第6話 宿屋

僕はその後カシルさんと別れ、近くで待機していたメキア達と合流した。

無視して王都に来ていたのだが、どうやら二人ともついてきたらしい。手間が省けて結果良かった。

「んじゃまぁ……今日泊まる宿を探しに行くか」


土地勘がまるでないので、再度ギルドに戻ってカシルさんに聞くことにした。


「そうですねぇ……ここら辺だとマイリス宿が近いですかね?」

「それてってどこですかね?」

「えっと…….ここから左に曲がって右に曲がって三つ目の家のところですね」

「ありがとうございます」

「そういえば、一人で宿なんですか?」

「う〜ん……まぁそんなところですね」

急にそんなことを聞いてくるなんて、どうしたんだろうか。

「夜に宿を訪ねてもいいでしょうか?」

「え?」

一瞬思考が停止した。夜に?自分の部屋に?来る?

どういうことだ一体。暗殺!?………んなわけないか。

「いいっすよ」

「じゃあ、夜にそちらを訪ねますね」

「はい。待ってますね」

幸いなのは、メキア達と部屋は別。なので最悪の事態は起こらない。

鉢合わせはあるかもしれないが……まぁ変身魔法で人間の姿になっているし、大丈夫だろう。


僕はギルドを出て、メキア達と宿を目指す。


「着いた……」

「久しぶりの建物じゃ……」

そういえばそうだった。メキアはしばらくの間野宿だったんだった。

「ちなみに部屋割りはどんな風に……」

心配そうに聞いてくるアルマさん。

「ああ、心配ご無用です。部屋は別にしますから」

するとホッとアルマさんは胸を下ろした。彼女も性別が女性である以上、男と寝るのは抵抗があるみたいだ。

そりゃそうか。まだ会って1日も経っていないのだから。


「いらっしゃい!3名でいいかい?」

「はい。3名でお願いします。あっ、僕と彼女達の部屋は別でお願いします」

「あいよ。2部屋だから100ロロもらうよ」

珍しい。一人ごとの料金ではなく部屋ごとに料金とるのか。僕のいた世界でもそういうかんじだったか?まぁいいか。僕のいた世界と比べること自体が野暮か。

「金貨一枚で」

「はいよぉ!」


そして、俺らは部屋の鍵をもらい、部屋に向かう。


「んじゃま、明日の朝に今後について会議するとしよう」

「了解じゃ。王都で寝るというのはなかなかに煩雑じゃが……」

「仕方ありませんよ魔王様。魔王軍のためにここは我慢です」

「面倒だがアルマさんのいうとおりだ。どちらにせよ野宿は避けたい」


野宿は正直不安だからな……。今は秋の中旬らしく、少し肌寒い。めちゃくちゃ寒いというわけではないが、十分風邪を引いてしまう寒さだ。流石に男として女性のメキアたちを寒空の下野宿させるのは気がひける。風邪を引かせるなんてもってのほかだ。それに養うって言ったしな……。


ていうか、まだカシルさんが来るまで時間があるな……何してようか。


…………寝るか。

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