第28話 指針


「メキアについてきて良かったよ」

「む?なんじゃ急に」

「いや……あの時出会ったのがメキアでよかった、と心から思ってな」

「だからどうしたんじゃ気持ち悪い」


「さっきのいただきますの一連を見てな。王に限らず誰かの上に立つ者は、自分が正義で1番正しいと思ってはいけない。時に自分が間違っていた場合間違いだと認め、時に下の者の意見を聞かなければならない。そんな持論があってさ」

「ふむ」

「別にここは異世界。自分の世界の常識をこの世界の住民であるメキアが従う必要は別にないんだ。けどメキアはしてくれた。だからこそ、自分はついてきてよかったって思うんだよ」


きっとあの国王はこのようなことは絶対にできない。僕らを駒としか見ていないあいつは絶対に僕らの意見なんぞ聞きはしないだろう。


このメキアという魔王の器が、上に立つものとしてとてもふさわしいと感じる。


「確かに!私も魔を統べる者、魔王と聞いた時はもっと自分勝手なやつかなと思っていました。けど……さっきの魔王さんは器が違うなって感じました」


と、カシルさんも言った。


器が違う。

自分よりも下の者の意見を素直に聞くのは基本抵抗があったりする。


「それよりも今後のことを考えなきゃだよな……」

「ここから魔王城までいくにしても距離がありすぎるのじゃ」

「そう、そこが問題なんですよね魔王様」

「サイトさんのスキルで魔王さんの魔力が回復できればいいんじゃないんでしょうか」

「まぁそうなんだけど……だからこそどうするか。このまま料理を食べ続けてみるか、それとも他のこともするか」

「他のことじゃと?」

「例えば、新たな食材探しにいくとかさ」

「なるほど、それは名案ね」

「え、ど、どういうことですか」

「流石に『料理+』が同じ料理に発動してくれるかわからないし、いつここに魔王がいることを勇者たちが嗅ぎつけてくるかわからない」


現状戦えるのは自分とアルマさんのみだ。カシルさんは戦え……るのか? 


流石にチートに近いスキルを持ってる一クラス分……30人が襲いかかってくるとなると、流石に今の強さの自分と、アルマさんじゃきっと勝てない。早急に魔王城へいく必要がある。


「それなら、ヘルタ平原はどうですか?」

カシルさんがそう、提案してきた。

「ヘルタ平原?」

「はい!カリンといった魔物がいるという点に目を瞑ればさまざまな食材がある平原です。正確にはエノルという魔物もいますが、無害なのでいないみたいなもんです」

「なるほど……それはいいかもしれぬな」

「んじゃ、そこいくか」

「ちなみにそれはどこにあるのかしら?」

「ここから北東に行ったところにあります!」


と、地図を見せてくれた。幸いそこまで遠くない。


そんなこんなで次の指針が決まった。

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