第10話 金の亡者は高時給を求む
「いやいや無理だろそれは………」
「なぜじゃ?」
「いや………叛逆……つまり人間国を裏切れってことだぞ?バレたら打首じゃ済まないぞ?」
「むぅ……そうか……こやつからは並々ならない気配を感じるのじゃが……」
「並々ならない気配……?」
僕は何も感じないが………。
カシルさんは数分間黙っていたあと、その口を開いた。
「……時給……何円ですか」
「え?」
「だから時給ですよ!タダ働きってことはないでしょう!?」
「え……?」
「時給が良ければ魔王軍につきますよ私」
「えぇぇぇぇぇ………」
どうやらカシルさんは金の亡者だったらしい。
「私実家に弟たちが4人いて……片親で母親しかいないんで仕送りしないとまずいんですよ」
「あ〜」
「だから金が手に入るのなら………私は叛逆だろうがなんだろうがします」
「だそうじゃサイト」
「うーん……なんか釈然としないけど……いいのかな」
するとさっきから黙って聞いていたアルマさんが口を開いた。
「私たち魔王軍にも人間はいるのよ。まぁカシルさんのように金のために魔王軍に入る人は彼女が初めてだけど」
「で?時給いくらなんですか!?」
「う〜ん……魔王軍の事情はわからないけど……多分金銀財宝とかはないって感じだよね?」
「うむ……宝物庫が荒らされてなければ残っておるが……今や魔王城はもぬけの殻のようなもの……どうなっておるかわからぬのじゃ」
「だとすれば……僕が養うから食費とか家賃とかそういうのは諸々なくなるけど……あとは手に入れたロロの4分の1を渡すぐらい……かな」
「それは希望的投資……ってことですか」
「そうだね………」
ー数十分後ー
「わかりました。協力しましょう」
「ほんとか!?」
「ええ……ただし、平和のために争っているんですよね?人間国と」
「うむ。妾だって、余計な殺生はしたくないのじゃ。だからこそ犠牲は最小限に抑えたい」
カシルさんとメキアが握手した。
何はともあれ、穏便に済んでよかった………。
あとでメキアに関しては説教しよう。おかげで通報の危機に面したんだからそれぐらいしても文句は言われんだろう。
「それで……今後の予定はどうするのかしら」
アルマさんから声がかかった。
「う〜ん、まずは魔王城に帰ることだよなぁ……家を建ててもいいけどどうせ魔王城に帰るのならもったいないよなぁ……」
「それは地道に帰るしか………」
「妾の力が少し戻れば転移魔法が使えるのじゃが……」
「そうね。魔王様の力が戻りさえすれば転移魔法で魔王城まで帰還できるわ」
「じゃあ、メキアの力を取り戻すことに専念しよう……」
方針が決まった。
「それにしてもここは暑いのう……」
「夏ですからね……それにこんなに人数いたらそうなりますよ……」
「暑いわね……汗かいてきちゃった」
スライムも汗かくんだ……不純物とかなさそうなのに……と思ったが口にはしなかった。
その後各々が自分の場所へ戻っていった。
朝、汗だくの女性3人が部屋から出ているのを目撃した宿屋の亭主のおばちゃんから「昨日はお楽しみでしたね」と、冷やかしを受けた。
完全なる勘違いなのだが、起きてきたメキアが「よかったなアレは」と言い、アルマさんが「最近で一番嬉しい日ですわ」などという油に火を注いだことによって、そういう目で見られた。
野晒しの刑にしようかな……。
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