しましょう。


 オリジナリティ全開ではなく、読み手のニーズをちょっとだけ意識してみましょう。まずは世界観からです。



 例えばひと口に『異世界』といっても、色々な世界が考えられますよね。広義にはと違う世界なら文字通り異世界なのだと思います。


 ところが、流行りの作品で登場する異世界は、どれも似たような世界であることが少なくありません。どことなく中世ヨーロッパ風で、やたら剣や魔法との相性がいい世界です。


 いわゆる『ナーロッパ』という概念ですね。『小説家にう』様でよく見られる『ヨ』風世界のことです。異世界ファンタジーにおける共通認識として機能しています。


 ややこしい説明をしなくても、最初から読み手に世界観を分かってもらえるのがナーロッパの強みです。『RPGに出てきそうな中世ヨーロッパ風の国』と書くだけで、「あ~、あれね」と理解していただけます。


 一方で、オリジナリティ全開の作品は、独特の世界観を説明する必要がどうしても出てきます。長々とした説明を強要された読者様の中には、途中で離脱してしまう方もいらっしゃるかもしれません。


 でも、オリジナリティがなきゃそもそも書く意味がありませんよね。創作とはそういうものだと思います。テンプレと呼ばれる作品の中にも、その作品ならではの個性がどこかに必ずあるはずです。


 個性が盛り込まれているのにスラスラ読まれる作品は、ではいったい何が違うのでしょうか。人気作家の方は、テンプレを上手に活用しているのだと思われます。具体的には、説明の順序を工夫しているのです。


 まずは読者が入りやすい要素から説明します。どこかで見たような雰囲気から始めて、独自性あふれるものについては後回しにします。


 この作品を読もうかどうかと読み手が迷っているのは、もっぱら物語の最初の部分です。先に入りやすい空気をつくっておけば、後から個性を出してもそれほど嫌わることはありません。



 好例として、『涼宮ハルヒの憂鬱ゆううつ』という作品が挙げられます。序盤はよくある学園ストーリー。説明不要のストレスフリーな学園ラブコメを、読者は安心して読み進めます。


 ところが、中盤で個性が大爆発します(ネタバレになるといけないので詳細は語りません)。それはもう想像もつかないようなユニーク全開衝撃展開なのですが、ここで読むのをやめる読者はまずいません。『読むかどうか』の見極めポイントはとっくに通過しているからです。


 まあ『ハルヒ』様の場合はオリジナル要素が面白すぎるので逆に参考にならない気もしますが、テンプレパートを効果的に配置した例としてご紹介させていただきました。

 ぶっとんだ設定でも、テンプレを引き込むことで離脱せずに読んでもらえる、ということが分かっていただければ大丈夫です。


 つまり、個性は捨てなくてよいのです。むしろあなただけの強力な武器になります。ただし曲者くせものなので、いきなりお披露目ひろめするのはおすすめしません、というお話でした。



 最後に今回のまとめです。


・『定番』『お約束』の要素にはファストフード的な強みがある

・オリジナル要素は独自の武器になる一方で曲者でもある

・序盤にテンプレを配置して読者様に安心してもらう

・タイミングを見計らって自分だけの武器を投入する



 偉そうなこと言ってますが、これ僕は全然できてませんからね。最初から独りよがり全開でした。そういう作品は第1話でブラウザバックされてしまいます。その先の展開がどんなに面白かったとしても、読み進めてもらえなければ意味がないのです。


 まあ僕の場合は主人公にも問題がありますね。今回は主に世界観のお話をしましたが、次回は魅力的な主人公づくりについてです。拙作せっさくの主人公を悪い例に挙げて説明させていただきます。


 僕の作品を事前にチェックなさる必要はございません。この創作論もどきだけで完結するよう、工夫して説明したいと思いますのでご安心ください。


 失敗だらけの僕だから書ける、反面教師的創作論もどき。次回もどうぞ、お気軽にお楽しみください。それでは失礼します。(2618文字)

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