第3話 スライム

「というわけで、サイトさんでもできる依頼はこちらになりますね」

「えっと…….薬草採取とスライム討伐か……」


なかなかにありがちな依頼だな……


「じゃあ、どっちも受けます」

「ええ!?どっちも受けるんですか!?」

「まぁ早急に金が欲しいし……」

「わっ、かりました……それでは依頼達成をお待ちしております」

「まぁ今日中に終わらせてきます」


早めに終わらせないとマジで家がないから野宿することになっちまう…….。

正直僕はいいのだがメキアを野宿させるわけにはいかないしな……。女の子を野宿してるなんてことがバレたら社会的に終わる気がする。あとそんな姿をもしメキアの側近とか幹部の方々に見られたり知られたりしたら……絶対殺される……それだけはごめんだ……。



「かくかくしかじかというわけだ」

「どういうわけじゃ」

「『かくかくしかじか』で通じなかっただって……!?」

「通じるわけないじゃろ」

「まぁざっと言うと、薬草採取とスライム討伐だね」

「なんでその内容が『かくかくしかじか』といかいう意味不明な言葉で伝わると思ったんじゃ……?」

「僕の世界だったら伝わるんだけどな…….」

「恐ろしいな…….って、スライム討伐じゃと?」

「あれ?なんかまずかった?」

別に魔族と魔物ってなんも繋がりがなかったと思うんだが……。いや確かカシルさんに聞いた話によれば、魔物が知能を持ったりすることによって進化をとげ魔族になるんだよな……でも見たところ、メキアはスライムじゃないだろうし、同じ種族以外は大丈夫だと思ったんだが……。

「魔王軍四天王の中にスライム族のアルマ、というものがおってな。もしかしたら会えるかも、と思っただけじゃ」

「確かに……スライムが群がっていたり大量にいる場所にはもしかしたらその、アルマ?さんがいる可能性はあるな」

僕の最終的な目標は、魔王『軍』を養うこと。魔王様だけ養ってもそれはメキアと交わした約束?契約?を満たせているとは言えない。

「妾も同行してよいか?」

「バレないと保証できるのならな」

「そこは妾の変身魔法を使えば問題ない」

むふーと鼻高らかにそういうメキア。ちょっとイラッとしたものの、どうやらこの世界の魔法とは便利なものらしい。

「じゃあ、さっさと行くか。早よしないとギルドも閉まって野宿することになるしな」

わかった、という意味で頷いたメキアと足早に依頼された場所へ向かった。


「……..やばすぎじゃないかこのスライムの量」

依頼は確かに大量発生したスライムの討伐だった。それでも50匹程度だろうとは思っていた。しかし……これはざっと400ぐらいはいるのではないだろうか。

「本当にお主、この依頼を受けれたのか?『スライムも積もれば死へとなる』という言葉があるように、スライムのような雑魚敵でもたくさんいると脅威になるものじゃ」

なんだそら…….ことわざか?チリも積もれば山となるという、ことわざみたいな感じか?

「どういうことだってばよ」

「つまり、いくらスライムど言えどもこんなにたくさんいたら、中級冒険者などでも苦戦するというわけなのじゃ。それをまだギルドに入りたての最低ランクのサイトが受けれたのか甚だ疑問なのじゃよ」

「まぁそれだけ人不足なんだろ。責めるつもりは一切ない。ただ事実を述べるとするなら、魔王軍。つまりメキアたちが原因だろうな」

「……..そうじゃな」

そうなのである。魔王軍捜索に人員を割いていたり、討伐に向かい命を落としている兵士や、それに冒険者も招集されていたりして人手が足りないんだろう。

「ていうか、なんで失踪なんかしたんだ?」

「それはだな……….だからじゃ」

「は?」

ゴニョゴニョと喋っているせいで肝心の部分が聞き取れない。わざとか?

「みんな家事ができないからじゃ!!!!!」

「…….は?」

「みんな家事ができないんじゃ!!!!!」

「え、それはどういう……」

「別に家事スキルが皆無、という意味ではない。例えば、魔王軍四天王の一人、メルティーに関しては料理も洗濯も一通り出来るのじゃ」

「え、じゃあなぜ」

家事スキルが皆無とかならわかるものの、しっかり家事ができる人がいるというのに家事ができないとはこれいかに。

「家事ができる奴がいないからできないのではない。物理的に不可能、ようはしている暇がなかったんじゃ」

「……..ん?」

「メルティーは確かに家事ができる。しかし魔王軍四天王にして魔王城にある魔法具や魔王軍参入の試験を担当しているなど、頭脳担当と言ってもいい。戦場でいう参謀のような存在じゃな。男どもは基本家事はできず、女性陣も他の仕事が立て込んでいる。そりゃそうじゃ、魔王軍と王国軍は今や戦争の真っ只中。人員は常に減ってゆき、仕事の数も増えていく。武器の調達や資源の回収」

「で、インスタント。つまりは料理と言うよりも食材などで済ませていた結果、こんなことになったというわけか」

「そうじゃ。栄養失調、と言えばいいのじゃろうか?メルティーがそれによりダウンしてしまってな。他にもダウンしてしまったものもたくさんおってな。魔王軍がこの調子ではまずい。だから魔王軍は家事をしてくれるものを探すことにしたのじゃ」

「で、腹が減りすぎて死にかけていた魔王様は俺と出会った、というわけか」

「そゆことじゃ」

うん…….アホかな?魔王軍作る時にそこら辺考えとけや…….。

俺はため息をつく。その時に素朴な疑問が浮かんだ。

「ん?そう言えばよ、今まで食材で済ませてきたら、なんでメキアは腹が減ってたんだ……?そこらへんに食材はあるだろ?」

「………無理じゃったんじゃ」

「え?」

「まず妾にはそこらへんのキノコを毒キノコと判別する知はない。魔法で解毒できんこともないが、いちいちその度に腹を壊していたら精神が持たん。あとは獣たちの戦線に張り合える自信がなくてな」

「獣たちの戦線?」

「獣たちは常に生きることだけを考えて生きておる。もちろん我が子を守る母親も多数いるのはわかるが、基本は三大欲求だけに従い生きておる。しかし妾はそうではない。無論のこと世界征服という夢が妾にはある」

「つまりは食物連鎖の波に乗ってける気がしなかったと」

「そういうことじゃ」

なるほどなるほど…….魔王って意外とポンコツだったりすんのか…..?

「なぁ、メキアって隠れポンコツだって言われないか?」

「…..なんじゃと?」

「いや変身魔法があるなら王国にはいりゃよかったじゃん。お金ないならギルドで稼ぎゃいいし」

「………..うるさいのじゃ」

「この状況じゃ草も生えねぇな……..まぁそんなことよりも今はこのスライムをどうにかせにゃならんよな……..」

「妾は今はあまり力が出せん……」

「僕がやるしかないってことか……」


今自分素手なんだけどな……..。

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