第6話 家族

あれから9年が経った。


レクシアさんの一件で、6歳くらいまで人の目を見るのが怖くなってしまって…無意識に逸らしてしまっていたが・・


外に出れるようになってから、動物相手に色々と魔眼を試して何となくこの能力について分かってきた。

なので今はやっと相手の目を見て話すことが出来るようになってきたけど…

でもやっぱりまだ少し怖い・・・



そして自分なりに、この能力について考察した結論は・・


『俺の心と相手の心を強制的に繋げる。』

それがこの能力の本質だと思う。

繋げる過程で俺に対して好意を持つ、というか脳が勝手に相手と心が繋がっている=好きだと勘違いしてしまうんだと思う。


洗脳とは違うから、対象相手の行動原理は変わらないし、臆病だったり暴力的だったりの性格もそのままだ。


森で動物に魔眼を試している内にウサギやら鹿やら狼やら動物に囲まれて、まるでお伽話の主人公になったみたいで楽しかったのは、家族の皆んなにも内緒にしてる。



家族は幸いなことに仲が良かった。

俺の母親の名はエリーゼ。おっとりゆるふわ美人って感じで、第二夫人ってヤツだったけど、正妻の人とも上手くやっていた。

正妻の人の名前はナタリア、性格も見た目も凛とした美しい人だった。

前世の感覚からすると歪み合いそうなもんだけど、父親は公式の場以外では2人に優劣をつけなかったし、なにより2人を平等に愛しているのが俺にも分かる位だったから、争いとかが無かったんだろうと思う。


俺は母親が2人いるっていうことに、なかなか慣れなかったけど、2人とも子供達を全員同じように可愛がってくれてたから、今は特に違和感もなくなった。


俺の血の繋がった兄弟は三歳歳上の次男でダリルって名前で母親に似て、少しおっとりとした優しい人だった。


正妻のナタリアさんの子供は長男と長女でそれぞれ俺より七歳と四歳年上で、

長男の名前はハリス 面倒見が良く明るい性格で頼りになる人、長男として兄弟全員を愛してくれていた。

長女の名前はシエルといってナタリアさんに輪をかけて凛とした性格と容姿で少し冷たい印象も受けるが、本当はとても優しい人だった。


そして父だが、この家族が全員仲が良いのは多分に父のおかげがあると思う。


名前はマクス・ローレン。辺境伯であるローレン家の当主だ。


優しいだけでなく、ちゃんと厳しさも持っており、それに人に対して弁えた《わきまえた》平等さを持っていた。


貴族制度があるこの世界でこの感覚を持ち続けるのは大変な事だと俺は思う。


家族はもちろんのこと、騎士団や家の使用人の人達も皆んなが父の事を慕っていたし、

領民に対しても驕ることなく公明正大な態度で接する父は領民からも慕われていた。


俺は前世の父さんが言っていた事を、この世界の父を見て思い出した。


あれは日曜日に家族で遊園地に出掛ける予定だったのに、父さんが急に仕事になってしまい父さんに不平を漏らした時だ。


『悠真、ごめんな。お父さんももちろん悠真と一緒に行きたかったよ。

でもお父さんが行かないと皆が困ってしまうんだ。困っている人達がいて、お父さんはそれを助けられる。

人は平等じゃないんだ。

だから力を持っている人は持たざる人のためにその力を使わなくちゃいけない。

悠真はまだ小さくて、良く分からないかも知れないけれど覚えていてくれると嬉しいな。』


俺はこの家族と出来る限り長く一緒に居たいと思ってる。



************


「ご馳走様でした!」


いつものように皆んな揃っての朝食を食べ終わり、部屋に戻って練習着に着替え庭へ行こうと廊下に出たところ、ナタリア姉さんに声を掛けられた。


「あらユーティア、これから剣のお稽古?」


「うん、姉さん。頑張ってダリル兄さんみたいに強くなりたいんだ。」


「そう、怪我をしないように頑張ってね!」


***


この世界では魔法があるからか、銃火器の類いが存在しない。

戦争でも魔法が主な攻撃方法だ。


そして剣術、槍術等は前世とは比べ物にならないくらいに進化している。

きっと魔法と共に研鑽を重ねてきたからなのだろう。


戦争ともなれば大規模魔法と呼ばれるようなトップクラスの魔法使いが数十人単位でやっと使えるような魔法が使用される事もある。


だけれどこの世界にはそのクラスの魔法に1人で対抗出来てしまう人間が、僅かだが存在するのだそうだ。


そしてそういう魔法使いに対抗出来るのが、武術であり近接戦闘だったりする。


それに武器も前世には無かったような素材や、魔法や呪いが付与されているモノがあるのも大きいと思う。


俺は前世ではちょっとRPGゲームを齧ったぐらいだけど、そういう武器があると知った時はすごくワクワクした。


そして話は先程の会話に戻るのだけれど、ダリル兄さんは槍術がめちゃくちゃ強かった。


ウチの領地に剣術指南役として来ている先生曰く、このまま成長すればこの世界でも指折りの槍使いになれるのだそうだ。

この国ではなくて。


実は俺も前世では父さんから剣術を習っていて、それに付け加えて魔力操作もかなり上達したからそれなりに自信があった。


ダリル兄さんの槍術は守りが主でカウンターで攻撃するスタイルだった。


***


「じゃあ、ダリル兄さんよろしくお願いします。」


「うん、ユーティア。全力でかかって来ていいからね。遠慮しちゃ駄目だよ。」


持っている木剣を脇に構えて声を掛ける。


「じゃあ、行きます!!」


身体強化を掛けて、更に魔力操作で強化した脚で、地面を思いっ切り踏み込む。


バンッ!! 反動で地面が凹む。


兄さんまで大体10mくらい。

一歩、二歩…二歩目の前足が着地した瞬間に

下から逆袈裟で兄さんを切り上げる。


動き出してから、ここまで1秒くらい。


ズザァーーー


槍の柄で俺の剣は受け流された。

兄さんは右足を半歩後ろにずらしただけだ。


そのまま兄さんは俺の力を利用して槍を回転させる。


パァーン!!


俺の手から剣が離れる…

と同時に槍の刃が俺の首元に触れていた。


「参りました…」


相変わらずまったく相手にならなかった…

俺だって5歳から剣を習っているのに。


ニコニコしながら兄さんがアドバイスをくれる。


「うん、うん。ユーティア、大分良くなってきたね。踏み込んでから、切り込むタイミングが良かったから、すごく力が乗っていたよ。」


「そうですか?でもあんなに簡単に・・・」


「タイミングが良いって事は、読みやすいって事でもあるからね。でも変拍子はちゃんと基本が出来てからじゃなきゃ駄目だよ。」


最初の2年間は指南役の先生に教わっていたけど、それからは兄さんが俺の師匠だった。


「そう言えばユーティア、今度父さんが僕達の為に剣聖の先生を呼んでくれたみたいだよ。

楽しみだね〜♪」


フンフン♪と鼻歌交じりで、ニコニコしながら話しかけてくれるダリル兄さんを見ながら、

道のりは長いなぁ〜と実感した…


◆◆◆ ◆◆◆ ◆◆◆ ◆◆◆


ファンタジーでメインになるバトル描写の練習でした。ちゃんと書けてたら良いのですが…

次回は悠真の魔法についてのお話の予定です。





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