第8話 先生

森での魔法の練習に戻ります。


************


まずは火魔法からいこう。


炎球ファイヤーボール


ピンポン玉くらいの白い炎の玉を岩の柱に高速で打ち込んでいく。


ボシュッ、ボシュッ


炎の玉が岩の柱に穴を開けていく。

超高温なので、岩を溶かして貫通するのだ。


岩柱を全部撃ち抜いたところで


風刃ウィンドカッター


シュパッ!


今度は無数の薄い風の刃で岩の柱をサイコロ状に斬り刻んでいく。

出来るだけ正確に、出来るだけ細かく、ちゃんと意識して風刃をコントロールする。


岩柱が原型を留めない位に刻んだら、


水流ウォーター


水流をコントロールして、刻んだ岩柱を一箇所に集める。


水流を使って集め終わったら、


炎柱ファイヤカラム


ボォッォ!!


地面から直径2mくらいの黄色い炎の柱が立ち上がる。


集めたサイコロ状の岩が炎の熱で粉々に砕く。


砕け散ったところで集中を解いた。


「ふっうぅ〜、疲れた〜・・・」


0才から練習しているから、魔力量はめちゃくちゃ増えた。


魔力量が多くなるに連れて、魔力切れを起こすまで消費するのが段々と大変になってくる。


その対処法が発現させる現象の複雑化、高難度化と魔法のコントロールだ。


魔法は発現させた現象をコントロールすると、消費魔力が爆発的に増える。

例えば風刃で乱切りするのとサイコロ切りするのでは5倍くらい違う。


高難度化は例えば炎の温度。

赤い炎で直径3mの球と黄色い炎でピンポン玉くらいの球を作るのが同じくらいの魔力を使う。


同じ事を二回繰り返して、練習を終わりにする。


「よしっ、今日もお土産を獲って帰ろう!」


自分を中心に半径50mくらいの円形に薄く魔力を広げて、森の中を探索する。


念の為、身体強化も掛けておく。


1時間くらい歩き回ってると、魔獣の気配がした。


「この感じはワイルドボアじゃないなぁ…

多分ブラッディーベア・・・あんまり遅くなるのも嫌だし、ベアでいっか。」


魔獣を感知した方角へ、気配を消してそっと近づいていく。


グゥルルルゥ〜


居た。既に俺には気付いていて、前傾姿勢で此方の方を伺っているみたいだ。

体長は…3mくらいか、ブラッディーベアの中では小さい方だ。


バァッン!!


ブラッディーベアがこっちに向かって飛び出して来た。


すごいスピードだけど…、ダリル兄さんに比べたら大したことない。距離もまだある。


落ち着いて、風魔法を唱える。


風刃ウィンドカッター


シュッ       ・・・・ポトッ…


きっちり首を狙って風刃を飛ばす。

ブラッディーベアの首から上を斬り落とした。


首から真っ赤な血を吹き出しながら、ブラッディーベアは前に倒れ込むように崩れ落ちた。


「よしっ、血抜きをしちゃおう。」


魔力をロープ状にして後ろ足に括り付けて、木に吊るす。

血が流れなくなったら、その状態のまま腹をナイフで切り裂いて内臓を取り出す。


水流ウォーター


水魔法で1時間くらい水にさらして、血抜きが完了する。


血抜きのやり方は町の冒険者ギルドで習った。

前世よりも、この世界は生死がずっと身近にある。

生きるという事は、奪うことなのだ。

だから奪われないように、強くならなくてはいけない。

今度こそは奪われないように・・・



「よしっ、帰ろう。」


魔力でブラッディーベアを包んで、身体に身体強化を掛けてから背中に背負う。


「身体強化を使っても、やっぱり重いなぁ」



街道は通らないで、どこまでも続く緑の平原をゆっくり走って帰る。


「君、すごいね〜!!」


ビクッ!?


町まであと半分って所で、突然後ろから声を掛けられた。


…さっきまで人なんか居なかったよな・・・

それにここは街道じゃなくて、平原のど真ん中だぞ…街道までは1kmくらいはある・・・


突然現れたってこと!?

そんな魔法もこの世界にあるのか?


最大限の警戒をしながら、脚を止めて振り返る。


ウチの領地では殆ど見かけないけど、この世界にも野盗はいる。


・・・俺はまだ本当の対人戦はした事が無い…

緊張で足が震える。


「あー、そんなに緊張しないで大丈夫だよ。

驚かせてごめんね。ちゃんと自己紹介をさせて貰おうかな。」


鮮やかな瑠璃色の鎧を身に纏っている隻腕の男が、子供を安心させるように優しく喋ってくる。

肩に掛かるくらいの少しクセのある柔らかそうな金髪を中分けにした整った顔立ち…

年の頃は二十歳前といったところか…

とても荒事には向いていなそうなのに・・・

絶対に戦ったらヤバい感じがする…


イヤな感じはしないんだけど・・・


「僕の名前はファーレス。この先にある辺境伯家にお呼ばれしてるんだ。」


えっ・・・と、ウチ??


「あの…、辺境伯家ですか・・?」


「うん、そうなんだよ。それでね辺境伯家のある町に向かって街道を歩いていたら、すごい魔力を感じてね、気になって追いかけてきたんだ。」


「そっ、そうだったんですか。…びっくりしました。」


本当、悪い人じゃなさそうなんだよな。

でもウチに呼ばれたって・・・


「びっくりさせちゃって、本当に悪かったね。

でも僕もびっくりしたよ。イヤな気配は無かったから、悪いヤツではないとは思ってたけど…

こんなに若い子だとは思わなかったよ!」


む〜・・・、

なんか力が抜けるというか、なんというか・・


「そうですか?僕はここからまだ出たことがないので・・・っ!?」


バッ!!


ヤバい気配を感じて、咄嗟に後ろに下がって距離をとった。


と同時に背中のブラッディーベアを降ろ…


「せっかくのご馳走が落っこちちゃうよ。」


…ウソだろ・・・


ファーレスと名乗った男は既に俺の後ろに回っていて、ブラッディーベアを片手で落ちないように支えていた。


「うん、良い反応だね!君がもしかしてユーティス君?」


「何で僕の名前を・・・」


「ふふっ、素直でよろしい。改めて自己紹介をさせて貰おうかな。これから君の先生になる元冒険者のファーレスです。よろしくね!」



◆◆◆ ◆◆◆ ◆◆◆ ◆◆◆


昨日は仕事でトラブル続きでメンタルやられてました。

ストレス解消になるような物語になるよう頑張ります。w w

ファーレスの鎧はロトの鎧を軽装にしたイメージです。

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