第11話 人為的
「ん〜〜〜朝日が気持ちいな〜〜〜」
女将さんによる指摘まで残り十分——。
ー1時間後ー
「じゃあ、今回はバエトサクに行くのじゃな?」
「そういうことになるな」
僕らは今日やることを話し合っていた。
「そういえば、サイトさんの……」
「サイトでいいよ」
「じゃ……サイトのスキルはなんなの?蘇生系のスキルなの?」
「う〜ん……自分でもよくわからないんだ……」
簡潔に自分のスキルについてわかっていることを伝える。
「なるほど………養いの力……ねぇ」
「まぁご都合主義的なスキルなのは分かってる。メキアに養ってくれだなんて頼まれた僕が養いの力だなんていう、まんまなスキルを持っているだなんて」
「まぁ………我々魔王軍としてもメリットしかないようだしいいわ。それよりも深淵化について考えましょう」
「そうじゃな」
「そうするか」
気になる部分はあるが、二人とも何も知らなさそうだしこのままそれを話していても時間の無駄だ。
「深淵化についてじゃが………何か人為的なものを感じるのじゃ」
「というと?」
「なぜバエトサクなのかがわからんからじゃ。それに深淵化は魔力の暴走が原因。しかし、魔力の暴走は稀じゃ。そんなに大量に発生するものじゃない」
「つまり、無理やり魔力を暴走させている者がいるってことですか?」
「うむ」
「失礼ですが魔王様、その考えは私も考えました。しかし、それをする理由がないのでは?深淵化はその名の通り深淵へと変貌してしまう状態。瞳の色もそうですが、深淵のように狂気を持って暴れている。わざわざ自身で制御できない状況にする理由がわからないのですが」
「うむ……そこなんじゃよなぁ………」
二人とも黙ってしまった。
「理由なんてわからないさ。人は人の数だけ狂気や夢、希望、考えを持っていきている。それを推測しようだなんて並大抵のことじゃないさ。もしこれを意図的に発生させている奴がいるんだとすれば、そいつにはそうしなきゃならん理由があるんだろ」
「愉快犯、という可能性も考えられるけど?」
「それも立派な理由だろ。まぁ褒められた理由ではないけどな。欲を満たしたいだなんて………魔族はどうか知らないけど、人間からしたら立派な理由さ。何度も言うように褒められた理由じゃないから立派と言っていいかわからないけどな」
「ふむ……熟考は一聞にしかず、というしな」
そんなわけで僕らは宿屋を後にし、バエトサクへ向かった。
しかし、僕には一抹の考えがあった。
それは、もし。もし、魔力を暴走させている奴がいたとして、方法によってはメキアの魔力が取り戻せるのではないのだろうか。
情けないと言われるかもしれないし、意気地なしと言われるかもしれないが、あくまでも自分がメキアから頼まれたのは魔王軍を養うこと。
勇者たちと争うことは養うとは言えない。
魔物と争うことは、養うの内に入らない。
僕は早く魔王城に向かい、自分のやるべきことをやるだけだ。
「む?どうかしたのかサイト」
「ん?いや、なんでもないさ。自分の意気地の無さを呪っていただけさ」
「?」
メキアは首を傾げている。そりゃそうだ。メキアからしたら何のこっちゃって話だ。
「お二人とも、もう少しでバエトサクです」
「もうか………早いな」
バエトサクへ、立ち入るのだった。
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