ヤマシタ アキヒロ

第1話

  夢



なんで夢なんか見るんだろう

と そう思うのは

イヤな夢を見て

寝汗をかいて起きた朝


なんとも言えない

どんよりした気持ちで

しばらく夢うつつを

彷徨っている


どうせ見るなら

楽しい夢がいい

君と手をつなぎ

すてきな街を歩くとか


しかしそうはならない

たいがいが意味不明な

支離滅裂な

どっちつかずのヘンな夢


ところが不思議なのは

夢を見たあと

なんだか体が

軽くなった気がする


ケガが治ったような

困難な現実が

少しだけ

そこに落ち着いたような


思うに 夢とは

受け入れがたい現実を

スムーズに受け入れるための

予行演習なのではないか


あるいは 白血球が

侵入してきたバイ菌を

捕食する時のような

自己防衛機能


夢を見ることで

われわれは

過去の自分と現在の自分を

矛盾なく繋げている


または こうなりたい

将来の自分と

いまの自分をむすぶ

架け橋にしている


ということは

夜 寝て見る夢と

昼間 起きて見る夢は

案外同じかもしれない


ああ夢よ どうか

こんな駄目な僕を

たしかな未来へ

導いておくれ


そしていつの日か

本当の意味で

君に出会うための

架け橋となっておくれ


            (了)

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