第30話 母探し開始と今じゃないツンデレ
「そういえば、君の名前はなんていうの?」
僕は少女にそう尋ねた。
「わたし、フィオーレっていうの!」
フィオーレ………か。確か花を意味する言葉だったような。こっちの世界でも同じ意味なのかはわからないけど。
ていうかフィオーレってどっかで聞いたことあるな………。どこかしらの小説の主人公の本名じゃなかったっけ?なんか偽名を普段使ってる主人公の。中学生がそんなことすんのか?と言う疑問を抱いたから印象に残ってたんだよな。まぁ、気にすることじゃないか。
「お母さんの名前はわかる?」
「ん〜とね、しーあだよ!」
「シーアさんね……」
大声でシーアさんを叫んでもいいけど、もうここから移動しているかも知れないし、第一こんな賑わいじゃ声が届くとも思えない。
「ま、ぶらぶらしていたら見つかるだろうし、最悪賑わいが薄れてきた時に声を出せばいいか」
「そうじゃな。このうるささじゃ声を出しても見つからん」
はぐれやすい上に見つかりずらい繁華街はやっぱり小さな子には天敵すぎる。
僕らが1番に見つけたからいいものの、おじさんやらお姉さんやらなんやらがいるわけだし、こんな子が自由を奪われたり金稼ぎの道具、奴隷になるなんて胸が痛いしな。あんな思いをする必要はない。
「それじゃ、お母さんが見つかるまで僕らと一緒にいよっか」
「うん!」
この笑顔は守っていかなきゃならない。人間の義務だ。
「行きたいところがあったら教えるのじゃぞ」
「わたし、あそこにいってみたい!」
フィオーレちゃんが指差した方向には、お菓子屋があった。僕のいた世界でいえば『駄菓子屋』と言ったところだろうか。しかし古いような感じはしない。
「じゃあ、行ってみようか」
「そうじゃな」
「うん!」
そんなわけで、お菓子屋に寄ってみることにした。
ちなみにフィオーレちゃんはメキアと手を繋いでいる。側から見たら姉妹に見えるんじゃなかろうか。人間と魔族、しかも魔王が人間の一少女と手を繋いでいるだなんて誰も想像できないだろう。
とりあえず、入店。
入店してまず感じたのは甘い香りだ。見たところ100種類以上のお菓子が並んでいる。そりゃ甘い匂いがして当然だ。しかもこれはバイキング形式のようだ。箱の中に入っているものの当然パッケージのようなものに包まれてはいないので匂いがすごい。
「おいしそう〜!」
フィオーレちゃんはものすごく喜んでいた。
—その頃—
「遅い………サイトたちは何をしているのかしら……?」
私はそう呟く。べ、別に虫が出てきた時に対処できないから早く帰ってきて欲しいってわけじゃないし………。
「はぁ……誰もいないのに言い訳しても意味ないわよね……」
早く帰ってきなさいよ……。
ちなみにとあるギルドにて受付嬢が初心者冒険者に低難易度の依頼と間違えて高難易度の依頼を進めてしまったらしい。
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