第12話 魔改造ポット、店を去る
スコーンが最初になくなり、次に
それぞれに、女の子がはにかみつつ笑っている絵が描いてある。
明珠女の女子は、縁取りに青い線の入った開襟シャツと青いスカート。
瑞城の子は、あの片方に三本ずつピンタックの入った、評判の悪い制服。
わたしは、この制服、悪いと思わないけどね。
この服だからこそ、
何はともあれ、模擬店は閉店した。
だから、魔改造されたコーヒーポットでお湯が沸騰し続ける問題は、大事にいたらずにすんだ。
そのコーヒーポットは、あの
「ねえねえ」
とわたしはその猪俣沙加恵に
「うちの模擬店、ほとんど食材ロス出さなかったよ。持続可能な発展的に褒めて」
と言うと、
「それはすばらしい。褒める」
とあのハイテンション声で言う。
続けて言う。
「ここの商店街さ、すごくてさ」
何がすごいのだろう?
「紙コップとかお皿とか、さすがにリユース素材にはなってないけど、リサイクルする素材になってるしさ、原則、ぜんぶ回収してリサイクルに回せるように、ゴミ捨てのところを工夫してあるしさ。わたしたちが高校生の分際で「持続可能ななんとかのためにこういうのやりませんか?」って言っても、だいたい先にもうやってるんだよね。すごいと思った」
それはたしかにすごいと言っていいのだろう。
よくわからないけど。
よくわからないので、わたしが黙っていると、猪俣沙加恵は
「さ。うちのバンドの演奏、そろそろ始まるよ」
と言って、それほど小さくはないコーヒーポットを抱えて行ってしまった。
小太り体型がコーヒーポットと相似形……。
……とか考えてはいけないのだろう。
そこに
「お待たせしました」
と、女の人の声でナレーションが入る。
「
会場からまばらに拍手が起こる。ここは会場の端っこのほうだから、「大きな拍手」なのにここまで届いていないのか、もともと大きくない拍手なのか、ここからはわからない。
明珠女の模擬店にとくに動きはなかった。瑞城生の
閉店後ということで、それぞれ
瑞城女子の模擬店には緊張が走った。
平静を装っているものの、みんな、とくに
それはそうだと思う。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます