第18話 ストレートジャブ
通常の人間が放てるパンチの中でおそらく最速である『ジャブ』。その速さは普通の人間であれば、目で捉えるのは困難な速さ。
それは先ほどまで自分がしていた素人がよくやる大振りのパンチの日にならない速度。大振りのパンチが当たるまでにおそらく3発ぐらいは入れられるであろう速度。それを、大振りのパンチだけしか仕掛けてこないと刷り込ませたやつに、顔面にお見舞いした。そして、奴は数メートル吹っ飛んだ。
「がはっ……」
よろけている。
「リーダ!?」
取り巻きたちが心配しているのか、そんな声がちらほらと聞こえてきた。
「テメェ……そんな威力……ふざけてんだろ」
「ん?」
「テメェが拳を振りかぶっても腰を使っている様子もなかった。突きに近い一撃だった。それなのにその威力………何をしたぁ………」
「教えると思うか?」
当然それは、身体強化の欄に腕力があったからだ。
パンチは主に腕力や肩の力によって威力が決まる。もちろん遠心力でも威力が変わるが。これならば、ジャブが強化されていないストレートぐらいの威力になるのではと先ほど考えついた。
本来ジャブというのは、牽制の目的で使う。決め手で使用したり攻撃の要として使ったりはしない。ストレートに繋げるための前座という扱いの方が正しいはずだ。それは、振りかぶったり腰を捻ったりしないパンチのため、最速ではあるものの威力はそこまでだからだ。
振りかぶった攻撃を紙一重で必ず躱していたフロー。それはつまり、それ以上のスピードのパンチを避けられないということ。
「それじゃ………本格的に反撃開始だ」
僕は強く地面を蹴る。奴との間合いをゼロにする。
「くっ……!?」
すに僕は構えている。それを見たやつは回避の姿勢ではなく、防御の姿勢に入り、顔を腕で防ぐ。
「甘い」
「え」
ガードをされるとジャブじゃ、有効打を与えられない可能性がある。だから、僕は勝利のためにじっくりと『刷り込んで』いったんだ。
何も僕はジャブをするつもりはない。かといって、ストレートも有効打を与えられない可能性がある。それにストレートは基本的に顔しか狙えない。しかし振りかぶっていたら、避けられてしまうかもしれない。
………よかったよ。脚力で。
くるっと、回転し……..後ろ蹴りを1発。やつの鳩尾へ。
「お返しさ」
「あがっ」
少しの距離をやつが吹っ飛ぶ。しかし、体勢を整えられたらまずい。ここは一気に畳み込む。
「終わりだ」
「くっそ……」
やつの顎へ向けて、顎打ちをした。
今だけは。クソどもに感謝しないとな。
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