第5話 続く沸騰!
ポットのスイッチを切れないので、空だきにならないように、最後に少しお湯を残して、次のミネラルウォーターを入れる。
一杯ごとに手作りという手間と時間のかかるやり方をしているだけあって、わたしの作業を
その待たせているあいだ、
接客の才能のある子だと思った。
で。
お客さんの行列が出来ているときはよかったのだが、それが一段落すると、たちまち困ったことになる。
湯沸かしポットでは、お茶を作る必要のあるないにかかわらず、お湯が沸騰し続けている。
しかも、入れているのがミネラルウォーターなので、沸騰させ続けるとそのミネラル分が濃縮されて、味が変わってしまう。
わたしが指示する。
「お客さんが来る来ないにかかわらず、お茶、入れ続けて」
それしか解決策はない。
接客から戻って来た
「そんなことをしてたら、お茶っ葉と氷がすぐになくなっちゃいますよ」
「うん」
しかも、ハイペースでお客さんが来てくれればいいけど、お茶を入れたまま長い時間置くと、氷が溶けすぎてお茶の味が薄まってしまう。
いや。
いまは夏、しかも、夜とはいえ、屋外だ。
氷が溶けるまで「長い時間」はかからない。
これは、撤退するのが正解だろう。
しかし、七月のイベントでマーチングバンド部が不始末、そして八月のイベントでは生徒会が機器故障により途中撤退となると、
ここは、仲の悪いライバル校の生徒に頭を下げて、コンセントからプラグを抜かせてもらうしかない。
わたしがそう思ったところで、お客さんが途絶えて接客仕事がなくなった菅野貴以子がお茶を入れる場所に戻って来た。
その場所を包む異様な緊迫感を感じたのだろう。
「どうしたんですか?」
ときく。
わたしは、湯沸かしポットが壊れて、お湯が際限なく沸騰し続ける、ということを貴以子に話した。
貴以子がふしぎそうにきく。
「そのポット、どこから持って来たんです?」
あ。
わたしは思い出した。
「湯沸かしポット、うちにあるから、でも、持って行けないから、美則と郁に学校から調達するように言っといた」
そう
「あ」
と、元気娘らしい加勢美則が顔を上げた。
「地学の先生に頼んで、物理化学準備室を開けてもらって。ここの機材なら使っていいっておっしゃるんで」
先生に対して敬語表現を忘れないのは良いことだ。
つまり、物理化学準備室の備品を持って来たのだろう。
そのことばに、二年生書記補の菅野貴以子があっと声を立てた。
「確認だけど、物理化学の先生じゃなくて、地学の先生?」
「だって、物理化学の先生、いなかったんだもん」
加勢美則は今度は敬語表現を忘れた。
それを聞いて、菅野貴以子が、とても渋い顔をした。
口を「への字」的に結んで眉をひそめ、思い切り、渋い顔をした。
それは、物理化学の先生に敬語を忘れたことが原因ではないだろう。
ぶすっ、と言う。
「とりあえず
止める間もなかった。
あの人に連絡するのは、いまは避けたいのに!
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