第18話 熱が去った後に
お湯が際限なく沸騰し続けていた祭りは終わった。
その沸騰し続けるお湯をどうするかで、後輩たちとも、
コミュニケーションを深めた、というより、互いのことがよくわかるようになった、と思う。
高校三年生、高校生活をそろそろクローズする時期になって。
そして、
柚子の熱はもちろんだけど、それより、
いまになって思う。
あの宮下朱理の空気よりも薄い存在感は、その熱を失った結果だったのだ。
これから、ほぼ半年。
自分たちが高校生でいる時間に何を詰め込んで、この柚子は、そしてわたしは、生きて行くのだろう?
色白で、実際より背が高い印象があって、細い銀フレームの眼鏡をかけた清楚な柚子。
わたしはその柚子をきゅっと抱いてやりたいという思いに駆られた。
もちろん、実行はしない。
その役割は、宮下朱理にとっておかないといけない。そう思ったから。
そして、それで宮下朱理も空気より薄くなっていた存在感を取り戻すだろう。
「ふん?」
その声にわたしが顔を上げると、柚子が、クリームの載ったケーキを上品にフォークで持ち上げながら、その銀フレームの眼鏡のガラスの向こうから、わたしを見ていた。
ちょっと、ふしぎそうな表情をして。
わたしはまたこの子をきゅっと抱きたくなる。
もちろん、実行はしないけど。
(終)
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