第22話 シャドーセンス by 沙紀

「おはようございます、カイさん。」

私が声を掛けるとカイさんはニッコリと笑い手を振ってくれた。

あの事件から約一ヶ月が経とうとしている。蓮さん、如月さん、そして私の三人は、週に一度、この探偵事務所に来て事件を解決するためのお手伝いをしている。今も、もちろんこの先も、一人でも多くの人を助けたい。あの一ヶ月前の事件の様に、もし気づかなかったら世界規模の事件が起きてしまうような事件があるかもしれない。だから、未然に事件を防ぐべく、膨大な資料に目を通すのも探偵の仕事だ。机の上に山積みに置かれた資料を整理したりとかもしてる。

「事件が多いですね。」

「ああ、そうだな。一個ずつは簡単なものが多いがな。」

蓮さんは私が読んでいる資料を覗き込み、少し笑う。その笑顔に少しドキっとしたけれど、この気持ちが何なのか私にはまだわからない。そこまで考えて、ハッとなり光さんの方を見る。いつもこういうときニヤニヤしてこっちを見てくるのだ。

あ、ほら。今も見てきてる。結局、昔公園出会った女の子は光さんだった。それを教えてもらった日は一緒に色んなことを話した。もっと光さんのことが好きになった。

あの事件のあとで、蓮さんに励ましてもらって、嬉しかった。それで、ありがとうって言おうとしたのだけれど。タイミングを逃して。やっとありがとうと言えたとき、蓮さんは「どういたしまして」と笑ってくれた。その笑顔まぶしくて、いまも時々思い出しては、心をギュッて掴まれたみたいな気持ちになる。


人は色んな方法で、人を笑顔にすることができる。幸せになる手助けをすることができる。私は、シャドーセンスを使って犯罪を未然に防ぐという方法で、人の役に立ちたいと思えるようになった。今ではそれが、私の夢だ。

世界には、幸せが溢れてる。でも、その幸せは何かがきっかけであっという間に崩れ落ちる。だから、少しでも誰かの幸せを守りたい。少しでも誰かの役に立ちたい。まだ会ったことのない誰かの笑顔であっても、私はその笑顔を守りたい。


これから先、立ち直れないと思うくらい、ツライことがあるかもしれない。もう人を信じれないと思うことがあるかもしれない。でも、私には、ずっと大事にしたい、大切な仲間と、家族がいる。光さん、カイさん、お父様。そして、蓮さん。私は、私の夢を追いかける。大切なのは、困難にぶち当たったとき、どう乗り越えるかなのだから。だから、なにがあっても絶対に、私は私を、諦めない。

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シャドーセンス さとうゆい @doyourbest

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