1章 転生

第2話 後悔

「んっ、・・あれっ?」


目が覚めたら眩しいくらいに真っ白な空間に俺は居た。

俺は死んだはず・・・、だよな。


不思議と頭と身体がスッキリしている・・・



あの時、優奈が家のベッドで浮気相手とヤってた。

俺には耐えられなかった。


衝動的に首を切っちゃったんだよなぁ・・・


まぁ俺の両親は俺が高校生の時に亡くなっているから、誰かを悲しませるような事は無かったろうし・・・・


「ねぇ、本当にそう思ってるの?」


後ろから突然声を掛けられた。

とても耳馴染みの良い、柔らかで優しい声だった。


振り返ると俺のすぐ後ろにとんでもなく綺麗な女性が微笑をたたえて立って居た。


長い透き通るような金色の髪、長いまつ毛に彩られた大きな目には瑠璃色の瞳、透き通るような桜色の唇、あまりにも美しすぎた…


口から一言も発する事が出来ずに、ただただ見惚れてしまう。


「ふふっ、そう緊張しないで。少し私とお話ししましょう。」


ごくっ


緊張して喉が乾く…

緊張するなっていう方が無理だろう。


囁くようにその女性が言葉を続ける。


「ねぇ、さっきの質問だけど、本当に貴方が死んで誰も悲しまなかったって思ってるの?」


「えっ、あっいや・・・」


いや、俺だって分かってる…

自分の祖父母、仲の良かった友人達、会社の同僚、優奈の両親だって・・・


優奈の両親は俺が両親を亡くしているのを知ってから、まるで自分の子供の様に接してくれた。

俺はもう大学生だったから、少し恥ずかしかったけど…

でも両親が亡くなってからずっと一人暮らしだったから、家に呼んでもらって皆んなと一緒に食卓を囲んだり、とても幸せだった。


悲しませてしまっただろうし、きっと心に傷を付けてしまったと思う。


そして俺はそうなる事を分かってて自殺した。

優奈の心に俺の爪痕を残したくて・・・

俺なりの優奈への復讐だった…


俺が死んで多分1番辛かったのは優奈だと思う。


…アイツのちょっと狂った感覚は、多分優奈の両親よりも俺の方が分かってる。

多分間違いなくあの時、優奈の言ってた事はアイツの本心だと思う。


それでも…、頭では理解出来ても心が拒否してしまった・・・


本当はさっさとアイツを叱ってやれば良かったんだ・・・

そうすればきっと・・・



「ふふっ、ちゃんと理解してるのね。そしたら貴方が自殺した後の世界をちょっとだけ見せてあげる。貴方のご希望通りになったかしら?」


その人は相変わらずの微笑みをたたえながら俺の額にそっとその手を置いた・・・




************


「優奈…、、しっかりしなさい。この結果を招いた原因があなただったとしても、喪主はあなたなんだから・・・」


「うん…」


お義母さん・・・、あんなに明るくていつもニコニコしていたのに…

目の周りは真っ赤に腫れ上がっていて、目の下の隈がすごいことになってしまっている。


後ろに俯きながら座っているのは、お義父さんだよな・・・

なんか白髪がすごい増えてる・・・

やつれ切った表情で・・・


「あなたも辛いのは分かるけど・・・、ちゃんと立って。来て下さった方を迎えなきゃ…」


「あぁ、分かっているんだけどさ・・。どうにも力が抜けちゃってな…本当に・・・、悠真君になんと詫びたらいいのか…もう詫びることも出来ないんだな…」


「ほら、悠真君の友人が来たわよ。」


あれは渡辺か、アイツとは来月あたりに優奈と一緒に釣りに行こうって約束してたんだよな。


「悠真〜、なんでお前…勝手に逝っちゃうんだよ。ちょっとくらいさ、相談してくれたっていいじゃんか…本当にバカ野郎がっ!!」


もっとアイツと呑みたかったな。


続々と友人達が俺の葬式に来てくれていた。

皆んな悲しい顔して・・・


「悠真を返してくださいっ!!なんであんな良い子がっ、こっこんなっ目に合わなきゃいけないんですかっ!!」


入り口で怒声が聞こえた。


田舎のばぁちゃんだ。いつも静かで優しい人なのに、別人みたいに怒っている。

後ろで爺ちゃんが必死にばぁちゃんを宥めてる。爺ちゃんは唇を必死に噛んで…、結構怒りっぽい人なのに我慢しているんだろうな。


もっと会いに行けば良かったな。


「優奈っ!!あんたねぇっ、何やってんのよっ!こんな事になるんだったら、アンタに悠真を紹介しなければ良かったっ!!本当にっ、本当にアンタ達が結婚した時は嬉しかったのにっ!!なんでよっ!」


「ごめんなさい・・・」


あれは、明日夏か。花見で会った以来か。

明日夏の紹介で優奈と会ったんだよな。

大学のサークルが一緒で、男勝りの性格が妙にウマが合って仲良くなって、それからの付き合い・・・もっと一緒に3人で遊びたかったよ。


優奈はずっと俯いたままだ…


パァッンっ!



「最低っ・・・」


突然優奈の頬を平手打ちした女性…

あれは会社の後輩の水川⁈


「こんなんだったら、サッサと先輩を奪えば良かったです…」


えっ、いや・・そんな・・、お前そうだったの?

でも・・・、アイツ会社でちゃんとやれるかな・・心配だな・・・。


優奈は…、叩かれた頬を赤く腫らしながらじっと下を向いている。


「申し訳ないです・・・」


ポツリと呟くように・・謝罪した…。








突然視界が先程の真っ白な世界に戻された。


「どう?満足いく結果だったかしら?」


その人は先程の微笑とは打って変わり、ニコニコしながら俺に問い掛けた。


「いや・・・、最低だろ…」


俺を愛してくれていた人達に・・・、

あんな顔をさせてしまった事に、

後悔ばかりが募る・・・。


「あらあら、自分の行動の結果を見て落ち込んじゃったの?でもそんなに気にする事はないわよ。私からしたら、あなたの罪なんて些末なモノだもの。」


この人は何を言ってるんだろう。

そもそも俺はなんでこんな所にいるんだ?


「それはね、私が貴方を此処に連れて来たから」


えっ・・・何故?


「私の名前はエアリス。貴方の居た世界とは別の世界の主神をさせてもらってるわ。」


何を言えば良いのか全く分からない。

思考が追いついていかない…


「そうよね、いきなりこんな所に呼ばれて、私は神ですなんて言われてもね。それでねあなたを此処に呼んだ理由だけどね・・・・」


理由はあれか、何かの手違いで本当は死ぬはずじゃなかったのに、殺してしまったからとかか?


「あははっ、違うわよ。世界の主神たる者がそんな間違いする訳ないじゃない。理由はね、たまたまよ。」


たまたま?


「そう、ただの偶然。たまたま私が面白そうな魂を見つけたから。それで貴方には私の世界に来て貰おうと思って。」




◆◆◆◆ ◆◆◆◆ ◆◆◆◆


ここまで読んで頂きありがとうございます。

それでですね、この作品のコメント欄には批判でも何でも書いて下さって大丈夫です。

もし読んでモヤモヤすることがあったら、悩まず書いて少しでもスッキリしていって下さい。


ただ申し訳ないのですが、私はとても筆が遅いのと暇な時間を見つけて書いているので、コメントに返信が出来ない事が多々あると思います。

その際はどうかご容赦下さい。

宜しくお願いします。

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