第16話 蝙蝠野郎は反撃を夢にも思わない。
「ちなみに取り巻きの奴らは来ないのか?」
ジリジリと距離を詰めてくる気配がない。そこから動くつもりがない、ということは彼らは檻のような役割を果たしているのではないだろうか。
「ふん。お前なんて俺一人で十分なんだよ」
とやつは豪語したが、やはり自分の仮説であっているようだ。僕が逃げようとするのなら、取り巻きたちが仕留める、または足止めをして、このフローという男を待つ。
「あらよっと!」
一気に間合いを詰めてきた。蹴りを繰り出してみるも、紙一重で躱されてしまう。そしてカウンターと言わんばかりに右足が切り付けられた。
うまく見えないが、この感じからして、相手の武器はナイフであるのは間違いがなさそうだ。
しかし、今わかったことはこいつはすばしっこいということ。圧倒的にスピードが足りない。脚力強化が入っているとはいえ……勝てない。
先制攻撃はどうだ?
「ふんっ」
先制攻撃を仕掛けてみるも、紙一重で躱されてしまう。
「目にもの見せてやる」
そういうと、フローは見えなくなった。まるで闇に溶け込んだかのように。こいつが、先ほどアルマさんを行かせたことにあーだこうだ言っていたのはそういうことか。蝙蝠……ね。
蝙蝠はすばしっこく、それでいて闇に潜んでいる。だからこそ、蝙蝠というのは面倒臭い。すばしっこい機動性を持ち合わせていながら暗闇という場所を好む。タチが悪いったらありゃしない。
「うぐっ……」
横腹が切られた。そこまで深くもないし、これぐらいなら問題はない。これぐらいの痛みなら全然平気だ。
しかし、それ以降もなすすべもなく切り付けられた。
次第に痛みの度合いも大きくなっていっているし、このままだと失血死する可能性もある。何とかせねば……。
「ん?」
そういえば、そうじゃないか。僕にもこいつらに対抗する手段というか希望が。
折りたたんである、とある紙を僕は取り出す。
「何だ何だ?いきなり紙を……ってそりゃスキル鑑定の紙じゃねぇか」
養いの力……その説明には使用者の状況に合わせた能力と身体強化が付与されると書いてあった。つまり、前と状況が違う今なら能力が変わっているのではないか?ということである。
「これに賭けるしかない」
僕はすぐに鑑定紙を広げた。そこには、嬉しい誤算があった。ほんとにご都合主義だと思う。
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『養いの力』
使用者の状況に合わせた能力が攻撃に付与される、身体能力が上がる。
現能力 物理無効貫通 魔力察知
現身体強化 脚力 腕力
現在2
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