第4話 転生

「なんでそんな呆れたような顔をしてるのかしら?艶福家と魅了なんて相性抜群じゃない。

私の世界では寝取る側でやりたい放題よ〜」


・・・絶対にワザとだ…

…俺を困らせる為にやってるだろ。


「ふふっ、まぁ〜あながち間違ってはないけど…でもそれだけじゃ無いわよ。

魔眼ってギフトの中でも特別なのよ。神の力を行使することが出来る権能なの。

わざわざ貴方の為に選んだギフトなんだから、その意味を理解してくれると嬉しいわ。」


そう言われてもな・・・

俺をからかってるとしか思えないんだけどな〜


でも、まだ元の世界での後悔はあるけれど・・

新しい世界での人生にワクワクし始めている自分もいる。

貰った力で俺は何が出来るだろう。


「そうよ。後悔する事も必要だけれど・・・、それを糧にして前を向いて進むっていうのはもっと大事な事よ。忘れなければいいの。」


性悪だけど・・・

そう言って貰えると気持ちが楽になる。

そんなにイヤな奴ではないんだよな…


まぁ、性悪女神様の世界で頑張るかっ!って

最後にはそう思えた。


「エアリス様、ありがとうございます。皆んなにもう一度会う為に、貴女の世界で精一杯生きてみたいと思います。」


「そう、良かったわ。ちょっとだけいい顔になったんじゃないかしらw

じゃあ、頑張って生きてちょうだい。結果を楽しみにしているわね。」



最後に美しい金色の髪を靡かせ、微笑みを浮かべながら優しい声で・・・・、


性悪の女神様はそう言った。



そして俺の意識はゆっくりと途切れていった…





************


次に意識が覚めた時は眩しい光の中だった。

眩し過ぎてとてもじゃないが目を開けられない。

俺は本当に転生をしたのか?


手足を動かそうとしても、力が入らない。

声を出そうと試みてみたが、出し方が分からない…全部同じになってしまう。


あれっ?音は聞こえるのか・・?

耳に意識を集中させてみる。



「エリーゼ様、おめでとうございます!とても元気な男の子ですよ。」


「そう、良かった…!」


「エリーゼ、良く頑張ったな!きっとエリーゼに似て、優しくも強い男になるだろう!!」



会話を聞くに、俺は今産まれたばかりらしい。

どおりで身体をうまく動かせないわけだ・・


・・・とりあえず今はこの状況を受け入れて…

どうするかな。




************




俺が転生してから、1カ月が経った。

目は少し見えるようになったし、身体も少しだけなら動かせるようになった。

喋るのはまだまだ難しそうだけど・・


驚いたのは、知識の吸収力だ。耳にした事がすらすらと頭に入ってくる。


周りから聞こえる会話から推測するに、どうやら俺は貴族の家に産まれたようだ。

それと兄が2人と姉が1人いる事も分かった。


俺の世話を主にしてくれている人は母ではなく、20代半ばくらいの綺麗なメイドさんだった。名前はレクシアさん。

旦那さんはウチの騎士で娘が1人いるらしい。会った事はないけど。


意識は転生前のままだから、色々と世話してもらうのはもっと恥ずかしいと思っていたが、実際はそうでもなかった。

感覚は身体に引っ張られるのか、転生前の年齢は頭からすっかり抜け落ちて普通に甘えてしまう・・・


人に甘えられるっていうのは幸せなんだな…

まぁ俺の状況は特殊だと思うけど。


・・・うん、変な性癖がつかないように気を付けよう・・・


しかしベッドから出られないっていうのは暇が過ぎる。

やる事がないから、色々考えてしまう。


とりとめのないことが次から次へと・・・

どうしたって良い事より悪いことばかりが浮かんでくる。


この思考の悪循環から逃れる為、色々考えた末に俺は魔法の練習をすることにした。


使い方も何も分からないけど、手探りでいい。


魔法の種類は火、水、土、風、光、闇の6系統とあの性悪女神は言っていた。

光・闇の魔法についてはどんなモノなのか、はっきりとイメージが出来ないけれど、残りの4系統については自然現象だから簡単にイメージが出来る。


まず、自分の中の魔力を探っていく…

全てが手探りだけれど、他に出来ることもないし、時間もたっぷりとある。


暇を潰すには魔法の練習はとても都合が良かった。


自分の身体の中を探るように意識を集中していく。・・・ゆっくりと、深く…


毎日5、6時間はそうしていたんじゃないだろうか。

1週間くらい経って、身体の中心に前世には無かったチカラみたいなモノが渦巻いているのを見つけた。


それをちゃんと意識して感じてみる。

手を動かすように、そのチカラを動かしてみる。クネクネ、ビヨーン。

なんかスライムみたいだ。

きっとこれが魔力なんだと思う。


意識だけでやれるし、なによりも前世にはなかった新しい感覚が楽しくて、2週間はずーっと暇さえあれば魔力?を動かして遊んでいた。


赤ん坊だからか、とにかく身に付くのが早い。

1週間もすれば魔力?を身体の外に出して、動物や花の形に変化させて遊べるようになった。


魔法はきっとこのチカラを変換させているんじゃないかって俺は考えている。


目を瞑って、身体の真上に浮かせているチカラを水に変えるイメージをする。

水、水、水・・・・・・


出来る限り明確に・・・




…いくら経っても水には変わらなかった・・・

何かやり方が違うのだろうか?


身体の外に出した魔力?をペン回しをする感覚で螺旋状にくるくる回しながら、どうやって魔法を使えばいいのか考える。




・・・あれから1月経ったが未だに魔法を使うことは出来なかった。


ただ魔力?を操る事だけは上達した。

高速魔力ペン回しの回転で小ちゃな竜巻を作ることが出来るくらいには。


魔力?を手のように使って遠くの物を取ることも出来る。これはこの身体の俺には非常に便利だった。


ある日、7歳くらいの男の子が部屋に入って来た。


「この子がユーティアかぁ!!珍しい髪の色してるなぁ。」


んっ、もしかして俺の兄弟か⁈


その男の子は俺の手を握りながら、顔をニコニコさせて俺に喋りかけた。


「宜しくね、ユーティア。俺はお兄ちゃんのハリスだよ。やっと顔を見に来れたんだ。」


そうして小一時間ばかり、赤ん坊の俺に話しかけたり、抱き上げたりしてから部屋を出て行った。


優しいお兄ちゃんで良かった。

早く一緒に遊びたいなんて思ってしまった。


そう言えば部屋に入って来た時は本を持っていたけど、帰る時には手ぶらだったよな。

本を忘れてしまったのか?


部屋を見回してみるとテーブルの上に本が置いてあった。

それを魔力の手を使って、自分の元に持ってくる。


何故か文字が読める。これも女神様のサービスか?ありがたいけど…ズルが過ぎる気がする。


表紙には『初級魔法入門』と書いてあった。


俺が今1番欲しかったモノじゃないか⁈

ひとまずちゃんと読んでみよう。




内容は子供向けに書いてあったので、すぐに読み終わる事が出来た。


どうやら俺が遊んでいた力は魔力で間違ってないみたいだけど・・・

それを変換するわけではないみたいだ。


本にはこんな感じで書いてあった。




『流れる水、ウォーター』

まずはこれを詠唱してみましょう。


次に『流れる水』を唱えている時に、自分の目の前で水が流れている想像をしてみましょう。


出来る限りしっかりと想像する事が大切です。


ちゃんと想像出来たら、想像した事が起きるように念じながら『ウォーター』と詠唱します。


それでは上記の作業を一連の流れで行ってみて下さい。すぐには出来ないかもしれないので、何度も繰り返して練習する事が大切です。


あなたに水の魔法の才能があった場合には、1週間程で出来るようになるでしょう。






詠唱が必要なら、俺の今の状態では魔法を使えないんじゃ・・・


まぁ、とりあえず頭の中で唱えてみよう。


空中から突然流れる水かぁ・・・、

昔、優奈と一緒に行ったザマーランドのプールにあった大きなバケツに水が貯まると、回転して水がバシャァーってなる遊具を想像してみた。


『流れる水、ウォーター』



バシャァ!!!!




出来たっ⁈

突然自分の頭の上から大量の水が降ってきた。


ビシャビシャになってしまったけど、成功だ。でも次はもっとちゃんとコントロールして、水を被らないようにしなくちゃいけないなぁ…


一瞬死ぬかと思ったわ。




「ユーティア坊っちゃまっ!?」


扉がバッンッと開いて、血相を変えたレクシアさんが急いで駆け寄ってきた。


「いったい何があったのですかっ⁈」


あっ、やばい・・・

魔法の練習をしていて失敗しました…


「何でこんなビショビショに・・・・・でも良かった、命に関わる事では無いみたいで…」


レクシアさん、ごめんなさい。

頭の中で謝るけど、言葉を喋れないから伝えられない…



「とりあえず、このままでは風邪を引いてしまいます。すぐに着替えてしまいましょう」


レクシアさんは急いで俺の服を脱がせようとしてくれる。


申し訳ない気持ちと感謝の気持ちを伝えたい…

少しでも伝われば良いなと思い、レクシアさんの目を見つめる・・・






「ふぁっ・・・・・・・・・・♡」



レクシアさんの雰囲気が変わった気がした・・





◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

具体的に魔法の設定とか考えてなかったので、かなり悩みました。

とりあえず次話も半分説明回みたいになると思います。

飽きずに読んで頂けると幸いです。



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