第36話 誰だお前

王国門前の平原には無数の冒険者達が集まっていた。王都内でも大勢の冒険者が集っていることだろう。僕もその中の1人だ。

そんなことを考えていると、ゴルド団長が拡声器を使い喋り始めた。

『これより、緊急クエストを開始する!!』

すると冒険者達は一斉に雄叫びをあげる。

『目標は魔王軍幹部である《死霊王》だ!!見つけ次第討伐せよ!そして、このクエストを見事達成した者には報酬として白金貨100枚を与える!』

おぉぉおおお!! と、冒険者達が叫ぶ。

『それでは諸君らの活躍に期待する!』

こうして、緊急クエストが始まった。

僕はとりあえず森の方へ向かった。そしてしばらく歩いていると……

『グォオオオオオ!!』

という雄叫びが聞こえてきた。おそらく魔物の声だろう。とにかく急がないとな!

「おい、そこのお前」

と後ろから声をかけられた。振り返るとそこには、長剣と盾を持った男が立っていた。

「誰ですか?」

「お前も討伐に行くのか?」

「質問に質問で答えるなと言いたいところですが、僕も冒険者なのでね」

「そうか……なら俺が守ってやるよ。俺はBランク冒険者のカインだ」と言って彼は握手を求めてきた。

なんだこの人。急に守ってやるだなんて........まぁ、だいじょうぶかな?最悪撒けばいいし、一緒に行動しておいたほうがメリットも大きいか。

「あ、ありがとうございます」

僕は彼の手を握り握手をした。

「なぁに、気にするな」

「それでお前は何ランクなんだ?」と言ってきた。僕が答えようとすると……

『グォオオ!!』という雄叫びが聞こえてきた。

どうやらもう戦闘が始まっているようだ。するとカインは、

「おい!早く行くぞ!」

と、言いながらスピードアップした。

「あ、はい!!」

そして僕たちは森の中へ。ちなみに森の名前はバエサミというらしい。しばらく歩くと森の入り口についた。そこにはたくさんの冒険者がいたがその中にフィオーレちゃんとメキアの姿はなかった。どうやら無事に王国内に戻ってくれたようだ。僕は胸を撫で下ろした。

メキアが好奇心でこっちに来ているんじゃないかと心配だったが、大丈夫のようだ。

「よし、俺たちも行くぞ!」

そして僕たちが森の中に入ろうとした瞬間……

『グォオオ!!』という雄叫びが聞こえた。この声はおそらく魔王軍幹部だろう。しかし、その声が突然消えたのだ。すると今度はゴルド団長の声が聞こえてきた。拡声器を使っているのだろう。

『緊急事態だ!!魔王軍の幹部の気配が消失!繰り返す!魔王軍の幹部の気配が消失!全員警戒せよ!』と聞こえてきた。

どういうことだ……?

すると、人の悲鳴が聞こえてきた。

「おい!いくぞ!」

カインがそう言いながら走り出した。僕もそれに続く。そして森の奥地に向かうと、そこには……

血まみれで倒れている冒険者達の姿があった。辺りには血溜まりができており、その中心に1人の男?が立っていた。その男?は黒いローブを着ておりフードを深く被っていた。そして、その男?がこちらに気づくと話しかけてきた。

「ほう……貴様らも冒険者か?」

僕は驚いた。まさかこんな早く見つかるなんて……なんとかして帰ってもらわなければならないが、ここでは無理だ。カインがいる。彼を何とかしなくては。

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