第9話:やって来た澪。

「とにかく私、大輔を諦めないだわぁ・・・もはや」


ゴジラVSガメラみたいなもんかな、これって・・・どっちがゴジラで、どっちが

ガメラか知らないけど・・・。


「困ったな・・・俺は彼女も大事だけど桃のことも放っていけなし・・・」


「別にいいじゃないかだわ、彼女がふたりいたって・・・」


「彼女がふたりって・・・そんなのうまく行く訳ないじゃん」


「澪はヤキモチ妬きだから・・桃のこと知ったらタダじゃすまないよ」

「あ〜あ、憂鬱だよな・・・」


「分かっただわ・・・ちょっと行って来る・・・」


「え? え?・・・どこへ行こうってんだよ、こんな時間に・・・」

「澪のところか?・・・住所知らないだろ?」


「トイレだわ・・・」


そして、その恐れていた憂鬱ががやって来るのだった。


改めて今の俺の彼女を紹介しておくとだな。

彼女の名前は「高杉 澪かたすぎ みお」俺とは同い年・・・髪が長く

ワンレン、茶髪・・・身長はたぶん桃より高いと思う。

お勤めは某、美容室。


だから不規則なカメラマンの俺とは休みが合わない。

澪来るときは自分が休みの日の夜か・・・平日の夜。


まあ澪が来るときは必ず連絡が来るから、来たら桃を押入れにでも隠して

一時的にごまかせばいい。


その日は火曜日、なんとなくだけど俺は嫌な予感がしていた。

今日あたり、そろそろ澪がやってくるんじゃないかって思った。

その予感は当たっていた。


案の定、澪から連絡があって今夜、遊びに行くからって・・・。

俺は澪が下宿に訪ねて来るんじゃないかって気にしながら、とりあえず

桃とテレビを見たりして気を紛らわしていた。


なんとなく耳をすますと暗闇の中に女性ものヒールの音がこちらに向かって

近ずいて来るような気がした。

なんせ澪はヒールの高いサンダルを履いてカンカン音を立ててやって来るからだ。


そして、つに澪がやってきた。

澪の階段を上るヒールの音が下宿中に鳴り響いた。


「桃、澪が来たみたいだ」


「大ちゃん〜いる〜?」


澪の声がした。


女同士の醜い争いは今夜は避けたい。

ゴジラとガメラのきなりの対決はまだ早い気がした。


「桃悪いけど・・・しばらくそ押入れに隠れてくれる?」

「澪はすぐ返すから・・・」


「ええ?女同士のバトル勃発じゃないだか?」


「いやいや、修羅場は見たくないから・・・悪い・・・窮屈だけど我慢して」


「いいけど・・・こんなことしたって今だけだわよ、いずれバレるよ」


「いいの、とりあえず今だけ凌いだらあとは考えるから」


「いまここで現彼女さんと白黒つけたほうが・・・」


「いいから押入れに入って・・・早く、早くほら・・・入って入って・・・」


「だ〜いちゃん」


いきなりドアを開けて澪が入ってきた。


間一髪。


「あ、大ちゃん・・・いたいた」


「お、澪 いらっしゃい・・・最近来なかったけど、体大丈夫か?

仕事忙しくないのか?」


「何言ってんの?・・・変な人・・・普段そんなこと言わないくせに」


「クンクン」


「・・・ちょっと・・・なんか・・・匂わない?」


「何が・・・・?」


「女の匂い・・・」


「来るなり、なにバカなこと言ってんの・・・んな訳ないし・・・」

「男臭い部屋は嫌かと思って新しい芳香剤買ったから、それだろ?」


「だよね〜・・・」

「あ〜あ、疲れた・・・ねえ、聞いてよ」


つづく。


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