第9話 星屑 by 沙紀

「蓮さん、今日は動物園にお付き合いいただき、ありがとうございました。思う存分楽しめました。」

私は蓮さんに向かって笑う。霞色の紫陽花が花をきれいに咲かせていた。

蓮さんは優しく目を細め、私の方を見た。

「別に何もしてないけどな。」

私と如月さんが園内を散策していた間、蓮さんは隠れながら、何かあったらすぐに飛び出せるようにしてくれていたはずだ。

蓮さんの髪が風に静かに揺れた。

空の色がどんどんと暗くなっていき、星が一つずつ輝き始めた。

その星を見ていたら、私は学校の図書室で読んだ星の本に書いてあった文を思い出した。

確か、北の空にある北斗七星のひしゃくの形の上の2つの星の距離を測って、それを五倍に伸ばしところにあるのが・・・あ、あれか。

「見てください蓮さん。あれ、北極星ですよ。」

北極星は一年中観測できる星。冒険家とかの道しるべになってくれる星だ。2等星だから、明るい部類にある星。ここは比較的に周りが暗いからキレイに見える。

「北極星か。なんか、沙紀みたいだな。」

「え?何で?」

私は蓮さんのことを見た。真剣な眼差しで星を見上げている。冗談で言っているつもりはなさそうだ。

「人を、導く星。めっちゃ輝いてるし、一年中光ってるとか・・意志強そうだから。」

「え、ほんとですか?」

蓮さんにとっての私は、北極星に似ているのか。

それは、嬉しいな。

北極星かあ。

私はもう一度、空を見上げた。


・・・・・・・・・・・

次の日の朝。

蓮さんは私をカイさんの所まで送ったあと、事務所に暫く留まって掃除を少ししていた。私も一緒になって掃除をした。蓮さんは「用事があるから3時に迎えに来る」と言って事務所を後にして、探偵事務所のドアを締めた。

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