第5話:大輔は大家を言いくるめる。

桃が俺のマンションにやって来てから三日経った。

大家にはまだ見つかっていない。

でも桃を三日も風呂に入れてない・・・なんてことでもないんだけど万が一

万が一、桃とエッチなんてなんてことになだれ込んだら・・・風呂に入れてないのは

ちょっと躊躇ためらうわけで、どうかと思うわけで、絶対クンニはやらせてもらえないのは分かるな。

そろそろ下宿の風呂に入れてやらないと・・・。


それにそろそろパンツも買ってやらないと・・・。


俺の部屋は二階で階段を降りるとすぐ右側に大家の部屋がある。

昔はなんか駄菓子屋とか経営してたみたいらしいけど旦那さんが他界してから

は、ばあさんは下宿屋と年金で暮らしている。


だから桃を連れて階段を降りて風呂に行くには大家の部屋の前を通らないと

いけないわけで、ボロ階段を降りる音で絶対見つかる。


そこで俺は桃が大家に見つかる前に、先に桃を大家に紹介しようと思った。

どっちみち見つかるなら、こっちから行ったほうがいいだろう。


なわけで、俺は午前中、桃を連れて大家に会いに言った。


「いいか、桃これから大家のところに行くけど、余計なことは言わなくていい

からな?・・・未来から来たなんて言うなよ黙ってろ?」

「全部、俺の段取りどおりやれば絶対うまくいくから・・・」


「ウイ・・・」


「ほら、おいで」


で、俺は桃の手を引いて階段を降りて行った。

階段を降りる音がギシギシ言うから俺が降りて来たって大家に分かる。

だから俺が仕事で出て行く時、かならずと言っていいほど大家が顔を出して

「いってらっしゃい」って言ってくれる。


今回もご多分に漏れず大家が顔をだした。


「あら青山さん・・・おはよ・・・」


そこで大家の言葉が止まった。

大家は俺の横にいる桃を見たんだ。


「青山さん・・・」


「あ、あの説明しますから・・・部屋にお邪魔してもいいですか?」


「まあ?そうなの?」

「ま桃さん?・・・あんた可哀想にね・・・」

「そうなのね〜?ご両親がね〜?他界なさって、それで施設でね〜」


「そうなんですよ・・・桃は身寄りがなくて唯一俺と幼馴染だったもんだから

俺しか頼る人がいなくて・・・まあ兄妹みたいに育ちましたからね」

「で、昨夜遅く俺の部屋を訪ねて来たんですけど、追い返す訳にもいかず、

とりあえず一晩泊めちゃったんですけど・・・」


「そりゃそうよ・・・あんた青山さん、こんな、おぼこくて可哀想な子、追い返す

なんてそんな非人情なこと・・・ダメだわ」


「それでなんですけど、この下宿、女人禁制だってことは分かってるんですけど

この子、まじで行くところなくて・・・引き取り手が見つかるまでの間、もし

よかったら俺の部屋に置いてやっちゃダメでしょうか?」

もちろんその間のこの子の下宿代は払いますから・・・。


大家はひとつため息をついて言った。


「なに言ってんの、ダメもなにも・・・いいに決まってるわよ・・・私もこの子

みたいに子供の頃同じような境遇だったからね・・・」

「私だって非人情なおばあちゃんにはなれないわよ・・・桃ちゃんは特別待遇って

ことで、青山さんが面倒みてあげて」


「ありがとうございます・・・」


「よかったな桃、ここにいていいってよ」


「うん・・・ありがとう、おばあちゃん・・・嬉しいだわ、心から」


「いいのいいの・・・分かんないことや困ったことがあったら言いなよ」

「年の功だからね・・・私に任せといて」


「大好き、おばあちゃん」


そう言って桃は大家に抱きついた。


「青山くん・・・この子初対面で、こんなに馴れ馴れしいの?」


「はあ、未来の女の子ってみんなそうなのかもですね」


「未来?・・・未来ってなに?」


「未来?・・・ああ〜え〜と未来なんて言ってないですよ・・・田舎の女の子は

みんなそうなのかもって言ったんです」

「い・な・か・・・田舎です・・・耳鼻科に言ったほうがいいですよ大家さん」


「ああ・・・田舎ね・・・歳だからね耳がどうも・・・」


大輔はめちゃ大ウソをでっちあげて大家を騙してしまった、多少良心の呵責だけど

これも桃と一緒にいてやるためにはしかたないことだった。

ま、誰も傷つくわけじゃないし・・・。


つづく。






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