第4話:絶対、彼女や嫁にしたくない女。

大輔の部屋は狭いからベッドはシングル。

ひとり用だから、ふたりも寝るとめちゃ狭い、だからふたり寝るならくっついて

寝ることになる。

とりあえずベッドのキューブは部屋の隅にかたずけて、桃をベッドに寝かせて

大輔はカーペットの上で寝ることにした。


ベッドで寝ることに慣れてるから下で寝るのはキツイよな・・・なんとか

したいけどダブルベッドなんか入れたら、それだけで部屋占領されちゃうからな。


「あの・・・よかったら一緒に寝ないか?・・・私と」


「え?あ〜ふたり寝たら狭いだろ、それに初めて会った俺みたいのと一緒に

寝るの嫌だろ?」


「嫌じゃねえよ・・・ひとりで寝る方がイヤ・・・むしろ」


変わった女だな・・・普通、知り合ったばかりの男となんか寝るのイヤがるだろ?


「はいはい・・・来て来て、大輔一緒に寝よ」


そう言ってくれるのに断る理由もないしで、大輔は桃と狭いベッドでくっついて

寝ることにした・・・って言うか、めっちゃ甘い香りの女と一緒で眠れるわけが

ない。

大輔は女性の化粧品や香水については無知だったけど、それでも桃から香って

くるセンシュアルで熟した甘い香りがマジで官能的欲情を誘った。

だめだ・・・この匂いってさ、もっと大人の女が身につけるものだろ?。


これって正夢か?・・・昨夜まで見てた夢とそっくりじゃないかよ。

未来の娘と・・・一緒のベッドなんて・・・まじでか?。


「あのさ、俺のこと怖くないのか?」


「ちっとも」


「まあいきなり襲ったりなんかしないけど・・・それでもな」

「俺が変質者とか異常者だったらどうすんだよ」


「大丈夫だよ、試しに私を襲ってみるか?大輔」

「たぶん病院送りになるだよ・・・もはや」


「なんで?」


「私、空手に中国拳法に剣道にキックボクシングとか習ってるから・・・」


「絶対、彼女や嫁にしたくないな」

「これから俺たち、特に桃はどうなるか分かんないだろ?・・・キューブが

直るか直らないかも分かんないし、俺たちが性格的に合わなくなるかもしれないし・・・だからしばらく生活して、とりあえず様子みよう」

「どうしても無理なら、どこか他を借りて暮らしてもらうしかないから」


「ヤダ・・・性格なんか私が大輔に合わすから・・・他へなんか行きたくねえ」

「何も分かんない時代でなんか生きていけねえし・・・」

「めっちゃ図々しいようだけど私、大輔の部屋から出て行かねえから・・・」

「私、料理だってできるから、頑張るから・・・ここに置いて?」


「分かった・・・うん、まあ自由にしていいからな・・・束縛したくないから」

「でも料理作ってくれるのは助かるよ、独り身はコンビニ弁当がメインでわびしい

からな」


「わがまま言ってごめんだわ・・・私を見捨てないでね」


「大丈夫だよ・・・安心していいから」


だけど待てよ、よく考えてみたら桃が俺のところに来たってことは、俺の運命に

干渉したってことだろ?

この時点で俺の運命は変わって来てるってことになるわけだよな。


もし桃が来なかったら俺の運命も変わらずこのままの人生を生きて行くはず

だったんだ。

俺の未来はいくばくかは変わったってことになるんだ?桃のせいで・・・。


いいや、そんなこと言ってたらそれこそキリがないだろ。

運命の分岐点なんてどこにだって転がってるんだから・・・自分の選択でもって

運命なんて簡単に変わっちゃうんだからさ。


ただこうなった以上、桃とうまくやって行かないと俺の運命も桃の運命もこの

先どう変わっていくか分かんないんだ・・・。


つづく。








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