第9話 どんぐりの木の如くピンチ(?)

「どういうことなんですか!?」

僕はカシルさんから、問い詰められていた。

「えっとぉ……」

どうやって説明しようかなと考えるが、いまいち思いつかない。そりゃそうだ。目の前ではっきりと変身していない魔王が見られたのだ。人間である以上敵の大将である魔王の外見ぐらい知っているだろう。それがギルド嬢であるならなおさら。

声が聞こえた程度であれば、空耳と言って誤魔化すことができただろう。しかし、カシルさんはその瞳でRECしてしまった。

もう誤魔化しようがない。

「実はかくかくしかじかなんすよ」

「え?」

「………えっと……」

僕は洗いざらい話すことにした。


ー数分後ー


「なるほどなるほど……魔王とばったりと出会って、養ってくれと頼まれたと」

「ええ」

「どうして………人間であるなら魔族が何をしてきたかって……」

カシルさんもやっぱりか。メキアと同じこと言ってきた。

「そりゃくだらないからですよ」

「え?」

「人間の世界は狭い。圧倒的に狭い。まるで自分たちしかいないように生活している。勝手に生き物を家畜にしている」

「それは!」

「生きるためだから仕方がない」

「っ!」

「だったら一昔前の人たちも畜産をしていたかと言えば違う。当然自分たちで狩りをして肉を手に入れていた」

「………」

黙ってメキアとアルマさんは聞いている。カシルさんも。

「魔族と人間の戦争だってそうだ。人族の王と魔族の王のどちらともと会ってよく分かる。人族の王はありゃダメだ。腐ってる。魔族なら千歩譲ってわかるが、人族の僕を勝手に召喚しておきながら追放しやがった」

人間とは罪深い生き物。それは自分たちの住んでいた世界が平和だからだと思っていた。けれどそれは異世界であっても変わらない。

「しかも俺以外の奴らに対して頭も下げなかった。聞いて呆れるだろ?だが、今この目の前にいる魔王はどうだよ」

「?」

メキアは首を傾げている。僕がメキアの提案を了承したのにはいくつかの理由がある。それの一つを人族の王はしなかった。

「こいつの性格だ。きっとプライドも高いっちゃ高いだろう。しかも僕は敵である人族だ。そんな僕に頭下げてお願いしてきたんだぞ?プライドも邪魔をしてくるはずだ。何せ王である魔王が人族、しかも人族の中でも『一般市民』に頭下げるんだからな」

「………」

「だから、もしカシルさんに現状を疑問に思う心があるのなら、見逃してはくれないか?」


僕の言いたいことは言い切った。あとはカシルさん次第だ。


カシルさんは考えている。

そんなときに、メキアがとんでもないことを言い出したんだ。


「のう、サイトよ」

「ん?」



「知ってしまった以上………こやつには魔王軍に入ってもらおうと思っておるのじゃが」



「は?」


これには僕もお手上げ。フリーズしてしまった。

一体誰だよこいつを魔王に任命したのは……前魔王か?

本当に何考えてんだよ……えなに?もしかしてどんぐり食ってきたせいで頭までどんぐりの木になったか?もう僕までおかしくなっちゃってるよ。頭どんぐりの木ってなんだよ……。


とりあえず、動かない口を無理やり動かしたのだった。

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