第10話:澪の愚痴と月に一度のお客さん。

「女の匂い・・・」


「来るなり、なにバカなこと言ってんの・・・んな訳ないし・・・」

「男臭い部屋は嫌かと思って新しい芳香剤買ったから、それだろ?」


「だよね〜・・・」

「あ〜あ、疲れた・・・ねえ、聞いてよ」

「私の美容室の店長・・・自分の店だと思って、偉そうに・・・ 」

「あのエロオヤジ客に手を出してんだよ・・・それでも足りずに 私にまで

迫ってくるんだよ」

「めっちゃ・・・キモいでしょ・・・」


「やめてくださいって言ってるのに、しつこいったら・・・」

「従業員だからってなんでも言うこと聞くと思ったら大間違いだよ」

「やめようかな〜美容室・・・ね、どう思う?」


「やめれば?・・・俺なら、店長殴っておさらばだな・・・」


「そうそう、それに電車で痴漢には合うしさ・・・」

「私が魅力的だってのは分かるけど・・・」

「車掌がバカだから痴漢取り逃がすし派出所に連れて行かれて散々事情

聞かれるし・・・」


「でね、ベランダに干してあった私のパンツを盗んでったやつがいるんだよ」

「私のパンツでなにしてんのか想像したら吐き気がするわ」

「あ〜あ、ここ一週間ばかり、ろくなことないから・・・」


そうかこの部屋にどこかに澪が脱ぎ捨てていったパンツがあるよな。

探してみるか・・・でもな〜澪が脱ぎ捨てたパンツなんか桃に履かせられないよな。


「ねえ、私の話聞いてる?」


「聞いてる聞いてる・・・」


「それでね・・・」


その他、もろもろ・・・ぺちゃくちゃ、ぺちゃくちゃ。

澪は来るなり、ここ一週間あまり自分に起こった出来事を全部吐き出した。


もう、以前のような甘い雰囲気のカケラもなかった。

慣れるってのはいいことでもあるが、慣れすぎるのはあまりよくないと俺は

前から思っていた。


「そうそう今夜もっとゆっくりしてくつもりだったんだけど、私今日女の子の

日なんだよね、だから調子よくないんだ」

「ごめんね、大ちゃん・・・エッチはまた今度ね」

「じゃ〜私、帰るから・・・」


「そうか・・・それじゃまたな」


澪は俺に馴れ合いのキスをして愛想振りまいて帰って行った。


俺は心から月に一度やって来る女性の生理現象に感謝した。

いつもなら、生理になったなんて言われたら俺は文句だらけなんだけどな・・・。

俺も勝手なもんだ。


澪が帰ったのをしっかり確かめて俺は押入れを開けた。


「ごめん、ごめん、もう大丈夫だから・・・」


そしたら桃はあどけない顔でスヤスヤ寝ていた。


「あれだけ、べらべらしゃべって帰ったのによく眠むれるな」

「澪にバレたらどうしようって思ったら気になって普通は眠れないだろ?・・・」


神経が図太いって言うのか、緊張感ないって言うか・・・。

俺はおかしかった。


俺って卑怯な男だよ桃・・・澪がいるってのに、おまえに惹かれていく。

そんな姑息な男を好きになったって幸せになんかなれないぞ。

それでも俺について来るのか・・・桃。

そう思いながら俺は眠ってる桃にそっとキスした。


つづく。

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