第2話 人生初のギルド
「あ、じゃないが」
「しかし……もうお主しかおらぬのじゃ」
「いや別に見捨てるとかじゃないって」
「ほ、本当か…..?」
そんな潤んだ目で見られたら断れないわ…….魔王の威厳今のところゼロだけど。
「乗りかかった船だしな……どっちみち王様にはゴミを見るような目で見られたし」
「それじゃ、もう人間の住む場所へは行かぬということか!?」
「そういうわけじゃねぇよ。あくまでも俺は王様が嫌いになっただけだ。魔族も人間だろうが、赤の他人なんかを好きになるわけないだろ」
「ふむ……」
「何回も言うかもしれないが、俺はただ人間の固定観念に従って生きているような人間じゃないのでね」
「じゃあ、お主がもしスキルが鑑定されていて、さらにこんな詳細不明なものではなく有用なスキルだったらどうしてたんじゃ?」
「そりゃもちろん……….叛逆….かな」
「なに!?」
「…….冗談に決まってんだろ。まぁ別にどうもしないよ。魔王討伐なんぞ断って、どっかぶらぶらするかな。まぁ真っ先に帰らさせて欲しいというがな」
それで、魔王を討伐したら帰還させてやろうなんて自分勝手なことを抜かしたらマジで叛逆ものだけどな。
「お主は…..なかなかに面白い人間じゃな…..」
「だからサイトと呼べ」
「…….サイト」
「それでいいんだよ。友好関係を築きたいならまずは名前からだ。というわけで、魔王。お前の名前は?」
「……….メキアじゃ」
「ほぉ…..メキア、ねぇ。いい名前じゃんか」
俺はその後メキアをおいて、ギルドにやってきた。
「なんていうか……緊張するな……」
数多の漫画で見てきたギルドが今目の前にある。
二次元的観測としてなら身近にあるギルドだが…..(つまり漫画やアニメとしてなら身近にあるものの)、三次元的観測としてはご対面するのはこれが初めてだ……(つまり、三次元、現実でご対面するのは初めてということ)。
「さてと……魔王を待たせてるのも悪いし、さっさと登録をしてくるか」
俺はドアを開けた。
——と、そこまでは良かったのだが、自分は今厄介ごとに巻き込まれていた。
「あれぇ〜?役ただずのサイトくぅんじゃないか」
……..そう言って俺に声をかけてきたのは、クラスメイトの長野。
「……..長野」
「なんだよその目は」
「なんでもねぇよ」
「…….気に入らねぇな。その態度」
「どうだっていいだろ?もうお前の傘下でもなんでもないし、仲間でもないんだ。勇者様はそこら辺の『一般市民』を痛ぶる趣味でもあるのか?」
「チッ…….」
もう訓練だとかじゃれあいだとかふざけたことを言って許される状況じゃないんだよ
………まぁ絶対いつか戦うことになるんだろうけど。魔王軍側に自分はついたんだからいつかは戦うことになるわな。
「も、もしかしてゆ、勇者様のし、知り合いですか?」
ギルドの受付嬢がそんなことを言ってきた。
「まぁそんなところですかね。スキルなしの召喚者ですよ」
「しょしょ召喚者様!?」
余程びっくりしたのか、尻餅をついて倒れてしまった。
「スキルなしの無能ですけどね」
まぁ、持ってるには持ってるけど、どこから情報が流れるかわかったもんじゃないし……しかもギルドとか俺らの世界で言えば市役所とかに該当する場所だ。王様達と繋がっていてもおかしくない。
もしそれで自分のスキルがバレてしまったら面倒だ。まだメキアも健在ではないし、他の魔法軍の方達も万全かわからない。あいつらと戦う時に不利になったら最悪だし、ここは伏せておくのが最適解だよな……。
「スキルなし!?そりゃまたすごいですね…..」
「そういえばスキルってなんなんだ…..?」
詳しくは教えてもらえなかったので、ちょっと不思議なんだよな。
「それは私もわかりかねますね……。私たちは生まれると必ずスキルを持って生まれてくるんです。そして召喚者はこの世に召喚されるとスキルを持っているんだそうです。そしてそのスキルは一般のスキルよりも強いのだとか……」
「なるほど…….一応聞いておきたいんですけど、あなたのお名前は?」
「わ、わたしですか?か、カシルと言います……よ、よろしくお願いしまっちゅ…..」
カシルさんが噛んだ。それはもう言い逃れることのできないぐらいはっきりと。
そういえば、自分が読んでいた小説にもカシルって名前のキャラがいた気がする。ドジを踏んだりする作者のサンドバッグだったような気が……彼女も同じドジっ子なのだろうか。だとしたらカシルって名前は必ずドジを踏む呪いでもかけられているのだろうか。
「あ、憐れむような目で見ないでください!!!!!」
どうやら顔に出ていたらしい。
「……..とりあえずカシルさん…….でいいんですよね?」
「はい…….あ、そういえば登録しにきたのでしたよね?」
「はい」
「それではお名前と性別、年齢を口頭でお願いします」
「あ、はい。えっと、名前がサイトで性別は男、年齢は16歳です」
「わかりました〜、少しお待ちください」
そう言って、カシルさんは奥の方へ……
ツルッ
ドシンッという大きな音がその場に響いた。
「いっっっっっっったぁ!!!!!」
行く前に盛大に転んだ。本当にこの人大丈夫なんだろうか。
その後少ししてカシルさんが帰ってきた。
「こちらになります」
「ありがとうございます」
自分はそれを受け取った。自分の名前が記されているカードのようなものだ。待ち時間でさらっとマニュアルを読んだが、これが自分の身分を証明してくれるらしい。これがあればギルドが色々と便宜を図ってくれるんだとか。なんだか役得すぎるものを手に入れてしまった気分だ…….会員証みたいな。
「ちなみに簡単な依頼ってあります?」
「えっとですね……」
俺は依頼が貼られているボードへ案内してもらった。
ちなみにその数メートルの間に3回も転んだカシルさんのことについては胸の内にしまっておこう。
ーその頃ー
「遅いぞサイトよ…….この魔を統べる者にして世界最強を待たせるとはどういう了見じゃ!!!!!!!」
シィィィィィィン……..
「…….なんだか無性に恥ずかしくなってきた……もう独り言で大声を出すのはやめておこう…..」
——大声じゃなくてそのフレーズを一人で喋ることに羞恥心が働いてると、思う動物たちなのであった。
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