第12話 溶けた。

「………なんだ?入った途端真っ暗になったが……」

「魔力が充満しておるからじゃな。そのせいで日光がはじかれておる」

「バエトサクは魔力が濃い森林とは聞いていたけど……まさかここまでとはね」

「何だか恐ろしいな……暗闇ってのは」

ほとんど光が入っていない。これじゃ夜の方がまだマシってレベルだ。

「そういえば、カシルはどうしたのじゃ?」

「いや普通にギルド嬢としての仕事があるに決まってるだろ。いくら魔王軍についたからって仕事放棄するほどバカじゃないぞあの人」

「それもそうね」

「む……妾も確かに仕事からそう易々と放棄したことはなかった……そんなものか」

「そんなもんだよ、仕事してる奴ってのは」

ま、僕はしたことないけどな。よくお前のしてることは労役だよって言われがちだけど……んなことないのに。ただ家事をしてるだけだ。

「………アルマさんの体って光るんですね」

僕は暗闇の中で無言でいるのが怖すぎて、頭ドングリの木になってしまいそうだったため、言葉を捻り出した。何でこの人たち暗闇が怖くないのだろうか。

「えっ!?そ、そうね。わ、私たちは体の魔力を発光させているの」

「アルマたちのようなスライム族は体自体が魔力でできとるからな。こんな体発光ということもできるんじゃよ」

「なるほどな」


それはそれとして、一瞬びくついたアルマさんについてはどういうことなんだろう………今も少し小刻みにプルプルと震えているし………。


「アルマよ。先ほどから小刻みに震えておるが……大丈夫か?」

「ま、魔王様……む、武者震いですよ武者震い」


そんなことを言っていたが、自分の悪魔がどうやら閃いてしまったようで、そっと後ろから…………


「わっっ!!!!!」


という大声が、あたりに鳴り響いた。アルマさんの後ろの自分を中心として。


すると………


「ちょっと、サいト……しょウもなイこトはヤメて……」

「ゑ」


目の前にいるアルマさんがみるみる縮んでいく。

「と、溶けた……?え!?溶けたぁぁぁぁ!?!?」


目の前のアルマさんは——溶けてしまった。


「え、ええ、嘘……だろ?」


アルマさんは原型がなくなってしまっている。もはや普通のスライムと言われても信じてしまうほどに。


「何じゃアルマ……って溶けたのか」

「え?」

な、何でこの魔王様は平然としているんだ……?目の前であんたの部下が溶けてしまったんだぞ?


……もしかしてスライム族ってのは溶けるのは日常茶飯事なのか?普通に無事なのかもしれない。


それにしては、復活する時間が妙に長い気がするが………。


アルマさんだったのものがキラキラと輝いている。だから死んでいない………のか?

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