第12話 父の思い
前話、マクスの手紙の最後の一人称を私から俺に修正しました。イメージが変わってしまわれた方には申し訳ありません。
マクスの一人称は家族に対しては俺、それ以外に対しては私という使い分けです。
*******
−マクス視点
ファーレスの話を聞いて・・
俺は自分の思慮の浅はかさをひどく後悔した。
なんであの時に気付かなかったのか。
俺はファーレスに・・・
自分は叶えることが出来なかった「世界を見て回る」という夢を託してしまった。
きっと彼のためになると思って・・・
彼はそんな事を望んでいなかったというのに…
その結果・・・
彼に左腕を失うばかりではなく、心にひどく深い傷を負わせてしまう事になった・・・
彼のために、俺に何が出来るだろう?
人づてに彼が腕を失い塞ぎ込んでいると聞いて、俺は最初から彼を家族として迎え入れるつもりだった。
あの純粋だった少年を放っておく事など、出来なかった。
俺は新しい息子が、再び立ち上がれるように支えとなろう。
俺はソファから立ち上がり、
「いつか・・・、その魔族の村に俺も一緒に謝りに行こう。 ・・大丈夫だ、皆んな生きているのだから。」
*********
−ユーティア視点
急いで着替えて、客間に向かう。
客間の前に着くとアリシアさんが部屋の前で立っていた。
「あれっ、アリシアさんどうしたの?」
「私はマクス様からファーレス様と二人きりで話がしたいからと、人払いを頼まれたのです。
今、マクス様とファーレス様がお部屋で話されていますので、ユーティア様も入ってはいけませんよ。」
久しぶりに顔を合わせたんだもんなぁ。
二人きりでゆっくり話したい事もあるよな。
「そうなんだ。じゃあ邪魔しちゃダメだね。
それはそうと・・・、
アリシアさん、今日は心配させてごめんね。」
「…もういいですけども・・・、
心配している人もいるんですよってちゃんと覚えておいて下さいねっ!!」
アリシアさんは、そう言うと僕からプンッと顔を逸らした。
やっぱりまだ怒ってるかなぁ・・・
そうこうしていると、ガチャリと扉が開いた。
「おっ、ユーティア居たのか。今日はファーレスを連れて来てくれてありがとうな。」
父が最初に出てきて、俺に声を掛けてきた。
「帰って来る途中で、偶然会って話を聞いたら僕の先生だって…びっくりしました。」
「はははっ、悪かったな!皆んなには明後日、改めて紹介するつもりだ。だからちゃんと家に居ておくんだぞ!」
父はそう言って執務室へ戻って行った。
それから先生が出てきて・・・
「あっ、ユーティア君!待っていてくれたのかい?ありがとうね。
それで君達の稽古だけれども、明後日から始めるとするよ!マクス様が皆んなに紹介してくれた後にね!」
先生は笑顔で言った。
「分かりました!宜しくお願いしますっ」
俺は先生に頭を下げて、改めて挨拶をした。
うん、楽しみだな。頑張ってちょっとでもモノにしよう。
「そう言えば、ユーティア君は明日のお昼は空いているかい?」
別にこれといって大事な用は無い。
まだ公務の手伝いもしていないし、いつもの森に行って魔法の練習をするだけだ。
「特にありませんけど、どうかしましたか?」
先生はニヤッと笑って、
「明日、ユーティア君が獲ってくれたブラッディーベアで孤児院の子供達とバーベキューをしようと思うんだ。
それで良かったらユーティア君も一緒にどうかな?隣りのメイドさんも一緒にね。」
「えっ!?私もですかっ!?」
隣りにいたアリシアさんが、びっくりしながら声をあげた。
「うん、今日は僕のせいでユーティア君が帰るのが遅くなってしまったからね。
君は彼の心配をしていたんだよね。だから君にもお詫びをしたいんだ。
いいかな、ユーティア君?」
「えっ、僕はもちろんいいですけど…、
アリシアさんは大丈夫?」
アリシアさんの方を振り向いて聞いてみた。
「はいっ、そういう事なら・・・、
お母さんに話して、午後のお屋敷の仕事はお休みにしてもらって、是非お邪魔させて頂きます!」
アリシアさんは両手をグッと握って、鼻息荒く返事をしてくれた。
なんか・・・ふんすっ!!って音が聞こえてきそうだった・・・
「じゃあ決まりだね!それじゃあユーティア君、玄関のベアは持って行くからね。
頑張って腕を奮うから、明日を楽しみにしていてね!」
そう言って先生は身体強化を使ってから、片手でヒョイっとベアを持ち上げて、孤児院へ帰っていった。
*********
−マクス視点
ファーレスとの再会を果たし執務室に戻る最中、俺は魔族討伐の件について考えていた。
王国が魔族討伐に乗り出して失敗し王国の第三騎士団がほぼ壊滅した。
この話を聞いた時、俺には青天の霹靂だった。
多くの貴族にとっても同じだったと思う。
王国の魔族討伐について、俺は反対を表明していた。
魔王国から王国への干渉はない。
ならば現状そのままにしておくべきだ。
帝国からの侵略に備えて、防衛にこそ力を注ぐのが最優先ではないかと。
王国内の貴族にも当然派閥があり、権力闘争がある。一枚岩では無いが・・・
しかし魔王国に対しての姿勢は「何もせず現状維持」が大勢だった筈だ。
今回の件は第三騎士団の独断で行われたとされているが、そんな筈はない。
死んだ団長は気に入らない男だったが、そこまで馬鹿ではなかった。
第三騎士団を動かすことが出来、尚且つ失敗しても咎められない。そしてこんな馬鹿なマネをするとしたら・・・多分、第二王子だろう。
問題は誰の入れ知恵か、だ。
俺の
当分は大人しくなるだろうが、また動き出す筈だ。何か大きな動きがあればウチも無関係ではいられない。
俺は必ず自分の家族、そして領民を守り切ると決意を新たにした。
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