第10話 誰に何を言われても by 蓮

「蓮、何をやっている、連れて来いと言ったじゃないか。説得しなければならない。」

「何度も言っただろ、俺が2つやる」

蓮は黒い車の中から覗く男の顔を思いっきり睨んだ。近くを歩いていた野良猫が悲鳴を上げて逃げていく。

・・・・・・黒い車の中から蓮によく似た顔立ちの男が顔を出して言った。

「そうだったな、結局それでオーケーということになったんだ・・・・・。」

「いいか、これはあくまで沙紀のためだ。俺はお前のことが大嫌いだ。そして、俺は沙紀の護衛を続ける。」

蓮は拳を握りしめた。

「そんなに怒るな・・お前の父さんだろ?」

「・・・・・今更、父親気取りか。母さんが入院しても仕事ばかりで一度も見舞いに来なかっただろ。」

蓮は沙紀には一度も向けたことのないような、冷たい声で言った。

「そんなに怒るな。お前の要求は2つ。それをたった一つの条件でチャラにしてやると言っているんだ。そのうえアイテムを何個も貸しているだろ?」

「それに関しては一応感謝しとく。」

全く感謝していないような顔で蓮は言った。

蓮が見えなくなった時、その男は呟いた。


「一つの護衛だけで精一杯になると思うがな。」

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