第6話 自分ができること by 蓮

あんなに追い詰められた沙紀を見たのはいつぶりだろうか。

まさか坂の上で叫ぶなんて予想の斜め上をいった。こんな事が起きて、昔のように家に閉じこもったり。体調を崩したりしないか心配だったが。なんだか吹っ切れたようで良かった。

俺は自分の部屋のベットの上で天井を見ながら考えた。

もしカイ・エバーズさんがが助けてくれていなかったら沙紀はどうなっていた。そんなの考えたくもない。これからは油断なんてするな。そうだな、ただ、これからも関わりを持つことになるなら、カイさんの強さは確認しなきゃな。

それにしても、なぜ俺は、沙紀を守れなかった。俺が守らないといけなかった。俺が守りたかった。だが、あのときはアイツに呼ばれたから沙紀のそばにいてやれなかった。くそっ。

でも、本当はわかっている。俺が沙紀の隣でいつでも沙紀のことを守れるわけじゃない。だから、沙紀にはもっと力がいる。少しトレーニング内容を変えてみるか。

俺は壁に貼ってあるトレーニングスケジュールを見る。

沙紀は昔より確実に強くなっている。でも今回、手も足も出なかった。沙紀に足りないのは何だ?

頭に思い浮かんだアイディアは、できれば避けたい方法だった。でも沙紀のためだと思えば。

「・・・・・試してみるか。」

俺は鉛筆を手に取り、メモを取った。

よし、沙紀のトレーニングはこれで大丈夫だな。次の問題は・・・。

沙紀の屋敷はセキュリティがしっかりしているから、家の中にいるだけなら安全だろう・・・・。

だが、もし敵が何らかの方法で家の中に侵入してきたとすれば?

そもそも何が目的で?

沙紀を狙うのはなぜなのか・・・。

沙紀が強くなるとしても、今すぐに劇的に強くなるのは無理だ。でも、襲われているのは今。

俺は窓の傍まで歩いていき、カーテンを開ける。

空はもうすでに薄暗くなり始めていた。

「カイ・エバーズさんのことは、紗紀の父親、闇野暖人様に・・教えてもらった事がある。」

俺は記憶の中からカイ・エバーズさんについてのことを探す。

確か・・闇野暖人様の親戚で弟のような存在。シャドーセンスのことを知っている人間の一人。

暖人様の親戚で弟のような存在ということは・・・信頼できる、のか?沙紀の能力を知っているのなら・・・・。

いや・・油断大敵だ。少し探りを入れてみるか。

俺は自分のコンピューターを開き、パスワードを入力した。

「これから・・忙しくなりそうだな。」

薄暗い部屋にキーボードを叩く音が響いた。

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