第4章「『道』での会合」ライバル登場ってなんですか!?
第29話 帰還道程 何やら不穏な雰囲気ですねぇ……
目を覚ますとそこは『道』だった。
薄暗く果てし無く広い空間に、光る道が無数に交差する。
道の先はそれぞれ異なる世界へと通じてるらしい。
その内1つは辺獄に通じており、また1つは例の神たちの世界へ通じているはず。
そこに俺がいるという事は、現実世界へ帰るのだろう。
あの後、ラファの偉業『黄泉戻し』により、魂が肉体に戻った人々は失墜から回復し、墜落者とはならなかった。
その事に安堵した
マハトやイルバも同様にヘトヘトと言った感じで座り込んでいる。
やはりネピリムとの戦いは予想以上に体力を削っていた様だ。
勝てる確証もない絶対的な強者相手に、十分な準備もなく全力で戦わざるを得なかったのだから仕方ない。
俺だって死騎士狩りについては事前に調べていたが、死騎士がネピリムだったなんてシナリオには全く書かれていなかったのだから、対応はその場のアドリブだった。
特にルシアは『魔剣解放』に偽装した『先祖返り』を使用している。
これは他の偉業が神の力の一部を限定的に借りるのに対し、本人の中に眠るモノを強制的に引き出すものだ。
使用したルシアの体力はもちろん、俺の精神力も限界まで削られる。
ともかく、
そして気が付いたら『道』に立っていた。
前回は行きも帰りも『道』を意識しなかったが、本来はこんなもんなのだろうか。
そう俺は考えながら周囲を見回す。
自動的に動く道の上にはたまに光の塊が浮いている。
アレは異世界へと向かう魂なのだろうか?
「そうよ。」
不意に声をかけられた。
突然の事に驚きつつ相手の方を見る。
そこにはルシアが立っていた。
ただしその姿は女性物のスーツを着込んでいる。
「ル、ルシア?」
思わず声が出る。
ルシアは不敵な笑みを浮かべながら近づいてくる。
「アレは他の世界へと渡っていく魂、みんなが転生戦士って訳じゃないけど。」
そう言いながら手近な光の塊を指差す。
「転生戦士じゃない?」
思わず俺は聞き返す。
転生戦士では無いなら、何で他の世界に?
その理由が分からない。
それに対して、「そうね」とつぶやくルシア。
腕を組みつつ右手を上に向け、その人差し指を顎に当て考える。
なんだか、妙にサマになっているポーズだ。
「あなたに分かりやすく言うと『輪廻転生』に似た概念ね。」
「輪廻転生?」
ルシアの答えを俺はオウム返しにつぶやく。
いや、輪廻転生の思想についてはある程度、理解している。
生命の魂は不滅であり、死後その魂は別の存在に生まれ変わる。
ただし、人間が死んでも次に生まれ変わるのは人間とは限らない。
オケラかもしれないし、獅子かもしれない。
そんな感じだったはず。
「概ね正解。」
ルシアが満面の笑みを浮かべ答える。
なんだろう、普段のルシアより魅力的に見える。
そのまま、ルシアは俺の腕を取りつつ話しを続ける。
「人の魂は稀に異世界へと転生するの。 まぁみんな前世の記憶なんて持っていないんだけど。」
そう話すルシアは俺に絡めた腕を引っ張り歩き出すした。
どこへ行くのだろうか?
まだ疲れが抜けないらしく、うまく思考が働かない。
俺はルシアに導かれるままに歩を進めた。
だが確認しなくてはならない事がある。
ルシアに聞いても分からないだろうけど。
「なあに? 女性にリードされているのに別の
振り向いたルシアが少しむくれる。
それまでの大人びた所作が突然、あどけない少女の様に幼い雰囲気に変わった。
「ああ、ゴメン……。」
俺は慌てて謝る。
「で、何を考えていたの?」
改めてルシアが聞いてくる。
「いや、なんで俺はまだ『道』にいるのかなって、前回はすぐに現実世界へ戻っていたのに……。」
そう答える中も、次第に意識にモヤがかかってくるようだった。
「ああ、それね。」
大したことは無いとばかりにルシアが答える。
「あなたの仕事がまだ終わってないからよ。」
優しく囁く声だが、それは俺の中に冷たい風を吹きつけた。
あの時、俺たちがネピリムを倒す一方で老婆は姿を消していた。
投げ飛ばしたオイフェも老婆が気絶したものと思い、ネピリムに意識を向けた一瞬で姿を消していたそうだ。
そして当然のことだが、あの老婆の正体について皆が疑問を感じていた。
俺たちの行動を邪魔し、失墜を起こそうとした者。
単純に気が触れた者で済ませられる存在ではない。
そして、俺は老婆の正体に心当たりが有る訳だが、それを話しても解決にはならないだろう。
なにせ、異世界からの侵略者なんて言っても誰も信じられないだろうし。
もっとも俺は皆に秘密にしているが、1つあの老婆が異分士である確証を得ている。
別に異形化した姿を見たわけではないが、1人の村人から証言を得ていた。
それは村長に奥さんなんて居ない事。
そしてあの時、老婆の姿を正確には認識していなかった事。
つまり俺たちと村長以外は老婆の姿を認識していなかったのだ。
もしかしたら村長も、認識してないかもしれない。
とは言え逃げ出したなら、すぐには行動は起こさないと思い、俺は一応仕事を終えたつもりになっていた。
「だけど奴が逃げた以上、それを探せって事か?」
俺は質問を投げる。
意識してはないが、相当に嫌そうな声が出た。
今回は2日ほどかかっている。
これから戻っても、恐らく現実世界は月曜なのだ。
そして、今ここにルシアが居るなら、俺の身体はベッドの上で爆睡してるかもしれない。
いくら交通事故に遭ったとは言え、すでに1週間前の話だ。
さすがにそれを理由に遅刻は許されないと思う。
特に先週後半は普通に出勤していた上、取引先の人と夜会っていたのだ。
これで月曜は体調不良と言っても通じる気がしない。
ともかく急いで帰る必要があるのだ。
そんな感じで俺が1人悩んでいるのをルシアは面白そうに眺めている。
「そんなに向こうの仕事が大事?」
また妖艶な笑みを浮かべながらルシアがもたれかかってきた。
「も、もちろんだ。」
鼻孔をくすぐる香りに俺は月並みなセリフを返すのがやっとだった。
「なら教えてあげる。」
不意に俺から離れながらルシアが言う。
「異分士はまだこの近くにいるわよ。」
クスクスと笑う彼女。
その言葉に俺は慌てて後退り周囲を見回す。
今はルシアの身体を借りていないのだ。
つまりはただの一般人にすぎない。
こんな時に襲われては俺はひとたまりもないだろう。
しかし……。
「ねえ、提案が有るんだけど……。」
唐突に言うルシア。
上目遣いでこちらを見てくる。
「1日、私にもらえる? そうしたら、その後に
そう言いながらまた近づき、俺の首に両腕を回しながら抱きついてきた。
やはり、なんか不自然だ。
ルシアはこんな性格だったか?
その思いから、俺はルシアの身体を引き離す。
あっさりと突き放せたので、俺は彼女の両手首をつかむ。
「あら、大胆ね……。」
一瞬驚いたような顔をした後に、また妖しく微笑みかけてきた。
その美しさに、思わず俺は手を離す。
すかさずルシアが俺の両手首を掴む。
「や、やめろ……!」
俺は身をよじって抜け出そうとするが、先ほどと異なりルシアの身体は全く動かない。
そのまま身体を密着させ耳元に息を吹きかけてきた。
その行為にとろけそうな気分になるが、同時に決定的な物を感じる。
「俺の知ってるルシアはこんなことはしない!」
俺は叫んでいた。
少なくともここしばらく共に行動して、
「やっぱり、……を信頼してるか……。」
小さなつぶやきが彼女の唇からこぼれる。
よく聞き取れなかったその言葉を聞き直そうとした時、突然ドンという軽い衝撃が走った。
ルシアが両手で突き飛ばしていたのだ。
「知ってるもなにも、私もあなたが知っているルシアよ?」
突然の変化に驚いていると、ルシアは片手を腰に当て話しかけてきた。
「そ、そんな事はない!」
俺は必死に叫んだ。
これまでのルシアとは明らかに違う。
それだけは間違いない。
俺はその思いだけを武器に女を睨みつけた。
新手の異分士か、別の何かか?
ネピリムの件があった以上、現地勢力の介入も考える必要がある。
「フン……。」
しかし『ルシア』はそんな俺を鼻で笑うと無造作に近づいてきた。
俺がゆっくり後退する間に、相手は距離を詰めてくる。
ついに間合いを詰められた。
不意に動けばやられる。
俺はその場で止まり相手の様子をうかがう。
額を汗が流れる。
極度の緊張の中、『ルシア』が動いた。
目にも止まらない早さで、俺の両顎をつかんだ。
そして顔を近づけてくる。
その顔は瞳を潤ませている。
これってまさか?!
俺が動揺して動けなくる。
後少しで俺と『ルシア』は繋がる。
そう確信したその時だ。
「ちょーしにのってんな!!
空から声が降ってきた。
それは間違いなく、『碧水のルシア』の叫び声だった。
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