第4話

 今日は遂に家庭教師が来る日だ。父親曰く、有名な冒険者が来るらしい。冒険者とは、魔物退治を主とした、何でも屋みたいなものだ。


 「ルイズ、先生が到着した。降りてきなさい」


 呼ばれた俺は自室から出て、玄関に向かう。そこにいたのは父親と、腰に一振りの剣を携えた美人だった。


 「ルイズ、挨拶をしなさい」


 「マリアラ侯爵家の長男、ルイズ・マリアラです。よろしくお願いします」


 「私は、アイサだ。侯爵家だろうが、訓練では手を抜かないからな。覚悟しておけ」


 「もちろん、覚悟はできてますよ」


 「そうか、では、訓練場で準備運動をしておけ。私はヴァール殿と話をしてから行く」


 「わかりました」


 俺は訓練場に行き、準備運動をしていたら10分程で、アイサが来た。


 「待たせたな、それでは早速訓練を始める」


 「先生は、剣も使えるのですか?」


 「ん?あぁ、使えるぞ」


 「でしたら、剣も教えてくれませんか?」


 「剣もだと?お前は魔法の才能があるのに、剣も使いたいのか?下手したら、ただの器用貧乏になるかもしれんぞ?」


 「両方とも、使いこなしてみせます」


 「そうか…いいだろう。なら、午前は魔法、午後は剣の訓練を行う」


 「わかりました。ありがとうございます」


 剣も使う理由は、近接戦も対応できるようにしたいからだ。備えあれば憂いなし、俺は心配性なのだ。


 「では、まず最初に魔力を感じるところから始める」


 「あっ、それはもうできてます」


 「そ、それはホントか!?」


 「はい、魔力操作もできます。ほら」


 俺は魔力操作をしてみせた。


 「ほ、ほんだ…基礎はできてるんだな。じゃあ、魔法が使えるように練習するか」


 そえして、剣と魔法の訓練が始まった。


─────

───

(アイサ視点)


 S級冒険者の私は、依頼にやりがいを感じられない日々を送っていた。まぁ、それも仕方ない、S級冒険者がやるような依頼は、年に5回ぐらいしか無いので、いつもA級やB級の依頼を受けているからだ。


 そんな私は、冒険者ギルドの受付嬢にとある依頼を紹介された。それは、侯爵家の長男に魔法を教えるといったものだ。いつもの私なら、受けないような依頼だが、暇だったので、なんとなく受けてみることにした。


 「ハァー、なんであの時の私は依頼を受けたんだろう。貴族の相手とか嫌だよ」


 侯爵家の家の前に来て、私は後悔していた。貴族は、殆どが傲慢不遜、相手するのが疲れるのだ。でも、受けてしまったものは仕方ない。


 侯爵家当主のヴァール殿と会って、私は安堵した。ヴァール殿は、普通の貴族とは違い、冒険者である私を出迎えてくれた。


 そして、今日から魔法を教えることとなる、侯爵家長男のルイズが私に挨拶をしてきた。生徒である、ルイズもちゃんと挨拶をしてくれた。面倒くさいと思っていた、家庭教師だが、案外、いい依頼を受けたのかもしれない。


 そんなこんなで、始まった魔法の訓練。最初、剣も使いたいと言ってきたときは、無理だと思ったが、その目には確かな覚悟が宿っていた。


 そして、ルイズの魔力操作を見たとき、こいつは、魔法も剣も、私以上になれると確信した。


 家庭教師の期限の、ルイズが10歳になるまで、私は本気で鍛えようと思った。


 


 



 




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