変態小説(透視人間)

森下 巻々

ギャグキャッチャー長溪部

 ギャグキャッチャー長溪部(ぎゃぐ・きゃっちゃー・はせべ)は、日本国のお笑いタレントである。本名や生年月日等は非公開。いわゆるピン(彼一人での活動)である。イベントでは進行役をまかされることが多く、テレビ番組でも司会の仕事が増えてきている。


 ギャグキャッチャー長溪部のめい彩夏あやかは、天真爛漫である。彼がタレントとしてマスメディアで売れてきていることなどは、気にも止めていないようである。既に大学三年生であるが、小中学生の頃と同じように、彼の住むマンションの一室へと遊びに来る。長溪部と彩夏は確かに何故か、昔から馬が合った。彩夏は、学校であった出来事や両親との喧嘩について彼に語ることも多かった。今は、最近交際を始めた彼氏のことがよく話題になる。

 この日、彩夏が友人を連れてきた。親類以外の者とやって来るのは、かなり久しぶりのことであった。大学の、いわゆる学園祭で二人で漫才を披露することに決めたのだという。テレビ番組にも出演している長溪部にアドバイスをもらいたいということだった。

 彩夏とその友人が長溪部のへやにやって来たとき、彼は内心驚いた。彩夏の友人である菜那ななぶりにだ。

 しかし、長溪部も、まだ少ないとは言えテレビ番組等で女優さんたちと共演したこともある。少しは、に慣れてきているから、何事もないように彼女らに漫才を披露してもらいながらのアドバイスを始めた。そうして、彼女らは熱中してきた。

 しばらくして、

「暑くなったな。脱ごうかな」

 これが、菜那の冗談であることは明白だったのだが、続いた会話が長溪部にとってはいけなかった。

「だめだめ。おにいもいるんだし」

「あはっ。でも、下に水着着てるしー。夕方にプール行く約束があるんだ。彩夏も来るー?」

 二人の会話からすると、どうやら菜那は洋服の内に、下着の代わりにビキニ型の水着を着用しているようなのであった。

 長溪部は、思考が出来なくなってきた。

 何だか視界が、ぼやー、として……。

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変態小説(透視人間) 森下 巻々 @kankan740

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