第29話 少女

「というわけで」

「どういうわけじゃ」

日本ではこれで話が通じたのに……

「次の指針が決まったじゃんか。でも流石に何も持っていかずにいくのはバカだと思ってな」

「それはそうじゃな」

「そもそも一人じゃ持てるものに限りがあるからな」

「確かにそうじゃ」

「だから、魔法袋を買おうと思って」

「それはいい判断じゃな」


というわけで魔道具店へ


(カシルさんは仕事へ、アルマさんは芝刈り………ではなく待機)


「いらっしゃい!」

店主がいた。そりゃ当然なんだけど。

「魔法袋が欲しいんですが……」

するとジィーっとメキアの方を見ると、

「もしかしてお子様の誕生日ですか?」

「え!?」


いやいやいやいや僕高校生やぞ………見た目の年齢からありえねーだろ。中学生の時に子供やってるとかどういうことやねん。この店主の目は節穴か?


とりあえず、弁明というか間違いだと言わなきゃだよな……でもなんて言えばいいんだ………。


「無礼じゃぞお主!我は子供などではない!魔を統べし……」

いっそいで、メキアの口を塞ぐ。

「あははは……こらメキア….魔王ごっこはやめなさいって言ってるでしょう?……すいませんうちの子が…….」

「いえいえ〜……俺も小さいころは魔王を憧れの対象にしてましたよ」

「そうなんですか!?」

モゴモゴとメキアが動いているものの、腕力の強化が入っている自分の拘束から逃れられないようだ。


そしてなんやかんやで話が進み、無事に魔法袋『中』が買えた。5000ロロだった。



そして帰り道。



「なんで止めたんじゃサイト!」

「いやバカなのお前!?ここ人間国な?バレたら勇者が飛んでくるな?お前魔力もなけりゃ身体能力すら子供。そんな状態で呼ばれたら終わりなんだよ!!!」

「むぅ………」

「それに僕が魔王と一緒にいるのがバレたら何かと面倒だろ!どうやって人間国に行くんだよ!?!?」


まじで魔を統べし王なのかこいつ。頭どんぐりの木じゃねぇか。


「それより、さっさと戻るぞ」

「サイトよ」

「ん?」

「あれをみよ」

そう言われてメキアの視線を追うと、そこには少女がいた。様子を見ると、オロオロとしている。

「どうかしたの?」

僕は咄嗟に声をかけていた。少し少女は怯えた様子を見せる。しかし、

「ママと逸れちゃったの」

と、事情を説明してくれた。ここら辺は街の繁華街なため逸れてしまうのも無理はない。どの世界でも誘拐とかはあるものだと思うから、僕たちが見つけたのは良かったのかも知れない。

「それじゃ、一緒に探してあげるよ」

「ほんと!?」

「さっさと見つけてやるかのう」

すると、ジッとメキアを見つめる少女。

「む?なんじゃ?」

「あ、こっちはメキアって言うんだ。僕はサイト。メキアはこんな身長でどうしようもない『馬鹿』だけどれっきとした成人だよ」

「バカとはなんじゃ!」

「お前がバカじゃなかったらこの世界にバカがいなくなるわ」

そうして、口論をしていたのだが、

「あはっ」

少女が笑い出してしまった。それに僕らは首を傾げていると、

「二人とも夫婦さんみたいだね」

「むぁ?」

「私のママとパパもそんな感じで口論してるもん。けど本気で喧嘩はしたことないんだよ〜」

「へ〜」

それについて僕は真に受けていなかった。……さっきから顔を赤くしてメキアが黙っているがどうしたのだろうか。

「ほらメキア、探しに行くぞ」

「う、うむ……」

「……????」

どうしたのだろうか。

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