第8話 バエトサクの深淵化
「それが……ここから西の方にあるバエトサクという、森なんですけど」
「バエトサク………」
なかなかに独特な響きだな……。
「その森でどうやら魔物が深淵化しているらしくて………」
「深淵化……?」
「魔物の瞳が深淵のような深い青色に変化している状態を深淵化というです。その状態の魔物は通常よりも凶暴、そしてとてつもなく強い個体になっているんです」
「なるほど……それの討伐をしてもらいたいってことですか?」
「はい」
「わっかりましたけど………なぜ僕なんですか?」
「もちろん、サイトさんの実力を見込んで………です」
「なるほど」
そこまで自分に実力があるか、と言われればないだろう。
それならクラスメイトの長野達の方がよっぽど適任だが……あいつらは魔王軍討伐で忙しいもんな……まぁその肝心の魔王と四天王の一人が僕のところにいるんだけどな。
「事情はわかりました。それじゃあ、明日そのバエトサク?に向かおうと思います」
「あ、ありがとうございます!」
カシルさんから深々とお辞儀をされた。どうやらこの世界でも感謝を伝えたりするときはお辞儀をするものらしい。
「そういえばカシルさん」
「ん?」
僕はこの部屋にカシルさんが訪れてからずっと疑問に思っていたことを告げる。
「なんで———前後ろ逆なんですか?スカート」
「へ!?」
カシルさんは顔を下に向ける。
そこには、前と後ろがはっきりと逆になっているスカートがあった。
ちなみにこれは部屋に訪れた時からだった。気づいてはいるが外で直すことができない(パンツを晒すことになるため)から前後ろ逆なのかなと指摘はしなかったが……この部屋で直す素振りもない。別に僕に少しの間外に出ていてほしいと言えばいいのに。
「こ、これはその……」
「ポンコツ?」
「はうっ……!?」
「そ、外に僕は出てますから……すぐに直しましょう」
「は、はい!」
僕はそう言って、部屋を出る。
数分後。
「すいませんでした……」
「まぁ裏表逆とか、前後ろ逆とかって気づきにくいですからね。しょうがないですよ」
「フォローが優しい……」
「自分にもそういう経験ありますから」
「そ、それでは改めて私は帰りますね」
「お気をつけて」
「ありがとうござい……」
そう言った時だった。絶対に起きてはならない事象が起きてしまった。
扉が勢いよく開き……
「サイトよ!何か食べ物はないか!?」
「……ま、す?」
「なぬ!?」
「ままままままお……」
僕は急いで誘拐シーンのごとく、カシルさんの口を塞ぎ部屋の扉を閉めた。
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