第21話 カオスとはこのかと言わざるを得ない状況

「なるほどなるほど………」


目の前にいるのはドジっ子だと思われるギルド受付嬢兼現魔王軍のカシルさん。彼女のドジっ子の強さは四天王(?)の中で最強だと思う。ギルドに着いた時に、本に埋もれていたからである。ちなみに本とともに落ちた絵の具のせいで髪の毛がところどころ変色していることは黙っておこうと思う。なぜ絵の具があるのか謎ではあるが。


「深淵化した魔物は大量発生しておらず、彼らが深淵化した魔物に偽装していたというわけですか」

「はいそうです」

そんなことを説明していると、突然アルマさんが飛びかかってきた。そして小声で、

「サイト!むし!虫!!!!」

隠す気ないなこの人。小声なのはいいが抱きつくのはやべえだろ。どう説明すんだよこの状況。

「………」



ーカシル視点ー


目の前でサイトにアルマさんが抱きついていた。

え!?そういうこと!?二人ってそういう仲なの!?魔族と人間の恋……国王が見たら発狂するねこれ……。それにしてもさっきから自分の頭を見て笑う人が大勢いるんだけどどういうこと?頭触っても何も付いてないし……ま、思い出し笑いだよねきっと。


———変な勘違いをたくさんしているカシルなのであった。



ーサイト視点ー


………カシルさんがめっちゃこっちを見てくるが、なんなのだろうか。

「言っときますけど、カシルさんの考えていることではありませんから」

「え」

よし。きっとカシルさんは、アルマさんが重度の虫嫌いであることに気がついてしまったのだろう。ここはアルマさんの威厳を守るためにも言っておくほうがいいだろう。

「そうなんだ……」

感謝してほしいよ全く。アルマさんもアルマさんでやばいな。



———奇跡的に噛み合ってしまったカシルとサイトなのであった。



—閑話休題—


「それではギルドマスターに報告してきます」

「はい」

そして案の定、カシルさんはこけた。この人の種族、今から人族じゃなくて転倒族に変更した方がいいのではないだろうか。


「ふ、服が脱げたぁぁ!!」

転んだ拍子にカシルさんの服が脱げたらしい。どういうこと?


そして、抱きついてきていたアルマさんが暴れ始めた。

「サイト!サイト!虫!虫がぁぁぁ!!!」

もう引っ叩こうかな。

「サイトよ!妾はもうお腹が空いて仕方ないのじゃ!早く済ませるのじゃ!サイト!」

僕の服をメキアが引っ張る。破けそう。

「あと1時間待ってくれ」

「そんなに待てぬぞ〜〜〜!!!!!!」

駄々をこねるようにその場に寝転び手足をブンブンと振っている。まるでお菓子を勝ってもらえず駄々をこねる園児のようだ。


「み、見ないでください〜〜〜!!!!」

「サイト!虫が!!」

「飯をよせぇぇぇぇぇ!!!!!」


………もう帰りたい。

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